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【歴史その0】歴史学にちょっと興味が湧いてきたら

ジョン・アーノルド(2003)『歴史』新広記訳、岩波書店

 歴史学への格好の入門書。中世フランスで起きた、とある殺人事件を、どのように歴史的に位置づけるかという問いに始まり、歴史叙述の歴史や史料との向き合い方などを具体的に分かりやすく伝えてくれます。また、すべての歴史は暫定的であり、歴史学はさまざまな疑問に基づくプロセスで、何よりも議論であることを教えてくれます。

リン・ハント(2019)『なぜ歴史を学ぶのか』長谷川貴彦訳、岩波書店

 フェイクニュースや歴史修正主義が横行している現代において、歴史学を学ぶ意義を明確に伝える一冊。エリート主義的で西洋中心主義であった歴史学が、どのようにグローバルで開かれた学問に変貌を遂げたかを振り返ります。そして、様々な地球規模の課題を抱えた今、歴史学はどうあるべきかを簡潔に記しています。

ロバート・ダーントン(2007)『猫の大虐殺』海保眞夫・鷲見洋一訳、岩波書店

 歴史学の面白さを最も体現している本。タイトルにびっくりする方もいるかもしれませんが、過去を生きた人々の心の内に迫るという難しい試みを、こんなにも鮮やかに興味深く読ませる本はほかにありません。具体的な史料を用いて、それに問いかけることで、これまでとは歴史が違って見えてきます。

キース・トマス(1993)『宗教と魔術の衰退』荒木正純訳、法政大学出版局

 魔術というそれまで傍流にあったテーマを歴史学の重要な研究対象へと押し上げた傑作。現代ではオカルトとされている占星術やウィッチクラフトが、いかに近世イングランドの社会や宗教と密接に関わっていたかを生き生きと示します。トマスが提示している論点と史料から引用されている文章があまりにも一致しているのが衝撃的です。

リュシアン・フェーブル(1995)『歴史のための闘い』長谷川輝夫訳、平凡社

 20世紀にマルク・ブロックとともにアナール学派を立ち上げたリュシアン・フェーブルによる歴史学への熱い想いを感じられる著作。フェーブルらしい「歴史を研究するためには、決然と過去に背を向け、まず生きなさい」や「歴史家という美しい名に値するのは――実生活に飛び込んでそこに身を浸し、さらに現在の人びとと交われば過去を探究し蘇生させる力が倍加する、と信じかつ実践するひと」といった珠玉の名言に出会えます。


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