中国メーカーが日本メーカーを買収する理由は、ブランド力だけにあらず

中国メーカーが日本メーカーを買収する機会が増えています。

ホンハイのシャープ買収、美的の東芝白物家電事業買収、ハイアールの三洋電機(冷蔵庫・洗濯機部門)買収など。

ハイエンドの日本ブランド(SHARP、TOSHIBA、SANYO)を有効活用したい(これまで低価格のローエンド商品しか販売していなかった)中国メーカーが、円安で(人民元ベースで)割安になっている日系メーカー(またはその事業の一部)を買収するケースが増えているというのは、周知の事実だと思います。

実は、中国メーカーが日本メーカーを買収する理由は、もう1つあります。それは、「技術力の迅速な底上げ」です。

これまで、先進国ブランドの類似商品を、大量生産して大量に中国国内で販売することで成長してきた中国メーカーは、中国国内市場が成熟するに伴い、低価格商品を大量に作るだけではビジネスが成り立たなくなってきています。

そこで目をつけたのが「技術力」です。新しい付加価値を自ら創り出すことができるメーカーならではの技術力です。

10年以上も前からそれに気づいていた中国メーカーは、まずはじめに自力で技術力を付けようと頑張ってきたのですが中々身に付きません。それならばと、日系企業、欧米企業と合弁を設立して技術を盗もうとしたのですが、これもうまくいきません。相手の外資企業は虎の子の技術をコピーされるのを怖がって合弁企業には提供してもらえないからです。

完成品メーカーが技術を提供してくれないのであれば、部品メーカーと提携しよういうことで、製品単位ではなくコンポーネント単位でハイエンドな部品を日本や欧米から購入して完成品を作ろうと考えましたが、ハイエンド部品は高過ぎで中国では売れません。

諦めの悪い中国メーカーは、今度は日本人技術者を、高年棒を提示して人ベースで引き抜くことを考えます。しかしながら、会社組織ではなく個人単位で確固たるノウハウを持っていて、しかも日本とは全く違う中国ローカル企業の環境で短期間に結果を出せる日本人技術者など中々いるものではなく、これはこれでかなり時間がかかりそうだと分かってきました。

そこで最終的に行き着いたのが、「日系大手企業の重荷になっている事業ごとリーゾナブルな価格で勝ってしまおう」と考えての動きが、昨今の中国メーカーによる日系メーカー買収なのです。

つまり「ノウハウを持っている技術者集団」と世界的に有名なブランドが手に入れば、極端に言えばそれ以外はどうでもよいのです。そう考えると、買収される日系企業の日本人社員からすると運が悪いと思うかもしれませんが、そうとも言えないと思うのです。

中国企業は、(10年、20年単位の年功序列の日系企業とは異なり)よくも悪くも成果ベースで評価されるので、若くて、優秀で、やる気がある人にとっては機会を多くもらえることになるからです。とはいっても、この中国流と日本流の違いに最初から違和感なく溶け込める優秀な日本人は少ないと思います。

そんなところにこそ、弊社(私)のチャンスがあると思うんですよね。はい、頑張ります。

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