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第19回絵本まるごと研究会

2021年4月17日(土)、19回目の絵本まるごと研究会を開催しました。
今回のテーマは、「五感がはたらく瞬間」。参加者自身が刺激された経験、または読み聞かせでの経験を紹介し、絵本で触発されるさまざまな感覚を語り合いました。

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『おやすみなさい』
(山村学園短期大学 2020年 非売品)
しのつかすみこ さく・え

もりによるがやってきました/もりのなかまたちはどうしているでしょう、という文から始まり、森に棲んでいる野ねずみの赤ちゃんが「ふぁー」と眠たそうにあくびをしている絵、次のページにはお母さん野ねずみの隣で安心しきって眠る赤ちゃんの絵、引き続きりす、うさぎ、いのしし、しか、くま、其々の赤ちゃんが登場します。2019年に短期大学の学習ゼミで「ファーストブック」について学んだ成果を基に作成された、聞き手も読み手も五感が呼び覚まされ、且つ眠くなる!絵本です。(保育者養成校 教員 相沢さん)
※本書は大学近隣の図書館に寄贈しております。

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『ええところ』
(学研プラス 2012年)
作:くすのきしげのり 絵:ふるしょうようこ

「手があったかいのがわたしのええところ…」何でもないことのようにみえて、とっても大事な言葉でした。あったかーい。あくしゅしてもろてもええ?という言葉をきくと、触れてもないのに、読んでいるほうも手がじんわり温かくなる。阿波弁のほんわかした言い回しで読むと、より一層あったかい。いいところを一生懸命考えて見つけてくれたお友だちの言葉で、こちらの心も温かくなる。優しさのバトンを次々にわたせそうな、みんなでほっこりとできる絵本です。(大学専門研究員・嘱託講師 森さん)

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『ぼくを探しに』
(講談社 1979年)
著:S・シルヴァスタイン 訳:倉橋 由美子

何かが足りない、それを探しにいくのです。自分探しの旅の始まりです。焦らずのんびりあなたらしく・・・白地に黒い線だけで描かれたシンプルな絵と添えられたごく短い言葉がぐいぐい心に迫ってきます。節目節目に読みかえしたい一冊です。  (大学教員 德永さん)

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『よるのおと』
(偕成社 2017年)
作:たむらしげる

 4歳の女の子が夜の散歩で池のはたの小道を歩きながら「夜の池は静まりかえっているねえ」とつぶやきました。4歳にしては大人びた表現です。実は、彼女は母親と数日前に『よるのおと』を読んでいました。テキストがほとんどないこの絵本を、ふたりで丁寧にいろんな話をしながら読んだそうです。母親がその時につぶやいた「夜の池って静まりかえってるね」ということばを、彼女は絵本を見ながら感じた夜の暗さや静けさ、湿気感などとともに憶えていて、実際にその状況に似た感覚を体感したとき「静まりかえる」はこれだ!と自分のことばとしてアウトプットしたのです。
 実体験の少ない幼い子どもは絵本での疑似体験の中で感じたものを、その後の実体験で自分の感覚として育て、固めていくのでしょう。絵本には「感覚を触発する力」が確かにあるのだと実感させられます。(子育て支援室スタッフ 石坂さん)

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『しあわせになあれ』
(瑞雲舎 2018年)
詩:弓削田健介 絵:松成真理子

合唱曲の作詞作曲を手掛けている弓削田健介さんの詩に松成真理子さんが絵を描かれた絵本です。弓削田さんは「名前は生まれた時に一番最初に受け取る贈り物。名前には幸せになってほしいという願いが込められている。しかし学校では、名前によってイジメが起こっているという現実に心を痛め、生まれてきた全ての人に幸せになってほしいという願いからこの詩がうまれたそうです。この絵本の後ろに楽譜と「名前ワーク」があるのでぜひそれも
実際にやってみてください。自分の体の中から誰かが名前を呼んでくれる声が聴こえてくれかもしれません。絵本は、人の細胞の中に沁み込んでいるものや心の引き出しから色々な記憶や感覚を呼び覚ましてくれる力があると私は思います。(カルチャースクール講師 森さん)

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『あおのじかん』
(岩波書店 2016年)
文・絵:イザベル・シムレール  訳:石津 ちひろ

「五感がはたらく瞬間」と聞いて、私には「記憶」というキーワードが浮かびました。本書には、私が出会ったことのない空間や動植物たちが登場します。ところが読み進めていくと、いつの間にか絵と文を頼りに、耳では鳥の声、鼻では森の香りを手繰り始め、とても不思議な感覚に襲われるのです。そして遠景の画面では、暮れ行く森の空気感を感じ取ろうとし、ズームアップしたように描かれた画面では、自らが動植物を覗き込んでいるような錯覚まで覚え始めます。細線を重ねた鳥の絵からは、手に包み込んだ時の柔らかな感触とぬくもりを思い出し、ドキッとすることも。意識が研ぎ澄まされ、絵本の世界に集中できる一冊です。(印刷会社 矢阪)

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『ガラスのなかのくじら』
(あすなろ書房 2018年)
作:トロイ・ハウエル&リチャード・ジョーンズ  訳:椎名かおる

 くじらのウェンズデーが暮らしているのは、街の中央になる大きな水槽の中。そこは、とても住み心地のいい場所でした。そんなある日、ウェンズデーは遠くにあおいものをみつけます。しずかで、おだやかで、すてきなブルー。そのブルーに心をときめかせるウェンズデーに、一人の女の子が、くじらの本当のおうちはうみだと教えてくれます。混乱するウェンズデーがたどり着いたその場所は?憧れのブルーの正体は?
 居心地のいい場所から次のステップへと歩みを進めようとしている人におすすめの1冊です。(学校司書 増田さん)

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絵本専門士による絵本まるごと研究会は、絵本・応援プロジェクトに参加しています。

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