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歌詞探訪:太田裕美『木綿のハンカチーフ』

この歌を好きな人は多いですね。特に男性には好まれているようです。私は太田裕美の歌ではもう少し前に出た『雨だれ』とか『たんぽぽ』のほうが好きなんですが、世間一般には太田裕美と言ったらこの歌、そして松本・筒美
コンビの代表曲にもあげっれていますね。

昔からデュエットでは愛し合う男女のそれぞれの思いを交互に歌う手法はありましたが、一人の歌手が男女双方の思いを歌うのは珍しいことだったんだと思います。太田裕美は後に『さらばシベリア鉄道』(松本隆作詞・大瀧詠一作曲)でも同じ手法の歌を歌っています。

本人が歌っている動画もありましたが、歌詞が全部網羅されていたので上のものを選びました。この動画、なかなかうまく編集されていると思います。

この歌が何で人気なのかと言えば、おそらく主人公の彼女が素朴でしおらしく、いじらしい。指輪よりもあなたのキスのほうがいい…とか、スーツ着た彼の写真を褒めなかったけど、体に気をつけてね、なんてさり気なく思いやっている。しかも太田裕美のあの可愛らしい声が余計にいじらしさを演出している。

一方で彼は都会に染まって彼女を裏切った悪い人…のようなイメージで見られているけど、果たしてそうだろうか?指輪を贈るのは特別な存在だと思う証であるし、彼女がそれを着けて喜んでくれれば彼も嬉しいだろう。これは想像の範疇ではあるけれど、もしも彼女が彼を追いかけて都会にやって来たのなら、きっと受け入れたんではないかと思う。

都会で刺激を受けて暮らしたい人と、
故郷に留まって静かに暮らしたい人。
変わりたい人と、
変わりたくない人。
どちらかが折れなければ一緒になるのは難しい。
この彼女はおとなしいようで、自分の意思は頑なに貫いている。
そんなわけで、このカップルが別れるのはいわば必然だろう。

もう一つ、ちょっと意地悪な言い方をするならば、この彼女…結構あざとい。先述の「からだに気をつけてね」などもそうだが、男心をくすぐるようなニクイことばを発している。極めつけはこれ↓

あなた 最後のわがまま 贈り物をねだるわ
ねえ 涙拭く木綿のハンカチーフください 
ハンカチーフください

木綿のハンカチーフ

ハンカチをねだるくらい、わがままとは言えないのに、敢えてわがままと言うところ、シルクのハンカチじゃなくて木綿のハンカチと素朴さアピールするところ、敢えて涙拭くと哀しさアピールするところ…すべてにおいて計算してるなぁ。

よく考えたら男性の松本隆さんだから男心をくすぐるこんなあざとい、
もとい、健気な女心を書けたのかもしれない。現実の女だったらいかがなものだろうか?

私の分身のるねがこの歌を元にした連作短歌を書きました。よろしかったらそちらもご覧ください。



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