「子どもをほめて育てる」って本当にいいの?

最近の日本の教育や子育ての流行りとして、「子どもをほめて育てる」があります。


「ほめて育てる」のことについて、否定はしません。ただ、「ほめ方」に気をつけないと、逆効果になることがありますよ。という話を書きたいと思います。

むやみやたらにほめると良くない


むやみやたらにほめると良くありません。ほめ方を間違えると逆効果になることがあります。


このことについては、中室牧子さんの『「学力」の経済学』という本にとてもわかりやすく書いてあります。教育や子育てに強く関心のある方は、この本、かなりオススメです。

「学力」の経済学 https://www.amazon.co.jp/dp/4799316850/ref=cm_sw_r_cp_api_i_D80X27792F7QSPJ841MF


この本の中に以下のような実験について、書かれていました。


アリメカのバージニア連邦大学のフォーサイス教授らが行った実験についてです。

フォーサイス教授らは、自分の授業を受けていた学生のうち、最初の試験で成績の悪かった学生たちをランダムに2つのグループにわけ、毎週、メールで別のメッセージを送りました。

ひとつ目のグループには、宿題に関する連絡とともに(「あなたはやればできる」というような)自尊心を高めるようなメッセージを送りました。


一方、残りのグループには自尊心を高めるようなメッセージは送らず、かわりに宿題に関する事務的な連絡や、個人の管理能力や責任感の重要性を説くメッセージを送りました。


この結果、自尊心を高めるメッセージを受け取ったグループの学生は、受け取らなかったグループの学生よりも、期末試験の成績が全体的に低かったことが示されました。


この研究は、学生の自尊心を高めるようなアプローチが、学生たちの成績に良い影響を与えないこともあることを示しています。


つまり、悪い成績を取った学生に対して自尊心を高めるようなアプローチを行うと、悪い成績を取ったという事実を反省する機会を奪うだけでなく、自分に対して根拠のない自信を持った人にしてしまうのです。


むやみやたらに子どもをほめると、実力が伴わないナルシストを育てることになりかねません。


とくに子どもの成績がよくないときはなおさらです。



では…効果的なほめ方は?


効果的なほめ方は、子どもの「能力」をほめるのではなく「努力」をほめることです。


『「学力」の経済学』に、以下のような実験についても書かれていました。


コロンビア大学のミューラー教授らは、ある公立小学校の生徒を対象にして「ほめ方」に関する実験を行いました。

6回にわたるこの実験の結果において、わかったことは、「子どものもともとの能力(=頭のよさ)をほめると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する」ということです。

ミューラー教授らの実験では、子どもたちをランダムに2つのグループに分けました。

両方のグループの生徒がIQテスト(1回目)を受験しましたが、ひとつのグループの生徒に対しては、テストの結果がよかったときには「あなたは頭がいいのね」と、子どもらのもともとの「能力」をほめるメッセージを伝えました。

一方もうひとつのグループに対しては、「あなたはよく頑張ったわね」と、「努力」をほめるメッセージを伝えました。

その後、ミューラー教授らは、同じ子どもたちに、かなり難しめのIQテスト(2回目)を受けさせました。さらにはその後、最初に受けたのと同じ程度のIQテスト(3回目)を受けさせ、結果の推移を調べました。

すると、もともとの「能力」をほめられた子どもたちは、成績を落としてしまったのに対し、「努力」をほめられた子どもたちは成績を伸ばしたのです。

ほめ方の違いは、子どもたちの取り組み方にも影響を与えました。

「頭がいいのね」ともともとの能力をほめられた子どもは、2回目の難しめのIQテストを受ける際、この試験のゴールは「何かを学ぶこと」ではなく、「よい成績を得ること」にあると考え、テストで良い点数を取れなかったときには、成績についてウソをつく傾向が高いことがわかったのです。

また、彼らは、よい成績が取れた理由を「自分は才能があるからだ」と考えたように、悪い成績を取ったときも「自分は才能がないからだ」と考える傾向があったことがわかっています。

一方、「よく頑張ったわね」と努力した内容をほめられた子どもたちは、2回目、3回目のテストで粘り強く、問題を解こうと挑戦を続けました。努力を褒められた子どもたちは、悪い成績を取っても、それは「能力の問題ではなく、努力が足りないせいだ」と考えたようです。

能力をほめることは、子どものやる気をなくすことにもつながってしまうのです。


というわけで


最近の日本の教育や子育ての流行りとして、「子どもをほめて育てる」がありますが、むやみやたらにほめるのは、危険です。子どもの「能力」ではなく、「努力」をほめたほうがいいですよ。頑張りをどんどんほめていきましょうね。というお話でした。


読んでいただきありがとうございました。