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【創作掌篇】付け句3本立て(テーマ:都市伝説)

シゲフミ(以下、シゲ):出題者。出先でコンビニに寄ったところ、ふと並べられた雑誌・漫画の一角を見て思いついてしまった。
クサナギ(以下、ナギ):回答者。お気に入りのパン屋さんで買い物をした帰りだった。急な思いつきを振られて驚いている。


シゲ:藪から棒とは知ってのことで、例えば「コンビニに楳図かずおが置いてある」で上の句(五・七・五)になると思うんですが、下の句(七・七)をつけてホラーにしてください。それも、アイデア一発勝負のB級じゃない方で。

ナギ:無茶ぶりだなあ。でも付け句ってチャレンジしたことがないからいい機会かもしれない。あんまりホラーじゃない気もするけど、こんな感じでどうでしょう。

コンビニに楳図かずおが置いてあるここから出られなくてもへいき

シゲ:まあ、いいじゃないですか、理不尽はホラーの定石でしょう。しかし、これ十分にホラーでは? なんたって「~ても」の前にくるのが、必ずしも単なる想像とは限りませんよ。ふとした拍子にラックへ刺さったラインナップを見て空想に耽っているんじゃなくて、既に今後を予期させるような状況があって安堵したのかもしれない。

ナギ:よかった!主体の年齢や心情を読み取れなくすることで、不気味な印象を与えられるかなと思って「平気」をひらがなにしてみました。頭の体操になるから、他にも思いついたら送ってよ。

シゲ:なんなら、表記の使い分けが失われていくようにも見えるから、物を考える余裕がなくなっていったようにも映るんじゃありませんか。じゃあ「目が合った、近所の野良が逃げ出した」に続けてホラーにしてください。

ナギ:間髪入れずにお題出してくる。野良犬は今の時代珍しいから、この「野良」は野良猫だろうな。下の句にこの野良が逃げ出した理由を持ってくるのがいちばん自然かも。こんな感じでどうでしょう。

目があった、近所の野良が逃げ出した優しいひとにだけ見える僕

シゲ:まず直視したら「逃げ出した」って言ってるからな~。この「僕」は、うわべに限れば「僕」が思うほど穏やかな交流が期待できると感じられにくい存在なのかも知れない。大多数に見えないというより、たぶん意識的に無視されている……? もちろん素直に超常的な類と受け取ってもいいし、あるいは認識の齟齬があると了解してもいいですね。こういうのは共同体が何を恐れるかの線引きによっちゃあ、怪異扱いされることがホラーになる。しかし、これ、下の句の方を考えようとすると案外ムズいな……じゃあ「プラットホームに影がない」を組み込んで、ホラーにしてください。

ナギ:七五だから、二句・三句目にしてもいいし、四句・五句目に組み込んでもいいんだよね? これはどうでしょう、伝わりにくいかな。

車窓とはシャッターの連続だろうプラットホームに影のない

シゲ:いやいや、車窓から見えた風景ってのは、物語の始まりを予感させるに足るワンシーンですよ。たとえ、ハッと何かに気づいても、続きを垣間見ることが許されていないしな。
 おっと、いつの間にコンビニの楳図かずおが消えている……。皆さんも、付け句でホラーな短歌の続編を作ってみては。

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