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その連続性が信じられない

あぐらをかいて息子を抱える。腕の中で、彼は眠そうに薄目を開けながらミルクを飲む。だいふく餅の小さな手で、私のTシャツを掴んでいる。規則正しく口を動かしている。

心のどの角度から感じてみても、無垢で不思議な存在だ。正直、無垢なあまり、同じ人間とは思えない。この息子と私は、本当に地続きなのか?不思議だ。

セミや蝶の成長過程には、劇的な変身がある。一方で、私たちにはそれがない。ベビーからシニアまでの変化は、連続的だ。

不躾な言葉選びかもしれないけれど、「このかわいい不思議な生き物は、いつ人間になるんだろう」と、1日のなかでしょっちゅう思う。この世に生まれて半年が過ぎた彼は、よく笑うし泣くし、とても人間的ではあるけれど、やっぱりまだ「かわいい不思議な生き物」だ。

当たり前だからこそ不思議、と思うことは他にもある。どんな人もその昔は赤ん坊だったこと。それに例外は全くないこと。

そつなく対応してくださる市役所の窓口の女性も、居酒屋の外でタバコをふかしているお兄さんも、テレビで見かけるスポーツ選手も政治家も、「悪人」も、身近な周りの人たちも。

みんなもれなく絶対に、赤ん坊だったことがあるのだ。

寝ぼけながらミルクを飲む息子の長いまつ毛を見ていると、みんなもれなく大切にされて大きくなればいいのにな、と率直に思った。等しく赤ん坊として人生を始めたのだから。

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