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ネイチャーリポート 若狭



ネイチャーリポート 若狭


普段は近畿圏を中心に河川敷や山野を巡って
ネイチャーリポートをここに掲載しているが
夏の終わり頃に恒例行事として足を運ぶのが
福井県三方郡の山中での植物と虫のリポート
である。


既に何編かは、このリポート内容を記事として
掲載しているもので、実際に山の中へと入って
そこで近畿圏で出会う植物や昆虫などとは違う
それらを撮影し、正体を調査し、記事を載せる
という一連の作業から成り立っている。



そもそもが何んで、この福井県三方郡周辺部の
若狭の山で行うのかと云うと、これは私が現在
も所属する会社を引退されたOBの方々により
昔から恒例となっている会であって、一泊二日
でゴルフ、温泉旅館宿泊、そして海釣公園での
釣りの3点セットを楽しむ内容となっている。


私はゴルフはゲームの世界でしかしない事から
皆んながゴルフを楽しまれている間は虫を専門
とする師匠の後をついて行き、関西エリアでは
見る事のあまり無い、虫のリポートを私がやる
のである。


私の虫の師匠は、虫を捕まえる事では専門家で
あり、その師匠の甲虫リサーチ数は3800種、
標本数も30000点超えなのだという。


普段、私は見知らぬ虫捕獲時はグーグルレンズ
でまずはその正体を調べてみるのだが、候補数
が多すぎたり、国外記事だったりしてその正体
に辿り着けない事が結構、多い。植物なら件数
も多いのだが、虫類のその数はとても少ない。


だから、私は師匠に画像を添付して問い合わせ
師匠の頭の中のデータベースはほぼほぼ正体を
教えてくださるのだ。それは今回の様な実際に
自然の中を探索してる時でも、スラスラとその
名を教えてくださる。そこには寸分の迷いすら
ないのでとても頼もしいのである。それだけに
とどまらず、植物も詳しくてこちらについても
私の質問に正確な回答が出る。こちらも下手を
するとグーグルレンズより正確な回答が一発で
出てくるのである。


この理由は、昆虫をとことん追求する果てには
虫類の食性対象の植物を知る必要がある事から
突き詰められた結果として、尋常ならざる植物
の知識が豊富になったものである。


若狭山中に入りこみ、樹皮を剥き、茸類を砕き、
網を振り回し、次々と虫達を捕獲していく。
その手際の良さたるや私は足元にも及ばない。


私がこの師匠に同行してやる事は何かというと
師匠が捕まえたものの名前の記録と、写真撮影
を私が行いそれを記事として載せると云う図式
でそれは行われる。師匠は写真をあまり、いや
全然撮らない。と言うのは師匠にとって余程に
特別なものの場合には撮影はされるのだがほぼ
撮影はない。なので助手の私はひたすらにその
写真を撮影してはここに記事を載せるもの。


さてさて、フィールドは、福井県三方郡の山中
ゴルフ場の真横にある樹木の伐採用の山であり
年々、道が増えて地形が変化していく。


そんな中を大型捕虫網を片手に担いでズンズン
と山の中を進んでく。この捕虫網はどの程度の
大きさなのかと言うと小学生の子供が体育座り
をした状態ならば、すっぽりとその中に収まる
程の大型のもので、最近になり網目のメッシュ
を細かいものにしたから小さな虫も逃さないの
だよと師匠はよろこんでおられた。私の会社の
OBの大先輩なのであり元々はクリエイターの
ディレクターでNO1の座に君臨されていた方
である。私は販促部門に所属なので、仕事上で
一切の接点がなくこの若狭会という場で初めて
お会いして、師匠の後をヒョコヒョコと付いて
行くのである。


その虫の捕獲方法は基本は三種類である。


1、大型捕虫網での葉上の虫類を捕獲
大型捕虫網で、色んな種類の葉を枝ごと包んで
それを揺すってやると葉の上の虫たちがそこに
捕獲されるというもの。擬態する虫などはその
姿を見付けるのは困難であり、この方法が有効
なのである。


2、倒木している杉の樹皮を捲り虫類を捕獲
普段、我々は表を飛び回ったり、徘徊している
虫を見つけて喜んでいるのであるが、この手法
は普段は姿を見ることのない虫類達と出会える
チャンスがあるもの。ここからはムカデなども
出現するので注意が必要となる。

3、茸類を粉砕してその中に潜む虫類を捕獲
実は茸の中にはそこに潜り込んで生活する虫が
いて、毎日食べ物に取り囲まれて悠々自責なる
環境で、外敵から襲われるリスクも回避してる
虫達が中にいる。こちらも普段は見る事がない
ものに遭遇できるのである。



逆に師匠クラスになると、そこらへんを飛んで
いるチョウやトンボにもう見向きもされない。
もっともこの大型捕虫網は大き過ぎて飛来する
蝶や蜻蛉などの捕獲には全くの不向きである。
捕獲したとしてもそれを手繰り寄せる作業中に
ヒラヒラと逃げてしまう図式が想像できる。



師匠の勇姿、大型捕虫網を担ぎフィールド探索


若狭山中を巡った中で師匠のお共をし出会えた
植物や虫類などの写真を下記に羅列する。


猿梨 (サルナシ)
ミニキウイ、コクワとも呼ばれる美味しい果実。
北海道に住んでた当時は山でこれを採り食べた。




熊野水木 (クマノミズキ)
実のなった、赤い茎が鮮やかな樹木である
三重県熊野市で見つかった事からこの名がつく




赤蜻蛉
ピンが甘い。師匠は蜻蛉はとうに興味対象外。
赤蜻蛉の真っ赤は交尾準備が整ったサインであり
パートナーはこれを見て交尾行為へと進む。


崖崩落
あちこちが崩れている
なので崖上で自然観察するも足元要注意な現場


空木 (ウツギ)
その実が特徴的な為に判別がしやすい樹木


虎杖 (イタドリ)
鎮痛、止血効果を持つ民間医療薬になったもの
アニメキャラの名前の設定もそこがベースである。


瑠璃天道騙 (ルリテントウダマシ)
キノコの中に棲みついてそれを食べる昆虫
こちらは近日公開予定、オスとメスのペア


馬酔木 (アセビ)
馬が酔った様に倒れ死ぬ事からこの名がつく。
哺乳類全般に危険な植物、これはその実の姿。


杉 (スギ)
花粉症の私には特定時期には苦手な樹木となる。
この入り込んだ山は伐採用の杉の木が多く植る。




駒繋 (コマツナギ)
華奢な様でありながら、根茎がとても頑丈な野草
花序が特徴的な植物となる。


松風草 (マツカゼソウ)
美しい葉の姿に、私が惚れている山野草のひとつ。
この時期に白花が咲くのである。


雪隠黄金虫 (センチコガネ)
エジプトではスカラベの名で呼ばれる、神の虫と
されているもの。和名での漢字は雪隠(セッチン)
の文字を使うが、これは便所を表す言葉となる。
確かにこのメタリックは美しいと思うが、私自身
これを直で掴む事はこれまでも、今後も無い。



力芝 (チカラシバ)
山の中だとこんな風にして一塊で撮影できるのが
良いなと思う。淀川河川敷にも生えているが他の
植物と混在して生えているので撮影しずらい。


現ノ証拠 (ゲンノショウコ)
民間医療に使われてきた植物である。名前の由来
は服用した後の即効性の効き目をもつ事による


烏山椒 (カラスザンショウ)
山椒の枝にも棘があるが、こちらは大樹を形成、
その幹にスパイク状に棘の名残が浮かび上がる。


女郎蜘蛛 (ジョロウグモ)
巣を張る蜘蛛の中では比較的、大型のもの。
これはメスであり、オスよりも遥かに大きい。
オスは交尾の際に、メスの巣の中を慎重に動く。
下手な動きをすると捕食される危険があるのだ。



宮城野萩 (ミヤギノハギ)
宮城県に多く自生するという事からこの名がつく。
可愛く健気に咲く桃色に癒されるものである。


森阿亀蟋蟀 (モリオカメコオロギ)
山野に生息するコオロギで、全体は黒っぽい色
となっている。頭部の複眼周辺に白い線が入る。


大葉ノ井許草 (オオバノイノモトソウ)
日本全国の日陰や半日照地帯に生えるシダ類植物。
近畿圏での山野でも普通に見られる膝下程のもの。




裏銀豹紋 (ウラギンヒョウモン)
タテハチョウ科、ドクチョウ亜科、に属するチョウ
ドクチョウ亜科に分類されるがこの幼虫はスミレ
などの葉を食性とする事から毒性は持たないもの。
幼虫時代に有毒植物の葉を食べるものは、それゆえ
鳥などに襲われるリスクを回避する目的がある。



蓍萩 (メドハギ)
マメ科、ハギ属の植物となるが、他のハギ類とは
見た目の印象が全く別種に見えるのがこれとなる。
占い師が使うあの棒としても使われてきたもの。


細穴開象虫 (ホソアナアキゾウムシ)
この撮影の時、このゾウムシは仮死(気絶)状態
目が真っ黒でとても愛嬌がある顔の象虫。




姫蕨 (ヒメワラビ)
これが群生しているエリアだけは色が違う世界。
シダ類など、なかなか特定が難しい。




日本飛七節 (ニホントビナナフシ)
どの様にして自然の中に溶け込むのかについて
イヤな顔も全くせず、協力してくれた虫である。



蝮蛇草 (マムシグサ)
冬を前にしてこの実は鮮やかなオレンジ色になる。
こちらも全草が猛毒の植物となる。



蜘蛛縁亀虫 (クモヘリカメムシ)
とてもスリムで美しい亀虫である。イネ科につく
害虫として駆除対象となっているもの。



紅日傘 (ベニヒガサ)
紅色がとても美しいキノコである。


鵯花 (ヒヨドリバナ)
鵯(ヒヨドリ)が鳴く時期に、白花が咲くからと
この名前がついたものとされるが、実際のところ
ヒヨドリは一年中鳴いてる鳥である。またこれも
こうは見えても毒草なのである。




黄星脚長蜂 (キボシアシナガバチ)
巣が黄色い事からこの名がつくアシナガバチ。
毒性は他のアシナガバチに比べると弱いもの。
その身体もブラウン系のやや温厚なもの。


紅花襤褸菊 (ベニバナボロギク)
アフリカを原産とする植物となる。日本へは戦後
渡来して帰化したもの。種がまるでゴミの如くに
汚らしい姿を見せる事からこの名がついている。



茸鬚長象虫 (キノコヒゲナガゾウムシ)
その名が表す通り、キノコを食べるゾウムシ。
可愛らしい虫であるが、気絶している。


犬榧 (イヌガヤ)
イチイ科、イヌガヤ属の常緑小高木、針葉樹。
縄文時代はこの材を使い弓が作られたとされる。



鋸亀虫 (ノコギリカメムシ)
ギザギザエッジからこの名がつくカメムシである。
ウリ科植物の茎から汁を吸う害虫である。


雛ノ日傘 (ヒナノヒガサ)
ちょこんと小さく生えてたメルヘンチックなキノコ



白梻 (シロダモ)
クスノキ科、シロダモ属の樹木で、寺社仏閣に
植えられるもの。雌木には赤く美しい実がなり
鑑賞価値が高いとされる。


姫杉髪切 (ヒメスギカミキリ)
樹皮を捲ったらば、オスとメスが出てきたもの。
カップルで撮影できてニンマリである。



緋色茸 (ヒイロダケ)
朽木や倒木、切株などに生える赤い半円状の茸。
その内部はコルク質になり、多くの虫が棲む。


山鳥兜 (ヤマトリカブト)
爽やかな紫色が鮮やかなこの植物こそが日本を
代表する猛毒の野草。菊の様な葉に白い特徴的
な模様が入るのと完全開花前の花姿から判別が
容易くできる植物。摘み取るだけで手が痺れて
しまう程の毒で、この葉三枚であの世に行ける。


秋ノ野芥子 (アキノノゲシ)
秋に優しい色の花を咲かせる野芥子である。


紋黄偽歩行虫 (モンキゴミムシダマシ)
漢字でこう書いて、そう読ませるものとなる。
紋黄でもないし、ゴミムシダマシの漢字も本来
『塵芥虫騙』だと思うのであるが…これもキノコ
の中を調べると出てくる虫である。




藤 (フジ)
藤の花が終わるとぶら下がるのがこの鞘となる。
誰もが知るこれを、師匠もネイチャー派なので
持ち帰ってこれを吊るして飾っていたそうだが、
ある日、家の中で凄い破裂音がしたという。
驚きその部屋に行くと床に種が散らばっていた。
藤のこの鞘は乾燥していく内に二枚の鞘が逆方向
へと捩れていき、最後には鞘が思いっきり弾けて
種を遠くへと吹き飛ばす仕組みとなってて物凄い
音を出すのだという。



沢蟹 (サワガニ)
登山道のあまり水のないところにひょっこりと
現れる。可愛くもあり、美味しそうでもあり。




木喰象虫 (キクイゾウムシ)
伐採された端材がそのまま放置されてるのを
樹皮を剥ぐとその下から現れたのがこの虫。


木五倍子 (キブシ)
キブシ科、キブシ属の雌雄異株の常緑低木となる。
この実は昔のお歯黒に使われたもの。


藪肉桂 (ヤブニッケイ)
クスノキ科、クスノキ属の常緑高木。
この葉をとって手で揉んでやるとシナモンの香り
と味がするものである。見つけたらやってみよう。



山萩 (ヤマハギ)
秋の七草に数えられる萩はこの品種を指したもの。
これを眺めたら萩寺に行きたくなったのである。




若狭の自然探索はとても楽しい時間となった。
いつもながら師匠には心から感謝なのである。


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