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【メルマガ絵本沼】vol.29 「プロ野球絵本」というジャンル_『野球しようぜ!大谷翔平ものがたり』(世界文化社)を読む。

【メルマガ絵本沼】をお読みいただきありがとうございます(^^)/
ひきつづき猛暑にお気を付けください。
この夏を無事に乗り切れるのか、不安になるほどの暑さです…

今回のお題は「プロ野球絵本」です。
本年3月に久々にこのジャンルの新刊が発売されて、めっちゃわくわくしてページを開きました。

ひとときお付き合い願えれば幸いです。


【お知らせ】
■第二期絵本沼読書会#8『わすれられないおくりもの』(評論社)を開催します。
同じお題絵本、同じ内容の2回開催で(メンバー入れ替わり)、日程と募集人数は下記となります。9/7(土)よりお申込み開始。第二期も残すところあと3回です。お申込みはお早目にどうぞー。

・9/14(土)見学者3名(参加者6名は受付済)
・9/21(土)参加者6名/見学者3名

※絵本沼読書会では毎回こんな感じで絵本の解説をしています。
・『エルマーのぼうけん』(福音館書店)
https://www.youtube.com/watch?v=R6tmEgcJQ-Y


【メルマガ絵本沼】
「プロ野球絵本」というジャンル_『野球しようぜ!大谷翔平ものがたり』(世界文化社)を読む。

■SNSで知る。
本年3月ごろ、スマホを眺めていて大谷選手の絵本が出たことを知った。

©世界文化社

と、私が『野球しようぜ!大谷翔平ものがたり』(とりごえこうじ/山田花菜/世界文化社/2024)を知ったのは、SNSの投稿だった。 

それもえらい数で、絵本の発売時にこんなに投稿されるなんて上々の出だしじゃないか、やっぱ大谷選手すごいな、と思っていたら、いくつか読むと予想外の切り口だった。

「あの通訳も登場!」
 
そこかい!

とまあ、あの通訳の事件とこの絵本の刊行はタイミングが見事にかぶり、出版社も放置するわけにいかず、といって回収するほどのことでも無く、重版からは該当シーンをカットする着地となった。 
結果、メルカリには初版がたくさん出品されている。

で、私がどうだったかというと、「久々に「プロ野球絵本」の新刊が出るのか!」と、素朴に思った次第。
まあ、「あの通訳も登場するんだ」とも、すこしは思ったのだけれど。

■「プロ野球絵本」というニッチなジャンル
「久々に」とあるように、「プロ野球絵本」の数はとても少ない。
というか、そもそも野球を題材にした絵本が少ない。
といってサッカーやバスケの絵本が多いというわけでもなく、スポーツを題材にした絵本自体が少ないという話で(読み物は多いけど)。

理由は「商業出版としての絵本」の大半の対象読者は未就学児童であり、そこに向けてわかりやすくスポーツを描くというのは、なかなかに難しいことだからだ。

もちろん、ちっちゃい頃からサッカー好きという子もいるだろう。
そういう子たちには刺さるかもしれない。
ただ、特定のスポーツを描くことは、ある種のフィルターを設けることでもあり、商業出版は売れてナンボなので、フィルターをかけた方が売れると確信した時以外はなるべく外すのが、自然な考え方だと思う。

※余談:なので、第27回BIB受賞の『ボクサー』(ハサン・ムーサヴィー/愛甲恵子/トップスタジオHR/2021)には驚かされた。

で、野球絵本の中でも更に少ないのが「プロ野球絵本」になる。
その定義は下記のふたつ(独自設定)。

・プロ野球の場面がある。
・実在のプロ野球選手が登場する。

みなさん、何冊くらい思いつくだろうか…?

■「プロ野球絵本」のつくり
その前に、絵本と同じく絵と文で表現する「漫画」の世界では、野球漫画というジャンルが昔っから確立されており、スポーツと漫画の相性は滅法よくて名作揃いである。

一方、前述のとおり野球絵本というジャンルは球数が少なく、また、野球漫画のように「野球というスポーツに重きを置く作品」というのを、私は見たことが無いように思う。

なので、野球絵本って「野球」+「α」の複数テーマによるつくりが一般的なのだった。

以下、その視点で代表的な作品を眺めていく。

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