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亡くなった方を思いながら、お香を手づくりする。香を通して気持ちを届け、つながる、大切な恒例行事。

3月9日は親友のお母様の命日。
若くして亡くなられ、今年で30回忌になります。

2015年、私はお香に携わる「香司」としての活動を始めました。
気づけば、親友のお母様が亡くなったのとほぼ同じ年齢になっていました。

お香を作るための原料を揃え、自宅で様々なお香を作り、生徒さんを集めて講座を開催している中で、ふと、

「親友のお母様の命日に毎年お香を作ったらいいんじゃないかなぁ」

と。

すぐにそう親友に伝えたところ喜んでくれて、それ以来、命日を迎える前にお香を手作りすることが毎年の恒例行事になりました。

そして、今年もその日を迎え、気づけば30回忌。
その30年間を親友とともに過ごしてきましたので、時間の流れを懐かしく思います。

今年も変わらず、白檀、丁子、龍脳など、お香に使う天然原料を10種類ほど調合。


好みの香りに仕上げたら成形です。

供えるためのお香は本来、線香にするのですが、
「作りやすくて、焚きやすいから」との親友の希望で、去年あたりからコーン型だけに。


ちなみに、線香やコーン型のお香は、調合した香原料に椨(たぶ)と水を加えて練り、形を作っていきます。
(椨は線香などのお香が型崩れしないようにするための基材。糊のような役割)

そうしてたくさんできたお香のタネを少しずつ手に取って、捏ねて好きな形にしていくのです。

ひとつひとつ、お香を作っていく間、私たちは色々な会話をしています。

私「今年で何回忌だっけ?」
親友「もう30回忌!もうママが亡くなった年齢を超えたね」

私「今年も甘くていい香りができたね」
親友「ママが好きそうな香りかも!」

そんな風に会話をしつつ、お香を作っている時間は亡くなった方と会話をしているようだなと思います。
そして、今胸にある思いも届けられているようだとも思うのです。

私が香司としての活動を始めてから、何度も読み返すお香の本があります。
その中でお線香について、こう書かれています。

芳香とともに、香炉からひと筋の煙がスッの立ち上っていきます。
天に向かって伸びていく美しい香煙を、仏と自分をつなぐ回路であるととらえました。(『香と日本人』稲坂良弘著・角川文庫)

香煙を通して仏様と話ができるとも、故人とつながることができるとも考えられているお香。

そのお香を手作りし、目を閉じ、手を合わせて香を焚く。
それは、生きている私たちにできることのひとつです。

お香は亡くなった方に供えるものであると同時に、今生きている人に力をくれるものでもあると常々思います。

故人に思いを馳せながら手作りするお香づくり、これからも大切に続けていきたいです。心残りのないように。

ちなみに、「E」は亡くなった親友のお母様のイニシャルです😊


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