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往復書簡・映画館の話をしよう「なぜ映画館が好きなのか?」②(大浦奈都子)

山口さん、こんにちは。
そしてこれを読んでくださっている皆さん、はじめまして。

名古屋駅西にある小さな映画館、シネマスコーレで働いている大浦奈都子と申します。

昨年ふと「みんな、好きな映画の話はするけれど、好きな映画館の話はあまりしないよなぁ。」と考えるようになりました。

「好きな映画を語るように、好きな映画館を語る」という活動(?)をはじめたい。そんな提案に乗ってくれた山口さんと、noteでおしゃべりがはじまりました。
どうぞよろしくお願いいたします。

ということで初めてのお題「なぜ映画館が好きなのか?」
山口さんのお手紙、とても頷きながら読みました。

なかでも映画館が「暗い」こと。
暗闇っていいですよね。わたし、怖がりで暗闇が苦手なんですけど、映画館の暗闇は大好きです。だって大抵は他に誰かいるし、劇場を出ても誰かいるし、とても安心して暗闇を楽しめます。

山口さんの言う、映画が始まろうとするその瞬間の「私たちは、まだ見ぬ映画を待つだけの人になり下がる。友人連れも一人客も、全員が平等に、ただ待つのみ」という感覚、よくわかります。映画館って、その席に座ってしまえば自分は何もしなくとも、世界の様々な場所で、様々な立場で生きている人々のものがたりを暗闇でただ見つめることができる。どこから来たのか知らない人たちの中で。

映画が終わったあとの時間も好きです。明るくなった場内、なんども映画を観てきたはずなのに、毎度その明るさに驚かされます。一気に現実に戻されますよね。
誰かと連れ添って観ていた人が感想を喋り出したら思わず聞き耳を立ててしまいます。直後に出る言葉って、生な感想で勢いがあって面白いですし、運が良ければ一体感を味わうことも。おもしろかったときの興奮も良いですが、ヒドい映画だったときの疲労感や、なが~い映画の達成感も好きです。

これが「団体で行く個人旅行」(名言!)の可笑しみでしょうか。
でもたまに、「個人で行く個人旅行」になることありますよね・・・そう、貸し切りです。

わたし、たまに1日の営業が終わったあとに1人で試写をするんです。たった1人をいいことに、姿勢をだらーっと崩したり、席を移動したりして、映画館で働く者の特権!と言わんばかりに自由に楽しみます。
でも、物足りない気分になるんです。
たまたま貸し切りだったときとは全く違う感覚で、どんなに面白い映画でも寂しい気分で帰宅します。

貸し切りの場合は、貸切りになったことに納得してしまう出来栄えの映画もあれば、こんな面白いものを他の誰も観ていないことに悲しいような、悔しいような、そして「わたしが頑張って広めなければ!」という使命感を抱いたり、「嗚呼このユニークな映画を今世界でたった一人、わたしだけが観ている!」という感動だって生まれます。

これはどうやら、映画館で映画を観ると否応なしに、自分は世界の一員であると無意識に実感している、ということなのだと思い至りました。
その映画を観て、自分がどんな反応をしたのか。周りとの反応の違いを静かに実感すること。たとえそれが貸し切りの映画館であったとしても。

世界なんて言葉、使うのはこっ恥ずかしいのですが・・・。

そもそも映画館ってスクリーンが自分の体より大きくて、映画が始まると真っ暗になるんですよ?こんなに楽しいことはないじゃないか!と思っております。
映画館が好きな理由って、挙げたらキリないですね。こりゃ、たくさんの人とお話する甲斐がありそうです。

#映画館 #往復書簡 #好きな映画を語るように映画館を語る

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