コンコンべという、何かこう、不思議な生き物のような
およそ19年前、那覇の国際通りの土産物店で私はこれに出会った。素焼きの置物だった。「コンコンべ」と名前がついていた。
「何だろう、何だろうこいつ、目が合っちゃった」「どうしよう、気になる。絶対役に立たないのに。買っても絶対何の役にも立たない」と慌てふためく私の横で、友人Tは静かに「そういうのはね、買わないと後悔するよ。買いなよ」と言った。
以来、19年、私と共に何度か転居しながら、ずっと棚に飾られているコンコンべ。何の役にも立っていないけどこいつを手放すことは考えられない。
こいつが一体何なのか未だによく分からない。振るとかすかに音がする。置物というより土鈴なのか。
この口が……
目は虚空。「目が合った」はずだったけど、実際目は合っていなかったようだ。
2011年の東日本大震災の時、棚から落下したこいつは、しかし割れることはなかった。いかにも割れそうな見た目なのに。(白い汚れは落下した時についたもの)
たまに、こいつが割れてしまったら、という想像をする。陶器の修復方法はよく分からない。接着剤でくっつくだろうか。金継ぎというのは私にもできるだろうか。もし直らなかったら母を亡くしたエルリック兄弟みたいに危険な錬金術に手を出してしまうかもしれない。絶対直したい。
割れてないのにそんなことを考える。
これからも、かわいいけどちょっと怖い、コンコンベと共に生きていく。
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