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スキンヘッドのすゝめ

髪型にはその人の個性や生き方が出る。

長髪、短髪、カラー、パーマ、etc。美容院なんかにヘアカットの一例をまとめた本なんかが置いてあるがそのパターンは無限と言っていい。その人の頭の形状や顔のラインによって似合ったり似合わなかったり。職種によっては髪型を決められていたり。人は試行錯誤してコレだという髪型を模索していく。

僕も若いころはそれなりに洒落っ気を出して自分の中で一番似合う髪型を模索していた。しかし20代前半、悲劇が襲う。

若ハゲだ。

若くして頭髪が薄くなってしまったのだ。いや、正確には薄くなりつつあったというべきか。額の生え際が日に日に後退していってるのだ。

焦った。そりゃもう焦った。今でこそルッキズムだなんだと言って人の外見をとやかく言わない風潮になりつつあるが、未だにハゲへの風当たりは厳しい。不可抗力によるものだというのになぜここまで笑い者にされるのか解さない。

ある程度まで歳をとってからハゲる分にはまだいい。20代なんてまだまだ男盛り。異性にキャーキャー言われたくて仕方ないお年頃。それなのにこの仕打ちはひどすぎる。神も仏もありゃしない。

なんとか抵抗しようと育毛剤やら頭皮マッサージやらあらゆる手段を使ってみたが目に見えるような効果はない。そのうち「これやってて意味あるのか?」と疑問がわいた。毎月の育毛剤代だって馬鹿にならない。こんな効果があるのかどうかも分からんシロモノにこれから先何年ものあいだ高い金を払い続けていく意味は果たしてあるのかと。

なんかもう面倒くさくなってしまった。気づいた時には家電量販店でバリカンを買っていた。

髪は長い友というが、髪の方から離れていこうというのなら、逆にこっちから三行半を叩きつけてやる。

バリカンで髪を根元から刈り落とす。中学生以来の坊主頭だ。見慣れない坊主頭の自分を鏡で見てなんだか可笑しくなってしまう。

しかしこれでいい。いつまでも高い金を注ぎ込んでウジウジ悩んでいるくらいならいっそこんなもの無くなってしまえばいい。慣れない手つきで髭剃り用のカミソリで頭を剃り込んでいく。そうして2016年の秋、僕はスキンヘッドデビューした。

もともと目つきは悪い方だがスキンヘッドによってよりイカつい見た目になっている。そしてそれがでかい図体と合わさることで裏声で喋らないクロちゃんが完成した。Vシネマに出てくるチンピラ役と遜色ない見た目だ。

頭の形状的にスキンヘッドが似合っていたのが功を奏して、新しい自分を受け入れるのにそう時間はかからなかった。むしろ自分にとってスキンヘッドはメリットしかなかった。

まずシャンプー代がかからない。顔と一緒に頭を石鹸でガーッと洗って終わりだ。ドライヤーもいらない。タオルでキュキュッと一拭き。無論トリートメントも必要ない。

寝癖もつかない。朝の身支度が一気に短くなった。

髪型のくずれも気にならない。どんな強風が吹こうとも、どんな大雨が降ろうともびくともしない。

散髪代もかからない。年間数万円の出費がゼロになる。それに伴い整髪料やその類の道具も必要ない。ワックスも櫛もアイロンも全部いらない。

強いていうならカミソリ代がかかるくらいのものだろうか。それもせいぜい数千円で事足りる。とにかくコスパとタイパ、両方が抜群によろしい。QOL爆上がりなのだ。

むしろスキンヘッドになることで吹っ切れた。最初のうちは会う人みんなから「どうした?」「何があった?」と聞かれたが、しばらくしたら見慣れたのか誰も何も言わなくなった。

もしこの記事を読んでいるハゲに悩む人がいるなら声を大にして言いたい。思い切ってスキンヘッドにしてみなさいと。世間の目が気になる?気にしなさんな。別にやましいことがあるわけでなし。むしろ堂々としてる方が勇ましくてカッコいいくらいだ。

一皮むけた自分がそこにいる。それにはほんの少しの勇気があればいい。飛び込んでこい、スキンヘッドの世界へ。

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