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絵本『うまれもった ひかり』のテーマ

絵本『うまれもった ひかり』は、ランタンと少年とおじいさんを巡る物語なのですが、たまに読者から「どういうメッセージがあるんですか?」と聞かれることがあります。


読んだ人の多くは「生まれたままの光でいいんだ」、「生まれ持った個性を大切にしよう」、「思いやりの心が大切だ」などのメッセージがあると解釈する人が多いようです。

作品の解釈は人それぞれでいいと思っていて、読者からの声はぼくにとっては新鮮でとても面白く、絵本を客観的に見るような感覚になります。


さて、読者の解釈は色々とありますが、ぼく自身が作品に込めたメッセージはなんなのか、実は「メッセージはこれです」と言えたものはなく、どちらかと言うと、ある“テーマ”を軸に作品をつくり、自分自身もメッセージを“探っていた”というのが正しい言い方です。


“人はなぜ愛されないといけないのか”


これが、ぼくが作品の中心軸に置いたテーマです。人が愛される必要がある理由を、作品づくりを通して作者自身が模索していた、ということです。


まず、どうしてこのテーマにしたのかと言うと、それは「どうしてここまで愛してくれたんだろう?」と思える出会いがぼくの実体験にあり、ある時ふと「どうしてなんだろう?」と疑問に思ったからです(文章がアホっぽくてすみません...)。


今思えばとても贅沢な疑問であり、テーマであったなと思いますが、自分の経験をそのまま描くというよりかは、自分の経験を客観的に見てメッセージにたどり着きたい、知りたいとの想いで絵本をつくっていました。


ぼくが絵本をつくりながら行き着いた答えは、とてもシンプルですが、“愛することの必要性を知るからなんだ”ということです。


絵本に出てくるランタンは自分の光が嫌いで、そんなランタンを見ておじいさんは想いを巡らせランタンの生まれもった光を愛そうとします。そんなおじいさんの愛情に気づいたランタンは、自分の光を愛するということではなく、ランタンの光を愛してくれたおじいさんの“心”を大切にしようと決心します。この“おじいさんの心”を愛することでそこに“絆”が生まれ、赤い光はその絆の“象徴”になるのです。


このランタンの視点の変化、“自分の光”ではなく“おじいさんの愛ある心”に視点が変わったことがとても重要で、自分の光を大切にするというのは、どちらかと言うと視点が変わったことで生まれた“副産物的な変化”でしかありません。1番重要なのは、“おじいさんの心を愛すると決めた”という変化です。そして、この変化によってランタンに生まれた最も大切なものは、おじいさんの心との“絆”です。


おじいさんの“愛情”がなければ、ランタンの視点が変わることはなかったと思います。ぼくは作品をつくりながら「そっか、だから人は愛される必要があるのか」と思いました。


視点を自分の心ではなく、相手の心に変えるというのは、1つの愛の形ではないでしょうか?そして、相手の心を愛することで感じられる“絆”を実感することで、今度は自分が誰かを愛そうと思えるのだと、作品づくりを通してぼく自身が気づかされていました。


長々と書いてしまいましたが、「自分の生まれもった光を大切にしよう」というのがメッセージではなく、「愛してくれた人の心を愛する」というのが、この絵本をつくる過程で辿りいついたメッセージです。

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