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碧い額紫陽花

夜中に玄関ドアをドンドン叩く音がして目が覚めた。ドラマで見る借金の取り立てのようなド迫力に、恐怖で眠気も吹っ飛んだ。階上のご主人が酔った勢いで一つ階を間違えたのが原因だった。翌日、気立ての良い奥さんが額紫陽花の鉢植えを抱えて、お詫びに来られた。「ごめんなさいね〜!」とおっしゃる彼女の大きな笑顔と、額紫陽花の爽やかな碧がリンクして、この時期になると思い出す四半世紀前の昔話。

・・・と、ここでやめておきたかったのだが、実はこの話にはオチがある。その数年後に私は職場で階上のご主人と同じ過ちを犯したのだった。一つ扉を間違えて鍵を差し込み、鍵が壊れて開かないのだと思い込んでガチャガチャやっていると、同僚が不審顔で出てこられた。仕事中につき、私はもちろん酔ってなどいない。自分のほうがよっぽど怖いと確認するのもこの季節😆

あれから二度の引越しを経て
今では私の背丈を越え、庭の主となった額紫陽花