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往復書簡・映画館の話をしよう「映画館で寝ること②」(山口雅)

「映画館で寝ること」、大浦さんのご意見にものすごく安心しました!
そしていろんな方がコメント等で「寝る」話を披露されていて、驚きました。なんだ、みんな寝てるんじゃん!
実は私も、映画館で常習的に「寝てしまう」んです・・・。

ここ一年くらいの間、かなりの高確率で寝ます。グーグー寝るわけではなく、短時間だけウトウトではあるんですが、大浦さんの言う「ああ、今日は寝ないでいられるかな」は、毎回上映前に私が思うことです。

しかし、声を大にして人に言えることではない。ましてや劇場スタッフさんや作り手の方々にバレたら怒られる、呆れられる・・・。そう思っているので、大浦さんも寝る(!)というのは大変ありがたいお話でした。

いやぁ、それにしても本当に、なんでなんでしょうか。ずっと前から楽しみに待っていた映画をいざ初日に見に来たはずなのに、スクリーンを見ながら遠のいてゆく意識。ああ、ダメだ、ちょっとだけ、さようなら…5分だけ、10分だけ、また後ほど…。

それでも寝るのはせいぜい10分15分、さすがに一本まるまる寝てしまうことはありません。エンドロールが過ぎても寝ていた経験もありません。
私は電車の中でもしょっちゅう寝てるのですが、不思議なことに降りる駅の直前で必ず目を覚まします。寝過ごして降りられなかったことはほぼなし。リミットは深層心理にちゃんと組み込まれているようです。

困ったことに、「映画館で寝る」というのは私にとって、あまりにも甘美で心地良くて、何物にも代えがたい幸福な時間です。大きな画面で良い音響に包まれて、さざ波のように寄せてくる眠気に身を任せる瞬間がものすごく幸せ。

大浦さんの言う通り、静かな映画だから寝るわけではありません。生きるか死ぬかの激しいアクション場面を見ながら、スーッと眠りに落ちていく。
一番嬉しいのは、日常を淡々と描いたような「何も起こらない映画」でついつい寝てしまって、起きた時です。
20分は寝たはずなのに、寝る前と起きた後でまったく画面の中の状況が変わっていない! さっきと全く一緒やん!
その瞬間、その映画が愛しくてたまらなくなり、誰にも言えないこの愉快さをひとり暗闇で噛み締めています。そして何事もなかったような顔で続きを見る。この楽しさよ。笑い出したくなるような気持ちです。

「お客さん、終電ですよ~」と酔い潰れた人を起こすかのごとく、終演後の場内でお客さんに声をかけているという大浦さんの次回のお話、期待しています!


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