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DAY16#31/不景気という言葉に憧れて

日頃、なにかよい言葉に出会ったとき「バンド名にしよう」とか「会社名にしよう」とか「ラジオ番組名にしたいな」「レストランの名前にいいな」というふうに、なにか団体名やプロジェクト名に使えないかと思ってメモをしている。

私は高校生の頃から小西康陽、信藤三雄、川勝昌幸がとても好きで、彼らに憧れて田舎から渋谷のデザイン学校に上京したものだ。
私は、彼らがやってた事をずっと「日本人のヒップホップ」だと思っている。サンプリングと編集で既存の文化的遺産の価値を再発見・再構築した。私が好きだったのは、ビジュアルやサウンドももちろんあるが、やはり彼らが使った「言葉」が好きだった。

一例として、ピチカートファイブの楽曲に「不景気」というのがある。私はこのタイトルがとても好きで、歌詞も好きだ。

ほんとに近頃不景気
ほんとに世界は不景気
気の利いた男の子
ここしばらく出会わない

というような歌詞だ。

ラブソングやポップスのシーンに「不景気」という言葉は少し場違いな気がする。例えば「消費税」とか「転職」とか、そういう類の言葉だ。
極めて情緒に欠けた色気のないフレーズ。
それなのに、この「不景気」がとてもオシャレに感じるのはどんな魔法なのだろうか。

あと、好きなのは、小西康陽プロデュースの夏木マリのベスト盤で「印象派コレクション」というアルバムがある。このタイトルも素晴らしい。
百貨店の催事とかでやってる絵画の展示会のような野暮ったい言葉。時代遅れの成金っぽい言葉。それを、その時代が過ぎ去った後に持ってくる感覚、「今この言葉がいい」という選ぶセンスが素晴らしくて膝が震える。

レコードやスニーカーや腕時計を集めるのはお金が掛かるけど、言葉を集めるのはタダだ。いつか、何かで使いたいと思っているが、使わずに死んだら葬式でスライドショーにして欲しい。

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