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第27回絵本まるごと研究会

はじめに

令和4年6月19日(日)にオンラインで開催された第27回絵本専門士による「絵本まるごと研究会」の報告をさせていただきます。

話題提供させていただきました、第5期絵本専門士の德永加代です。私は、現在、帝塚山大学で教員をしております。中学校(国語)・小学校での経験から、豊かな言葉を育む絵本の力は大きいと感じています。学生と一緒にボランティア活動を通して、絵本の学習材としての可能性について研究しています。

今回は「言語感覚を豊かにする絵本の可能性」について、報告させていただきます。

目次 1, 幼児教育における絵本の活用
2.「ことばの絵本」 ことばや文字を主題とした絵本
3.「ことばの絵本」を活用した絵本作り
4.「読書へのアニマシオン」とは

1. 幼児教育における絵本の活用

「幼稚園教育要領」(平成29年告示)では、「言葉」の領域における「ねらい」について、次のように示されている。
  
言葉
経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う。
1 ねらい
(1)自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
(2)人の言葉や話しなどをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話しし、伝え合う喜びを味わう。
(3)日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語に親しみ、言葉に対する感覚を豊かにし、先生や友達と心を通わせる。

内容の取扱いでは「(3)絵本や物語などで、その内容と自分の経験を結び付けたり、想像を巡らしたりするなど、楽しみを十分に味わうことによって、次第に豊かなイメージをもち、言葉に対する感覚が養われるようにする。」「(4) 幼児が生活の中で、言葉の響きやリズム、新しい言葉や表現などに触れ、これらを使う楽しさを味わえるようにすること。その際、絵本や物語に親しんだり、言葉遊びなどをしたりすることを通して、言葉が豊かになるようにすること。」とある。

幼児教育において日常的に行われている絵本の読み聞かせは、聞く力やイメージする力の促進をはじめとして様々な言葉の発達を促す。幼児期における絵本との出会いは、絵本とともに関わってくれた大人との心のふれ合いを通して言葉の世界を楽しみ創造力を膨らませ、子どもの情操、探究心、考える力、生きる力を育てていく。
心地よい言葉のリズムの繰り返しと鮮やかで大胆な絵と色を楽しむ絵本は、言葉に関する感覚を豊かにするうえで、非常に大きな役割を果たしている。言葉の面白さや美しい日本語を伝え、子どもの言葉と心を育むために欠かせない。

2.「ことばの絵本」 ことばや文字を主題とした絵本

絵本には多くの種類がある。これらの特徴を理解して、学習材として活用していきたい。語彙指導に用いられるであろう言葉や文字を主題とした「ことばの絵本」について『絵本の事典』(朝倉書店 2011年)では、より細かに分類している。それらをまとめたものが次の表である。
分類

このように「ことばの絵本」は、言葉そのものを題材としてとりあげたもの、言葉のおもしろさに着目したもの、音声言語による言語文化を絵本化したものなど、言葉や文字が特に重要な意味をもつ。したがって、読み聞かせや声に出して読むことなどを通して、言葉の響きやリズムを楽しみ、言葉の豊かさに気づかせる教材として活用できるだろう。

3.「ことばの絵本」を活用した絵本作り

〔活動名〕自分の名前で食べ物絵本を作ろう
〔ねらい〕言葉の響きやリズムを楽しみながら、自分の名前で絵本を作る。
〔対象〕小学校1年生から3年生(ダヴィンチマスターズのイベント参加者60名)
〔学習材〕
○絵本『あっちゃん あがつく たべものあいうえお』
  (原案:みねよう 絵・作:さいとうしのぶ リーブル 2003年)
○『たべものかるた あっちゃんあがつく』
(原案: みね よう作: さいとう しのぶ  リーブル 2007年)
○巻物絵本『しりとりしましょ! たべものあいうえお』
(さいとうしのぶ作 リーブル 2018年)
〔活動の流れ〕90分
①巻物絵本『しりとりしましょたべものあいうえお!』を使って、しりとりをする。
②『あっちゃん あがつく たべものあいうえお』の「あ」から「お」の読み合いを楽しみ、自分の名前で同じように絵本を作ることを理解する。
③6人グループになって、自分の名前の絵本を個人で作成する。
  学生がボランティアとして参加し、活動の補助をした。
④作成した絵本をグループにおいて読み合う。
⑤全体で何人か作成した絵本を発表し、活動を振り返る。

【小学生3年生の作品例】

4.「読書へのアニマシオン」とは

・「読書へのアニマシオン」は,スペインのモン セラット・サルトが提唱した読書をゲーム感覚で 楽しみながら,深く読み取る活動。
・ 日本には 1997 年に刊行された『読書で遊ぼうア ニマシオン 本が大好きになる 25 のゲーム』に より紹介された。
・モンセラット・サルトは自身 の著書『読書へのアニマシオン―75 の作戦―』 において「子ども自
身は,読むための潜在能力を 秘めています」と述べ,作戦のねらいについて 「理解への道筋をつけ,
読書の喜びや意欲をよび さましていき,最終的に子どもが読み手としての 自立を遂げ,他者に依存
しなくなることです」と 解説している。
*「読書への アニマシオン」は,自立した読み手になる基盤づくり
子どもの読む力を引き出す
読書を楽しむことができるようになるためには,まず,そのお話の内容を理解できなければならない。そのうえで,どこがどのように面白かったかなど,伝えることが大切になる。

様々な言葉の絵本の可能性について、みなさまから貴重なご意見をいただきました。ありがとうございました。

絵本専門士による絵本まるごと研究会は、絵本・応援プロジェクトに参加しています。


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