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映画.comが選ぶ、2020年の映画ベスト10 1位はあの“歴史的傑作”!

 こんにちは。映画情報サイト「映画.com」編集部の尾崎です。

 私たちはこのたび、「2020年の映画ベスト10」を独断と偏愛のアンケートにより決定いたしました! 本年に劇場公開および配信された映画を対象に、弊社スタッフやライターの方々が投票のうえ選定。10位から1位を、noteにて発表いたします。

 いろいろあったこの1年。あなたのお気に入りの1本は、なんでしたか? 記事最後のコメント欄を開放してありますので、もしよろしければ、「この映画が自分のベスト!」など思い思いに書き込んでいっていただけますと幸いです!

 それでは投票のレギュレーションをご説明したあと、10位から発表していきます。

■投票について

・投票権:映画.comスタッフおよび、日ごろお世話になっているライターの方々。

・投票対象:2020年に公開および配信された、全ジャンルの作品(邦画、洋画、アニメ、ドキュメンタリー、劇場公開、リバイバル、VODスルーなどの区別はしない/例えばIMAXでリバイバル上映された「インターステラー」や、Netflix「泣きたい私は猫をかぶる」、ディズニープラス独占配信の「ブラック・ビューティー」なども対象)

・集計:各人に1位から5位まで作品を挙げてもらう。そのうえで、それぞれ1位=5ポイント、2位=4ポイント、3位=3ポイント、4位=2ポイント、5位=1ポイントとし、スコアを合計し順位を決定。


■第10位:弱者たちの貧困と暴力… 過酷な現実を映した群像劇

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(C)SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS

「レ・ミゼラブル」(2月28日公開/ラジ・リ監督/フランス/配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES)

~投票した人のコメント~

 2018年W杯、人々の「フランス万歳!」の声から始まる皮肉なオープニング。カンヌで「パラサイト 半地下の家族」と最高賞を競った本作には、美しく華やかなフランスは映らない。郊外の低所得者向け団地の住民と警察官、そして移民同士での憎悪と対立。弱者たちの貧困と暴力連鎖をリアルに描いた本作は、すべてラジ・リ監督の実体験によるもので、この映画が仏政府も動かした。達観したような子役の演技とドローンの使い方が秀逸。(今田カミーユ)


■第9位:映画に愛し愛され生きた巨匠の“遺作”

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(C)2020「海辺の映画館 キネマの玉手箱」製作委員会/PSC

「海辺の映画館 キネマの玉手箱」(7月31日公開/大林宣彦監督/日本/配給:アスミック・エース)

 メガホンをとった大林宣彦監督は、本作の当初の公開日だった2020年4月10日に永眠した。16年8月にステージ4の肺がん、それも余命3カ月と宣告されて以来、全身の苦痛をともなう闘病を続けながら、映画の現場に立ち、およそ4年にわたり壮絶な生命の炎を燃やした末の幕引きだった。本作は映画とともに生きた巨匠の、人生のすべてが収められた集大成的作品だ。こめられたメッセージは、これからの世界と未来そのものを形作る人々、そして未来の担い手である新世代の人々に対する、平和への希求である。物語はもはや「面白いかどうか」「巧みかどうか」という水準をはるかに超越しており、キャストたちは玉手箱からたまらず飛び出したかのような躍動を見せ、あなたの五感は経験したことのない刺激を受け取るだろう。「映画と踊れ」。なるほど、なんと巧みな惹句だろうか。(尾崎秋彦)


■第7位(同点):口コミ広がりヒット! まさかのバトル・アクションも話題に

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(C) Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来」(11月7日公開/MTJJ監督/中国/配給:アニプレックス、チームジョイ)

 昨年の小規模公開時から評判のよかった中国アニメ。百聞は一見に如かずで、詳しくない人が見れば日本のアニメと思っても不思議はない完成度に感嘆。異能力バトルのアクションシーンにも目を見張りつつ、主人公シャオヘイとムゲンが旅の中で培う深い絆も、ベタだけれど胸に響く。キャラデザインも親しみやすく脇役も個性的なので、オリジナルのWEBシリーズも見てみたくなる。今後増えるかもしれない、日本における中国アニメの先駆者として見て損はない。(あさかよしあき)


■第7位(同点):映像美がとにかくすごい! 低予算ながら魅力に満ちた恋愛譚

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(C)Lilies Films.

「燃ゆる女の肖像」(12月4日公開/セリーヌ・シアマ監督/フランス/配給:ギャガ)

 21世紀のいま、18世紀のフランスの田舎を舞台に、見事なLGBTQ案件を仕上げたセリーヌ・シアマ監督の才能にただただ脱帽しました。脚本も巧みだし、撮影も素晴らしい。ロケーションもよく見つけたもんだと。しかもこれ、かなりのローバジェット案件ですよ。シアマ監督は、凄いクリエイション能力を持った変態女性監督ですね。(駒井尚文)


☆ここでちょっとブレイク

 ランキングの発表中ですが、2020年の劇場公開本数について、軽く振り返ってみたいと思います。4月に緊急事態宣言が発令されると、映画館は休業を余儀なくされ、多くの作品が公開延期の措置を講じました。

 それにより、業界では「年間の劇場公開本数は例年よりも減少する」と言われていました。ここ数年、公開本数の増加率は常に議論されるところでしたので、減少に転じればまたひとつ議論が生まれるわけです。

 で、実際のところ、本数はどう推移したのでしょうか? 映画.comのディレクターが、弊社の作品データベースから調べてみました。

ああ

 注目は20年4月(13本)と同5月(4本)の少なさ、そして同10月(153本)の多さ。そして結果として、過去最高の公開本数とされる昨年と比較して、総計で約200本減少している点も興味深いです。

 次に気になるのは興行収入の合計ですが……これらの詳細な振り返りはまた別の機会に譲るとして、今回はランキングに戻りましょう。5位は同点で、対照的な2作品が並びました。


■第5位(同点):映画館で見られる日を待っていた! みずみずしい“幸福”の一作

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「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」(6月12日公開/グレタ・ガーウィグ監督/アメリカ/配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)

 緊急事態宣言解除後、久しぶりに映画館で見た作品。もう、冒頭から素晴らしかった…! シアーシャ・ローナン扮するジョーがNYの街を駆け抜ける姿を目にした瞬間、コロナ疲れが吹っ飛びました。現代以上に抑制された社会で、明るく、たくましく、美しく、時には涙も見せながら、“幸せ”を追い求める四姉妹が愛おしかった。そして、ティモシ―・シャラメの美貌に、ただただ酔いしれました。(MOMO)


■第5位(同点):驚異の“ワンカット”が凄まじすぎて… 究極のノンストップ・ライド映画

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(C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

「1917 命をかけた伝令」(2月14日公開/サム・メンデス監督/イギリス・アメリカ合作/配給:東宝東和)

 全編がワンカットで撮影されたかのような映像がどうしても目を引いてしまい、編集点を探そうとする意地悪な心が出てきそうでしたが、途中からそんなことどうでもよくなりました。撮影技術や、綿密に練られた導線の素晴らしさを、演者と物語が超えてくれました。とにかくメインキャストのジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマン、そして彼らを追い続けた全スタッフに労いの拍手を送りたくなる作品。比較的知名度の低い2人の若手俳優が演じたからこそ、感情移入できたのだと思います。そういう意味では、キャスティングの段階から計算しつくされた映画です。(クチナシ)


■第4位:逆境、逆襲、大逆転―― どこまでもアツい挑戦の実話

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(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

「フォードvsフェラーリ」(1月10日公開/ジェームズ・マンゴールド監督/アメリカ/配給:ディズニー)

 男たちの熱い友情! というところはもちろんもえましたし、家族(妻・子)との関係性とかもみていて涙なしには見られない熱い作品でした! そして何より、IMAXで鑑賞したときの音! 車好きな方が、エンジン音にロマンを感じると言っていたことがガツンと理解できるくらいエンジン音に興奮しました! ぜひ爆音でこの興奮を味わってもらいたい!(蛯谷朋実)

 と、ここまでランキングを振り返ってみて、「洋画が強いな~」という印象。そしてジャンルをざっくりと分けると、“ヒューマンドラマ”に評価が集まっているように思えます。

 それでは、トップ3の発表に参りましょう。


■第3位:最強の“愛され映画”! ユニークが過ぎる物語に絶賛連発

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(C)2019 Twentieth Century Fox

「ジョジョ・ラビット」(1月17日公開/タイカ・ワイティティ監督/アメリカ/配給:ディズニー)

 リアルなヒトラーを映さないという手法、連なる靴と足のイメージ、恩恵と弊害を生み出す空想のパワー、グッとくる天丼展開等々、思わず「上手いなぁ~」と惚れ惚れする要素だらけ。何より普段は容易く受け入れられない「愛は最強の力」という言葉を、この映画の中では信じることができました。そして、ジョジョとエルサのダンス! この光景は、一生忘れないでしょう。あの時代、あの瞬間に「とりあえず踊っとく?」なんて……笑えて、泣けて、やっぱり最高過ぎるじゃないですか(岡田寛司)


■第2位:難解すぎて逆に社会現象 超絶怒涛の映画体験、何度味わった?

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(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

「TENET テネット」(9月18日公開/クリストファー・ノーラン監督/アメリカ/配給:ワーナー・ブラザース映画)

 いま生きている「世界」や日常が果たして現実なのか、「世界」の見方が変わる映画だと思う。そして映画の新たな表現の可能性を押し広げた。まずは見て感じて欲しい。もう一つの“現実”かもしれない世界が目の前に現れ、その中に埋没して体感すると、これまでの自分の中の概念が覆されるだろう。そうすると作品の中に散りばめられたキーワードやラテン語の回文、細部のディテールをさらに理解したくなるはずだ。(和田隆)


 いよいよ第1位の発表! 映画.comが2020年の“ベスト”に選んだのは、この作品です!


■第1位:歴史的快挙を達成! 行き場のない高揚もたらす大傑作

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(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

「パラサイト 半地下の家族」(1月10日公開/ポン・ジュノ監督/韓国/配給:ビターズ・エンド)

 「すごいものを見てしまった」という久しぶりの感覚。スクリーンから匂いがする映画ってなかなかない。脚本も、演出も、カメラワークも、もちろん演技もすべてが完璧で、圧倒されて言葉が出ない、これが映画だと思いました。ポン・ジュノ監督が描く“家族”は常に生々しく心を揺さぶられるけれど、「パラサイト」は別格。当時米アカデミー賞作品賞有力と言われていたどのハリウッド作品よりも、衝撃的でカタルシスがありました。韓国企業が出資して韓国人監督が撮った全編韓国語の完全なる韓国映画。高く厚い壁があっても、これが作品賞を取らなかったら、私は一生アカデミー賞に失望すると本気で思った1作です。(クチナシ)
 編集部一同が熱狂した2020年を象徴する意欲作。賞レース席巻については最早語るに及ばず、特筆すべきはポン・ジュノ監督の作家性に尽きる。かつて漫画家を志望していたことも影響しているのだろうか、画角に応じた立体感を構築することに秀でていることも、ポン監督にしかない大きな強み。芸術性と娯楽性の均衡を保ち、鑑賞後に行き場のない高揚をもたらしてくれる類稀な個性に、惜しみない喝采を送りたい。(大塚史貴)

■映画.comが選ぶ2020年の映画ベスト10 ~まとめ~

1位:「パラサイト 半地下の家族」
2位:「TENET テネット」
3位:「ジョジョ・ラビット」
4位:「フォードvsフェラーリ」
5位:「1917 命をかけた伝令」
5位:「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
7位:「燃ゆる女の肖像」
7位:「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来」
9位:「海辺の映画館 キネマの玉手箱」
10位:「レ・ミゼラブル」

 あなたの“ベスト映画”は入っていましたか? コメント欄にて、感想やご意見などお待ちしております!

 新型コロナウイルスの感染拡大により、映画をふくむエンタテインメントの存在意義が問われた2020年。しかしその一方で、数多くの傑作映画が公開され、私たちを大いに喜ばせてくれたのも事実です。

 来年もまた、期待作が目白押し。

 1月1日の「新感染半島 ファイナル・ステージ」を皮切りに、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「映画 モンスターハンター」「ノマドランド」「キングスマン ファースト・エージェント」「るろうに剣心 最終章」「ブラック・ウィドウ」「フリー・ガイ」「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」「DUNE デューン 砂の惑星」「トップガン マーヴェリック」などなど……今から待ち遠しい気分でワクワクしますね。

 2021年は映画ファンにとって、そして世界中の人々にとって、素敵な1年でありますように!

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