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第29話 国際契約書の記載事項ー当事者の約束に続くこと

約束ごとに続いて、実務的なことがらを書く

第23話から第28話で、「売買契約書」「役務提供契約書」「ライセンス契約書」の最初に書くべき基本的なこと、つまり「当事者の約束ごと」の核心は何なのか、を考えてみました。
 
さて、第2話では国際契約書の記載事項をざっと眺めました。そこでは一番大事な「約束ごと」に続いて、その約束を「どう実行するか」が記載されていました。これらは実務条項とよんでもよいでしょう。
 
たとえば売買契約では、最初に「商品」と「商品代金」が交換される旨が約束されますが、それだけでは取引の全貌は浮かんできません。 

取引を頭に思い浮かべてみると
「いつ商品を引き渡すのか」(上の写真はその例です)
「所有権はいつ売主から買主に移転するか」
「もし運送している船が沈んだら、それでも売主は代金を請求できるのか」
「商品に問題があったら、買主はどうすれば売主の責任を問えるのか」
「知的財産権侵害があったらどう対処するか」
などと色々なことが考えられます。これも記載する必要があります。

何を書くかは取引によります―想像力を発揮する必要があります

この実務条項部分に何が書かれるのかは、取引の内容によって変わります。
 
上では売買契約を例にとって話しましたが、役務提供契約なら、役務はどのように提供されるか、役務提供の期間、報告書の提出などがあればその要領、時期といった規定が出てきます。
 
また、ライセンス契約であれば、技術の移転の方法、許諾者による技術研修、関連技術開発、新たな知的財産権の帰属、ロヤルティーの計算の方法、支払時期、知的財産権の侵害/被侵害の場合のことなどが書いてあります。
 
このように、実務条項を書くには「取引がどう始まって、どう終わるか」を、自分の商品、その取引の当事者を前提に、想像力を働かせて考えなければなりません。そしてそれをカバーするような規定を作るのです。(☚これがポイント)

実務条項は自分に有利に書くことが大切です

その際に1つ大事なことがあります。営業担当者が「いかに利益を上げるか、それも出来るだけ苦労をせずに!」と考えるように、契約書作成担当者も「いかに自分に有利に契約書を構成するか?」を考えなければなりません。誤解を生む表現かもしれませんが、書くときには「自分中心」に考えるのです。
 
契約書は客観的に見て「衡平」「平等」に書かなければならないわけではありません。それは各々の当事者が自分で考えればよいのです(もっとも、銀行と個人とか、船会社と小さな荷主、といったように明らかに力の差があるときには、そうばかりも言っていられないことは覚えておいてください)。

契約書を書くには、難しいことは約束しない、いわなくても良いことはいわない、相手の義務は容易に追及できる(英文契約書は義務中心に書くことも思い出してください。第23話)ように書けばよいのです。相手だってプロですから、反論してきます。本当に不衡平、不平等だったら誰もサインしません。

つまり、実務条項は取引のパターンだけで記載事項が決まるのではなく、
個々の取引の違い
書く当事者の立場
によって、内容が異なるべきなのです。そして、それぞれの段階で自分に有利になるような規定を書けばよいのです。(☚これがポイント)

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