見出し画像

お化けとの遭遇

例年、夫の読経でおうち法要を営む我が家はお盆渋滞とは無縁 …… のはずが、うっかり野菜を切らして車を走らせ、いつもと異なる混雑に慌てて判断力を失った。渋滞を回避するつもりで咄嗟にハンドルを切った先が、よりによって霊園通り。田舎道でお盆渋滞にハマるとは!

怖がりだから恐い話は聞きたくないのに、子どもの頃、母に尋ねては何度も聞いた話を、ふと思い出した。それは曽祖母の体験談で、山の中で狸に化かされた話だ。家に帰ろうと思っても、どうしても辿り着けない。山道はどんどん暗くなってきて、振り返ると枯れ枝が箸のように走って追いかけてくるのだという。

もしかしたら、今回の私の迂回路も、現代版の化かされた話として脚色できるかもしれない。

川端誠さんがご著作の「お化けシリーズ」について、奥深い言葉を記しておられる。

川端誠『お化けの猛暑日』(BL出版、2021年)

 お化けと幽霊は違います。幽霊は人にたたりますが、お化けは場所と時間にたたります。人が暮らしのルールを守らなかったり、自然のルールを守らなかったりして、場所や時間を違えて行動すると出てくるのがお化けなのです。
 お化けは、神様になれなかったもの、あるいは神の零落したものと考えられています。人が暮らしのルールを守り、自然のルールを守っていると、ごほうびをくれるのが神様で、ルールを守らないといたずらに出てきたり、こらしめに出てくるのがお化けの役目なのです。ですから「お化け」は庶民が考えた、正しく暮らすための方便といっていいでしょう。
 ということは、お化けたちはこの日本という風土の、正しい暮らしをしているのではないか、私たちを見守ってくれているのではないか、そう考えて作ったのが「お化けシリーズ」です。

川端誠『お化けの猛暑日』本袖より抜粋

お化けとの遭遇以降、おそらく曽祖母は明るいうちに山道を通るようになっただろうし、私は早めに冷蔵庫をチェックして、慌てて買い物に行くことのないよう改めるべきなのだろう。

つづいて川端誠さんご自身からの絵本『お化けの猛暑日』についてのご紹介文をどうぞ。

 最近は「猛暑日」という言葉が、あたり前になってきましたね。これは、お化けたちも今まで経験したことのないことです。自然と共に昔からこの風土に暮らしてきたお化けたちは、どのように厳しい暑さをしのぐのかなあ。

川端誠『お化けの猛暑日』本袖より抜粋

この絵本の中身が気になりませんか? ろくろっ首とか大入道とか日本の伝統的なお化けたちが勢揃いしていますが、不思議と恐くないのです。今回はネタバレなしで、お化けたちの猛暑の過ごし方をぜひご覧になってみてくださいね。