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「自分は成長できているのかな?」不安になった時に読みたい絵本『まだかな まだかな』

絵本専門のリサイクルショップえほんのがっこう。
僕は2018年12月までの4年間、
絵本専門のリサイクルショップを運営していました。

お店を閉めた後、
2019年からはまったく異なる仕事をしています。
今までの個人事業主としての働き方から、
勤め人としての働き方へ。

環境は変われど、今まで関わってきた絵本とこのまま疎遠になってしまうのはあまりにもったいないと感じ、
このnoteで自分なりの絵本紹介の場を作っていきたいと思います。

絵本屋の視点に加え、ここまで約4カ月間の勤め人としての視点を、
絵本紹介に盛り込められたら面白いかもしれない。
そんな淡い期待を持って、この文章を書いています。

早速の1回目。
大好きだったこの作家さんの絵本を紹介します。

『まだかな まだかな』
伊藤正道/偕成社

イラストレーター、絵本作家として活躍された伊藤正道さんの1冊。
伊藤正道さんの作品との出会いは稲村ケ崎にある伊藤正道さんのアトリエ「gio gio factory」でした。

お店をオープンした2014年に初めてお伺いしました。
海が近く開放感のあるアトリエに、伊藤正道さんの原画の数々。
作品とその場の持つ温かな空気に、いつまでもいたいと思ってしまうほど素敵なアトリエでした。

伊藤正道さんは2012年にお亡くなりになり、
直接お話しできなかったのは残念ではありますが、
「gio gio factory」で作品を鑑賞していると、作品を通して伊藤正道さんと会話しているような気分になりました。

さて、今回ご紹介した『まだかな まだかな』は2017年に偕成社より出版された1冊となります。
特長的なのは挿絵の色使いです。
伊藤正道さんの作品は多くの色が使用された色鮮やかなイメージを持っていましたが、こちらの作品では白黒のページも多く採用されています。

白黒で描かれたページをめくり、
色鮮やかページが出てきたときの感動は何とも言えません。
そして、不思議なことに色鮮やかページの後に来る白黒のページ、
これがすごく良い味を出しているように感じてくるのです。
色の変化で読者に感動を与えてくれる、その構成力の高さには驚かされました。

簡単に絵本のストーリーも紹介したいと思います。

黄色に輝く星に住むひとりのおじいさん。
おじいさんの持つ革の袋のなかには、かわいい種がたくさん入っていました。
その種を一つずつ丁寧に蒔き、きちんと水をやると、
ある日その種から芽が出ました。

一つの芽を皮切りに、色々な種から色々な形の芽が出てきました。
それからもきちんと水をあげていると、
芽はやがて色々な実をつけました。

初めは小さな種たちから始まりました。
丁寧に育て、きちんと水をあげることで種は芽となり、芽は実をつけます。
日々の積み重ねは決して無駄ではなく、いつかの実のための重要なステップとなっているのだと思います。

これはもしかしたら仕事と一緒なのかもしれませんね。
1日1日必死に頑張っているけれど、いつになれば大きな実がつくるのだろうか。
これまでの行動は無駄だったのでは、と不安になることもあります。
ですが、実をつけるためには日々の手入れ、水やりは欠かせません。
仕事も同様に、1日1日の積み重ねがなければ大きな成果を上げることはできないのでしょう。
だからこそ、おじいさんの姿を見ていると、自分も1日1日の積み重ねを大切にしていこうと気付かされます。

おじいさんが植えた種からは様々な姿、特徴の実ができました。
レモンやたまごの形をしたもの、パイナップルのようなもの、クロワッサンのようなものまで。
見開きページで描かれた星に咲く実の数々。
人の成長もきっと同じようなイメージなのではないでしょうか。
一つの芽が実になると、どんどん新しい実ができてきて、
いつの間にか自分でできることが増えていく。
誰しもそんな瞬間を味わったことがあるかと思います。
その瞬間に出会ったとき、きっと今までの行動が間違っていなかったのだと確信を持って答えられるようになっているはずです。

実ができることで、さらに嬉しいことが・・・。
実を求めて、動物たちがおじいさんの元を訪れるようになったのです。
色々な実ができることで、色々な新しい出会いがやってきます。
そして、新しい出会いは世界をどんどん広げていってくれます。

実を食べた動物たちが今度は自分たちの手で種を育ててみる。
その流れが広がることで、世界もまた広がりを見せます。
一つの種が大きな世界をおじいさんに見せてくれたのです。

自分のできることが増え、新しい出会いを重ねていくことで、
自分自身の世界はいかようにも広がっていきます。
そのきっかけを与えてくれたのが一つの種であり、種を育てるために積み重ねた日々なのだと思います。
この絵本は、大人になった今読みたい1冊でもあります。

最後におじいさんはなかなか芽の出ない種の元へ向かいます。
「まだかな まだかな」
その種からはどんな実がうまれるのでしょうか。
そして、うまれた実はどんな出会いをもたらしてくれるのでしょうか。

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