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短歌を学ぶ

今年の大河は紫式部…ということで、現在一人紫式部祭り決行中。
紫式部関連の本を読んでいる最中ですが、本のレビューは一通り読み終わってから書くことにします。
シキブ関連の本を漁っているうち、彼女の和歌のセンスがいいな…と思い、ちょっと寄り道して短歌関連の本を読んで勉強してみました。

『今はじめる人のための短歌入門』岡井隆

歌人でカルチャースクールなどでも短歌を教えてる先生が書いた本。短歌にはどういうものがあるか?(自然詠、人事詠、社会詠)短歌はどうあるべきか?などが書かれている。

この先生は斎藤茂吉が好きみたいで、例題に茂吉の歌がよく上がっている。実は私、茂吉の歌ってあまり好きになれない。茂吉以外にもいろんな方の歌が載っていたが、感じ入るものはなかった。やはりお手本が素敵だと思えないと興味がわかない。

短歌は説明してはいけない。→これはわかるんだけど、
物語を作ってはいけない。→これ、自分やってました。
なんでも短歌はその時の感情を詠むべきなんだそうだ。

あと、短歌をやる女性が増えているのに家事や仕事を詠む女性が少ないのが残念だ、と書かれていた。先生は残念かもしれないけど、女目線で見るとわかる気がする。女の人は仕事とか家事とか現実的なものに夢を感じづらいのかもしれない。

『ぼくの短歌ノート』穂村弘

『ダ・ヴィンチ』の短歌くださいというコーナーを担当している穂村弘さんの本。実は私、何度かこのコーナーに投書してるんですが…一度も採用されてません(笑)穂村さんご自身の歌を解説しているのかと思ったら、明治の頃から現在に至るまでの歌人の歌がお手本として列記されている。中には素人さんの歌もあった。

その歌のどこが優れているのかを穂村さんが解説されていて勉強になった。ただ、現代の短歌って生活感が浮き彫りにされたり、生々しかったりで古いものと比べると情緒がないような気がする。

そんな中で意外とお仕事短歌が面白かった。それから、やっぱり恋歌はいいな…なんて思っていたら、穂村さん曰く、短歌は俳句や現代詩と比べると韻律から感情的陶酔的になりやすく、ハイテンションになりやすいんだそうだ。それゆえ若さ、恋愛、死といったテーマが自ずと増えるらしい。

私は子どもの頃から俳句よりも短歌派で、短歌特有のリズムが耳に心地よくて好きだった。俳句はなんだかつまらない…と思っていたけど、つまりは自己陶酔型なのかもしれない。俳句は写真のよう叙事的、短歌は音楽のように叙情的で心の動きが感じられる。

話はそれるけど、穂村弘さんって40代くらい、いっても50代かな?なんてなんとなく思っていたけど、私と同世代のアラ環と知ってちょっと意外だった。

『短歌のルール』渡部泰明(編)

こちらは大学の国文学の先生たちが高校の古文の教科書に載っているような有名な歌を解説している。

ルールというよりもテクニックと言ったほうがピンとくるような気がする。枕詞などは確かにルールだけど、この歌にはこのようなテクニックが使われている…例えば業平の有名なこの歌

らごろもつつなれにしましあらばるばるきぬるびにしぞおもふ

古今集

初句から五句までの頭文字をひろうと「かきつばた」になるという折句のテクニック。それからやはり教科書に載っていた源宗干のこの歌

山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれると思へば

古今集

こちらは「かれぬ」に人目も離れぬと草も枯れぬという二つの意味がある掛詞のテクニック。そういったテクニックがわかると、歌に込められた裏側の意味も感じ取れて面白い。もう一つ、これも有名な持統天皇の歌

春過ぎて夏来にけらししろたへの衣ほすてふ天の香久山

新古今集

これは枕詞の例題で、しろたへの に続くのは、衣、袖、雪、雲などがある。それだけなら普通なのだが衣を詠んだものは意外と少なく多くは袖で、しろたへの袖→涙で袖を濡らす意味から恋歌に使われることが多い。

それから、この歌は夏を歌ったものだが、五行思想によると白は秋を表す。それから香久山は平城京から見て東に位置し、東は春を表す。そういうわけでこの歌はとてもイレギュラーなんだそうだ。持統天皇ってとてもぶっ飛んでる人だったんじゃないかな。

持統天皇のぶっ飛んだ一首が一番印象に残ったけど、吉田兼好のトリックいっぱいで一見裏の意味が読めない歌なども興味深かった。こういったテクニック(ルール)を知っていると作るまでいかなくても読むのが楽しくなりそうだ。

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