月刊 俳句ゑひ 水無月号〈増刊号・言葉の解説〉
ゑひ[酔]のホームページ及びnoteで発表した、月刊俳句ゑひ 水無月号の俳句の言葉解説記事です。各作品に分けて順に説明していきます。
月刊俳句ゑひ 水無月(6月)号はこちらから
『贈る』(作:上原ゑみ)の言葉
十薬 〈季語〉
植物のドクダミのこと。別コーナー「ゑひの歳時記」で取り上げます。詳しくご紹介しますので、是非そちらをお読みください。
好きだつた 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「好きだった」と(そのまま)解釈します。
ぐにやり 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「ぐにゃり」と(そのまま)解釈します。
すつぽん 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「すっぽん」と(そのまま)解釈します。ちなみにその1、「すっぽん鍋」は冬の季語らしい。ちなみにその2、すっぽんを感じで書くと、「鼈」。すごく難しい字になる。
辺
「~のあたり」ということ。「あたり」を漢字で書くと「辺り」になります。それを音読みした単語が「辺」です。「上辺」とかと一緒ですね。
柵に折る上半身
柵に対してもたれていて、柵に沿わせられない上半身の大部分は柵の向こう側に出しているような状況。身を乗り出している格好を思い浮かべていただくとわかりやすいように思います。句の表現に大きな省略があるため、こちらで補足しました。
白靴 〈季語〉
意味はそのまま、白い靴のこと。黒っぽい靴に比べて涼しげな感じがすることから、夏の季語として扱われています。現代では女性向けのものを多く見かけますが、かつては男性も多く履いたそう。よって履いている人の性別まで特定して読む必要はありません(好みで設定するのはもちろんOKですが)。
万緑 〈季語〉
眩しいばかりの草木の緑を称えるニュアンスを持った季語。元々は漢文由来の表現で、「紅一点」の語源となった「万緑叢中紅一点」などがあります。俳句の季語として定着した起源は明確で、中村草田男の名句と言われる「万緑の中や吾子の歯生え初むる」で広く知られるようになりました。
混み合へる 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「混み合っている」と解釈します。
ぱつと 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「ぱっと」と解釈します。
持つて 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「持って」と(そのまま)解釈します。
白夜 〈季語〉
夏の時期に、回帰線よりも緯度の高い地域において、一晩中日が沈まなくなる天文現象のこと。ノルウェー、スウェーデン、フィンランドなどの北欧、カナダやアラスカなどで体験できるのですが、日本では体感できません。日本で観測できないのに、これも季語なの? と思われるかも知れませんが、不思議なことにそうなのです。恐らく、見たこともない、なかなか行くこともできない世界に対する憧れのようなものが、多くの俳人に共有されているからこそ、季語として定着しているのではないかと思います。
来ぬ 〈文語体〉
現代日本語にすると、「来た」という意味。「卯の花の匂う垣根に……」で始まる「夏は来ぬ」という童謡があります。これも「夏が来た」という感慨を言った歌です。
傾いてをり 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「傾いている」と解釈します。
『無題3』(作:若洲至)の言葉
翳り
ここでは、日陰・物陰という意味が中心ですが、場合によって意味はさまざまです。ただの「影」というよりは心象に迫るようなところが、「陰り」と書くよりはマイナスの印象が薄い感じがします。谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』という本がありますが、そこでもキーとなる概念です。
捨つる 〈文語体〉
現代日本語にすると、「捨てる」という意味。
紫陽花 〈季語〉
梅雨の時期を象徴する植物の名前。難読語ですので取り上げていますが、その中では有名な部類ですかね。花びらのように見える紫色の部分は、実は「がく」という部分で、ちょっと見かけによらない裏切りもあります。土壌の酸性度(pHで測るあれ)によって色が変わるそうですが、一株でもバリエーションがあるので、本当にそうなのか筆者にはわかりません。
ほのと
ほんのりと、といった意味。「ほの」はいわゆる接頭辞として、ほの暗い、ほの明るい、ほの白い、みたいに使うこともあります。
白シャツ 〈季語〉
大きく「夏服」が季語ですが、その1つとして「白シャツ」も季語です。やはり白色が陽に映えて涼しげに見えるからなのでしょうか。学校の制服だと、夏服は開襟シャツやブラウスというところも多いかもしれませんが、社会人になると季節問わず着るかも。サラリーマンの出勤風景など、夏だという実感を持って着ていないときは、季語として認められるか怪しいかもしれません。
すつぽり 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「すっぽり」と(そのまま)解釈します。
買ひたる 〈旧仮名遣い・文語体〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「買った」と解釈します。
思つてゐた 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「思っていた」と解釈します。
晴れてをり 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「晴れている」と解釈します。
来し 〈文語体〉
現代日本語にすると、「来た」という意味。「来ぬ」との違いは、文章や句のどこにあるかです。「来ぬ」は文末で、次に句点を打つときの形(終止形)、「来し」は名詞の前に置くときの形の1つ(連用形+助動詞)です。詳しいことはお気になさらず。
買ひ終はつて 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「買い終わって」と(そのまま)解釈します。
白雨 〈季語〉
夏に降る強い雨、夕立のこと。雨粒が大きく降水量が多いと、視界が真っ白に見えることからの表現でしょう。俳句の世界には、夕立にもいろいろな言い方があります。「驟雨」だと強い雨音が、「白雨」だと視覚的な雨の強さが、それぞれ感じられる気がしませんか?
雹 〈季語〉
天気が安定しないときに降ることがある、氷のかたまり。当然、当たると痛い。気象庁の定義では、直径5ミリメートル以上の氷の粒を指すそうです。それ以下だと「霰」だそうです。俳句では、粒のサイズではなく季節で両者を分けており、雹は夏の季語、霰は冬の季語です。
含羞草 〈季語〉
マメ科の植物ですが、何と言っても、葉にものが触れると、それに反応して葉が動いて閉じるという特徴が有名です。小さい頃などは、似たような形の植物を見つけると、とりあえず触ってみて閉じるかどうか試していましたが、オジギソウはほぼなくて、その度ちょっと裏切られた気分になっていた記憶が。
起きむとするを 〈旧仮名遣い・文語体〉
現代日本語にすると、「起きようとするのを」という意味。起きるというのは、オジギソウが開きつつあることを指していると推測できます。
買ふ 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「買う」と(そのまま)解釈します。
蚯蚓 〈季語〉
今回登場する難読季語の1つ。梅雨時期によく目にするあの生き物です。俳句の中では、あの形状に着目したり、道端で乾いている様子が詠まれたりすることが多い気がします。一般にはあまり好まれない生き物ですが、俳人の中には、句の題材として好んでいる人が結構いると思います。
厚木
神奈川県の内陸にある市の名前。東名高速道路や小田原厚木道路が通り、日系メーカーの工場も多いらしい。この市で自動車登録をすると湘南ナンバーにならないそう。
来てしまふ 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「来てしまう」と(そのまま)解釈します。
その人
だれ? と思いますよね。それで良いのです。でもわざわざ「その人」って言う人ってあまりいないですよね。一言では言えない関係性や心情があるのかもしれない。そんな推測から句の読み解きを始めると、想像が膨らみます。
をらず 〈旧仮名遣い・文語体〉
現代日本語にすると、「いない」という意味。
青簾 〈季語〉
竹でできたすだれのこと。日差しを遮ることができるという実利的効果もありつつ、竹の青さ(緑というべきかも)が涼しげな感じを催します。現代の家にはあまりないでしょうが、広い家の大窓やふすまにかけておくのかな、という印象が個人的にはあります。
憑いていく
意味上は「付いていく」、フォローの意味と解釈していただいて構いません。でも、わざわざこの字を使っているということから、どんな人の像が浮かぶでしょうか?
なめくじり 〈季語〉
なめくじのこと。夏の嫌われ者季語の大関クラスと言ってもいいでしょう。「なめくじら」ということもあります。4音の「なめくじ」を使いたくないとき、もっとダラっとした感じを伝えたいときなど、5音のこれらのフレーズを使うことがあります。
小川の|やうに 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「小川のように」と(そのまま)解釈します。
茅の輪くぐり 〈季語〉
元々旧暦の6月30日(最終日)に行われていた「夏越の祓」という行事の中で行う儀式の一つ。茅などで編まれた大きなリースのようになった輪の中をくぐることで、半年間の穢れを浄めることになります。年の中間に当たるため、年越と並ぶ神事として大切にされてきました。今でも6月末や7月末に茅の輪を置いている神社に行くと、くぐることができますよ。
あつさり 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「あっさり」と(そのまま)解釈します。
迷ひ 〈旧仮名遣い〉
上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「迷い」と(そのまま)解釈します。
アンソニー
誰だ? ってなりますよね(2回目)。それもそのはず、誰のことかはこのままではわからないでしょう。でも、アンソニー・ホプキンスとか、アンソニー・デイビスとか、有名な人が思い浮かぶかもしれません。そんなイメージを使って読んでもいいのでしょう。ところで、アンソニー ”Anthony” って、ラテン語のアントニウスに由来していて、イタリア語のアントニオ、フランス語のアントワーヌなどに通じるらしいです。アントニウスといえば、クレオパトラと繋がったローマ帝国時代の人物でもあります。まあ、アンソニーってそんな感じ。
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