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クソニンジン


糞人参 (クソニンジン)


中国を原産とするキク目、キク科、ヨモギ属
の一年生草本となる。


残念なその和名は、その葉が放つ強い悪臭と
その葉が人参のそれに似ることに由来する。



それではこの植物は単に臭いだけの役立たず
な植物かと言うとそうではない。


酷い名をつけられながらもアルテミンニンと
呼ばれる物質がこの植物から生離、抽出され
これはマラリアの効果的な治療法の発見へと
繋がるものと分かった。


マラリアへの効能を発見した功績を認められ
2015年10月、中国の学者である屠呦呦
(ト ヨウヨウ)氏は、ノーベル生理学医学賞
を授与される事となったのである。


多くの国が参戦し争いあった第二次世界大戦
であるが、戦争での戦死者の数は銃撃や砲弾
などよりも多くの命を奪ったのがマラリアで
ある。第二次世界大戦の全戦死者の61%を
超えた数がマラリア感染によるものとされる。


マラリア感染による死のプロセスは、どんな
ものだったのかは、以下の通りである。


①マラリアは、ハマダラカによって媒介され
これが感染経路の始まりとなる。マラリアに
感染した蚊が人を刺す事によりマラリア原虫
が人の体内へと侵入する。


②マラリア原虫は、人の肝臓の中で増殖して
その数を増やしていく。


③増殖したマラリア原虫は、血液中へと移動
し、ここで赤血球を次々と感染させていく。


④ここで初めて病状が表面化する。、感染を
した赤血球が次々と破壊され、熱発作や悪寒
や発汗などの症状が現れる様になる。


⑤病状が進行し、脳症や急性腎不全、黄疸、
出血傾向など致命的な症状を引き起こす。


⑥治療を施さない限りにおいて、死に至る。


これらマラリアに対し、クソニンジンの中の
葉、茎、花などの地上部に含まれている成分
アルテミンニンは、解熱、止血などの効能を
もつものとされる。


残念ながら、マラリアという病気の恐ろしさ
は今現在も変わらず続いている。


ここの記事でもうひとつ取り上げておきたい
事がある。屠呦呦(ト ヨウヨウ)氏が獲得を
したノーベル賞であるが、中国のノーベル賞
獲得者は9名と非常に少ない状況にある。


中国の初代国家主席の毛沢東が主導した政治
運動である文化大革命(1966年~1976年)
この政策より、国内の多くの知識人や文化人
が迫害され、公開処刑などがなされた。この
運動の目的は、「資本主義の道を歩む当権派」
を打倒し、社会主義体制を維持と強化する事
にあり、これら知識人は西洋文化などに傾倒
した反乱分子と見做された事による。


若い学生を中心に編成をされた革命的な集団
『紅衛兵』が毛沢東氏の指示の元、旧体制の
象徴とされた人物や文化、習慣、思想を含め
文化財、歴史的遺産、宗教施設なども広範囲
に破壊され、多くの人々が逮捕、拷問、公開
処刑された。教育制度や経済そのものも混乱
し、国家全体が深刻な社会的・経済的な打撃
を受けた事となる。


この文化大革命は、毛沢東の死(1976年)と
四人組(江青、張春橋、姚文元、王洪文)の
逮捕によって終焉を迎えた。鄧小平が政権を
掌握し、改革開放政策を推進する事によって
中国は再び経済成長の道を歩む様になる。


文化大革命は、現代中国の発展に対する多くの
課題と教訓を残し、その影響は依然として社会
の各層に浸透している。中国という国家の組織
の在り方を明確にした毛沢東氏ではあるものの
文化大革命の政策は大失敗であったとの見解も
中国の国内にもある。文化大革命さえなければ
ノーベル賞の数も大きく違っていたのだろう。





和名 糞人参 (クソニンジン)
   細葉人参 (ホソバニンジン)
洋名 スウィート アニー
   (SWEET ANNIE)
   スウィート セージウォート
   (SWEET SAGEWORT)
学名 アルテミシア アヌア
   (ARTEMISIA ANNUA)
生薬 黄花蒿 (オウカコウ)
分類 キク目、キク科、ヨモギ属、
   クソニンジン種
種類 一年生草本
草丈 1m
開花 夏〜秋
花色 黄
花径 2mm
原産 中国
渡来 江戸時代 (薬用目的)
撮影 武田薬品京都薬用植物園

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