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ラフティング 保津川下り


2022年1月3日(月)
保津川の解禁日である。


何の解禁日かと言うと、この保津川という河川は
保津川下り協会以外の船類(カヤックやボート類)は、一切立ち入る事は出来ない河川となっている。


ただし、一年の中で、1月3日の一日だけは一般の
立入許可日となっている。何故ならばその一日だけ
唯一の保津川下り教会の年に一度の休みの日だから
である。ということもあり私の所属するカヌー協会
の方から、同日にEボートでのラフティングに対し参加するかどうか?のオファーが届いたのである。私は二つ返事で参加の回答をした。そこに参加する
メンバーは2、3年の者は私を含め3名、それ以外
のメンバーは20年以上のベテランばかり、毎年の
恒例行事ともなっているので参加を表明したのだ。この時のオファーのEボート。海外でラフティング
と言えば、このエアを入れてパンパンに膨らまして
大人10人で乗るあの頑丈なゴムボートである。


このゴムボートであるEボートは私自身何度も乗り
西中島南方周辺の穏やかな淀川の上では小学生達に
ライフジャケットとヘルメットを装着する事を義務
付けて45分ほどの体験ツアーは何回もやっている
が、保津川で、それも極寒の中の1月3日というのは経験がなく、それだけにやってみたい気持ちから
参加表明したのである。



私は、実際に保津川下りは商業ベースのあの船では
経験はある。それがいかに過酷なものかもまあまあ
知っている。なにしろあの激流である。プロですら
手強いコース、リバーカヤックでの参加オファーであったなら丁重にお断りしていた。





メンバーエントリーされて私がまず最初にした事は
川下りに向けた装備を強化すべくショップへ向かい下記のものを購入したのである。


自転車用だが、頭部を守る為のヘルメット。転倒の
際に激流の岩に頭をぶつけるなどの場面想定のもの


ショートタイプウェットスーツ、極寒条件下の体温保持用に一万円ちょっとで購入。ロングタイプでは装着に時間かかるとの判断で。


マリングローブ、冬用の厚手のもの。


ライフジャケット。一般の救命用ものではなくて
プロユース仕様のもの。仰向けに浮かぶだけで息が
できるもの。


マリンブーツ。エアポートなどに乗り込んだ際に
素材を痛めない硬さで、藻の生えた岩場でも歩ける
マリンスポーツ用のもの。


そして、当日である。連日の雨で保津川は増水して
流れも激しい、波打っている。そして装備しながら
とても寒い。真冬の京都の河川である。寒くない訳がない。辺りは濃霧が発生しており視界が遮られて
遠くまで見渡せない。



保津川下りをする上で、何が一番大切かというと、船の後ろにいる舵取りである。保津川川下り協会の
云うところの船頭さんと云う立場の人は、船の後方
を守り、目の前に出てくる岩と、波の流れを読んで
舵捌きをしているのだ。我々左右に分かれた漕ぎ手
は前に進むだけに漕いでいる位で、時折岩をパドルではねる程度、つまり舵取り命のアクティビティ。


と、濃霧と増水による波の強さを見誤ったせいで
何と大きな岩にボートは乗り上げ、真横から増水
の水がボート内に満注となり、所謂、カヤックや
ボートでの『沈』(沈没の意味)となった。


Eボートから全員が降りて、極寒の保津川の中に
浸かる。上流の雪解け水のそれはどんどん体力を
奪っていき、流れの早い水流に流されない為に岩
とEボートに捕まり流されない様にする。


Eボートをひっくり返せれば水を排出して安全地域
まで捕まったまま流されて、体勢を整えるのが一番
楽で効率の良い対応になるのだが、次々と押し寄せ
ボート内に入ってくる水で何とも埒があかない。
気を抜くと流されそうになるし、私の両足は重ねて
ひとつの岩にかろうじて乗っかっている状況。防寒
のウェットスーツ、グローブ、ブーツ、ヘルメットにライジャケ、どの装備がなくとも命の危険状態に
繋がる。道具の大切さを最も痛感したのである。
その私の足の上に、私をカヌーに誘ってくれた先輩の足が乗っかってて、30分くらい経った時点には
我慢できずにそれを言って、足をずらして貰った。
もう足が痺れて感覚が無くなりかけていたのだ。


我々の横を、ショートノーズのリバーカヤックが
通り、我々を助けようとローブを投げてくれたり
色々と手を尽くしてくれた。1時間も凍てつく程の
水の中にいて、いよいよ身体が冷えてきた。成程、
変わって怖いものなのだなと思った時に、ボートが
岩から離れた。おおっ、歓声が上がる。


救命用のローブが投げられ、それに捕まって泳ぐ。
ウチの協会の大先輩がバカモン、仰向けになって
引っ張られるままにしておかないと水を飲むぞと
言われる。なまじ、連日プールに通っているので
泳いだのだが、言われた通りしこたま水を飲んだ。
仰向けになり力を抜いてやると勝手に引っ張られ
楽に救助された。


全員が無事に岩場に上がり、身体をしばし休める。
もちろん、こんな大自然の河原で火を起こす事など
御法度なので、準備が整い次第、Eボートに乗り、
川を下っていったのである。




渡月橋まで、降りていく頃には霧も晴れて美しい
保津川の姿が見えた。春の様な日差しが何とも目に
眩しく、また、我々の救命に力を貸してくれた方々
に心から感謝した。


水の中に浸かっている時はあまりの寒さに写真を
撮る余裕もなく、また、救命をしてくれようとする
中で写真を撮るのは不謹慎な行為だとの自覚より
一切の写真撮影はしなかった。


最後の一枚の写真が、我々が乗ったEボート、
無事に戻れたのはこの船のおかげと記念撮影を
したのである。


今年2023年は、一年前の岩乗り上げもあり
Eボートラフティングは自粛したのであった。

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