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【歴史的タロット考察】世界最古のタロットとは?

タロットカードが登場したのは日本の室町時代です。
その頃は占いのためのツールではなく、カードゲームのためのものとして作られました。
今でいうトランプ(playing card)ですね。
その名も「トリオンフィ」「トライアンフ」などとも呼ばれていました。

では、一番古いタロットとはいつ、どんな形で登場したのでしょうか?


現存最古のタロット

まずタロットがカードの姿で残っているもの…それはイタリアの貴族・ヴィスコンティ家のタロットです。
ヴィスコンティのタロットは3種類(3デッキ)が確認されていて、今も博物館等に収蔵されています。
その中でも最古されるデッキは「ブレラ・ブランビアパック」と呼ばれるデッキで、その成立は1447年以前とされています。


ヴィスコンティのタロットについては次回以降に細かく考察していきたいと思います。

文献に見られる最古のタロット

ヴィスコンティ家のタロットの成立とほぼ同じ頃、同じくイタリアにてエステ家という貴族の家の帳簿にタロットに関する記載が見られます。

1442年2月10日 祝祭用のトリオンフィの記述
同年7月12日 ボローニャの古物商に1組のトリオンフィ納品の支払い

その後も1452年、54年、61年にもトリオンフィについて記載があります。

これがエビデンスの確かな書物に出て来る最初のトリオンフィの記載です。

この時代のタロット(トリオンフィ)は貴族が帳簿に記載するほど高価なものでした。

それもそのはず…貴族お抱えの画家が1枚1枚手描きで描いているのです。
当時は貴重であった色とりどりの絵の具や金彩が施され1枚1枚が絵画のようです。
そして上記の記述のように祝祭用の記念品や贈答品として作られていました。

このカードを当時の貴族たちは子弟の教育用に使ったり、壁に飾ったりして使っていた…と考えられています。


絵画に見られる最古のタロット

1400~50年頃、イタリアのボロッネオ家のフレスコ画にこのようなものがあります。

タイトルは「Gioco di Tarocchi」=「タロットのゲーム」。
「タロッキ」はイタリア語で「タロット」です。

これは3枚連作の壁画の一つで、ボロッネオ家の遊技場と思われる部屋にドアの面以外の壁面に1つずつ描かれています。
他の二作はそれぞれ「palla(ボール遊び)」、「paimato(手を叩いた人を当てるゲーム)」で、どれも貴族の子供たちの遊ぶ様子を表現しています。

つまり、この時代「タロット(タロッキ)」という呼び名が存在していて、そのカードは、ゲーム用の札だったことがわかります。
今でいうトランプ(playng card)ですね。
(タイトルが後世につけられたのでなければ、ですが)

トランプはタロットの母体であったとか、タロットがトランプの元である…
という説はよく耳にするところだと思います。

このフレスコ画と描かれた時代を鑑みますと、まず遊戯用のカードとしてタロットは作られていたのだろうと考えられます。

少し時代が下ってこちらは1550年頃の壁画です。
イタリア・ボローニャのポッジ宮殿のフレスコ画です。

こちらは子供ではなく大人がカードゲームに興じていますね。
その手元のカードをよく見ると…ワンドが4本交わった意匠やペンタクルのようなコインの絵柄、人物が描かれたような図案も見てとれます。
これはコート(宮殿人)のカードなのか、大アルカナなのか…はたまたバッキングなのかは定かではありません。

ですが、大人もタロットデッキを遊戯札として用いていたことがわかります。

このような遊戯札としてのタロット(タロッキ)と豪華な芸術品としてのタロット(トリオンフィ)は別の用途として作られていたのでしょう。

シャルル6世の遊戯札

1396年フランス国王シャルル6世の会計帳には、このような記載があります。
「金色や様々な色で描かれた56枚の遊技札」

これをタロットと見るか、トランプと見るか…悩ましいところだと思います。
「タロットもトランプも同じもの」と考えればこの記述こそが最古のタロットに対する文言となるでしょう。

「56枚」は小アルカナの数と合致します。
小アルカナがトランプと同じ…という説に異論は少ないと思います。
どちらも4つのスートがあり、それぞれが1~10の数札と4枚のコートカード(宮廷の人物の描かれた札)の計14枚で構成されています。
(現在では人物札は3枚ですね)
ですので、「遊戯札」とはトランプであってタロットではないと言っても良いかもしれません。

実はこのシャルル6世のタロットは現存しているのです。
パリ国立図書館に「シャルル6世のタロット」と呼ばれる17枚のカードが収蔵されていて、これこそが現存最古のタロットだとされていました。

ところがこのタロットは、1469年から1471年頃にエステ家のボルソ・デ・エステ公爵のために作成されたものだという説が有力視されています。

現在では「エステンシ・タロット」の名で復刻販売もされています。

やはりシャルル6世の遊戯札はトランプに近いものであったのでしょう。
シャルル6世の気鬱をお慰めするたに作られた…という逸話もありますので、お楽しみいただくことを命題にされていたはずです。

さて、このトランプの起源となりますと世界中にルーツがあります。
トランプの歴史についてもまたの機会にまとめていきたいと思います。

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