【家族エッセイ】6歳だった母のたった一つの「父の記憶」
昭和21年生まれ、今年で77歳になった私の母は、苦労の多い人生のわりに朗らか、おっちょこちょいで周囲を和ませる天然さを持ち、頑張り屋で、いざ、という時には胆力のある人だ。
そんな母が5歳の時に母親を、6歳の時に父親を亡くし、養母に育てられたという生い立ちは、私も子どもの頃からなんとなく知ってはいた。
母親の死因は今となってははっきりわからないが病死で、長女である私の母を筆頭に幼い三姉妹がのこされ、心身共に疲弊していたであろう父親は、その一年後に心筋梗塞で急死したとい