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黄脚長蜂


和名 黄脚長蜂 (キアシナガバチ)
分類 ハチ目、スズメバチ亜科、アシナガバチ科

植物の撮影中に、キアシナガバチが飛来してきた。


フィールドでよく見かけるこれらのアシナガバチ、
スズメバチの仲間で草地を飛び回るものは全てが
メスである。これら肉食性の武装集団は女王蜂に
仕える女戦士達。


身体の模様も美しくフォルムの素晴らしいハチで
あること。キアシナガバチの名はその脚が黄色い
特徴がその名となっている。


花も咲いていない植物の葉の間を彼女は何をして
いるのかというと獲物探しである。くまなく葉の
裏側を次々と確認して、葉を食べることを専門と
する幼虫や毛虫なら何でもそれらを捕らえるなり
その強靭な顎で獲物達を噛み砕いて、噛み砕いて
肉団子にしてしまう。


これは自身の餌のためではなく、巣に持ち帰って
女王蜂が新たに産んだ自分達の妹達のエサにする
為である。ハニカムスタイルのあの巣の独立した
ポッドには、妹達が待ってましたよ、とばかりに
肉団子をムシャムシャ食べて、早く無力な幼虫と
蛹という単なる弱者から卒業をすることによって
戦闘型フォルムへとトランスフォームを果たす。
彼女らの武器は多少の硬さなら噛み砕いてしまう
強靭な顎と、メスに生まれながらその目的を産卵
でなく殺戮の為の毒注入針へと姿を変えた針。
女王の持つものだけが産卵管となる。


さて、これら女系社会で構成されるハチ軍団には
オスは不要である。コロニーを形成する女王蜂が
力を失い倒れる時に、次の女王が出現の時にだけ
オスは出現する。女王蜂はかつてオスとの交尾で
中に蓄えられた精子を次々と卵子と結合させて
メスだけ産み出すのだが、自身の終わりの時期が
近づくとオスが産まれる。そうすると、女王蜂は
悲惨な事に自分の娘達に噛み殺され悲惨な最後を
迎える。そして次の女王が産まれる。

オスは新たなる女王蜂と結ばれて次の女王君臨と
なる。女王蜂は確かに産み続けている時には周り
の娘達により世話をされるのだが、子作りマシン
としてずっと娘達を産み続ける訳だし、最期には
実子達に殺されるという悲しい生涯となる。本当
の意味で女王という名が相応しいのか疑問に思う。


そして女王蜂以外のメス達はオスの事など眼中に
なく、ただただ妹達のエサ集めの為の殺戮マシン
として生きるだけの日々、これもまたある意味で
可哀想な生き物だと思う。



それがこれら戦闘蜂の生き様だと言えばそれまで
なのであるが、そういった事を知った上で、彼女
らの活躍を私はそっと見守っている。



人間社会でも、アシナガバチやスズメバチなどと
同じ様に女性だけで構成された組織アマゾン軍団、アマゾネスという民族があって、男児が産まれる
と殺すか、奴隷として他の地へと売られるという
民族があった。普段の生活に男なんてものは不要
で女だけで生きられれば良いという狩猟民族。


アマゾン民族は弓を使う。その弓を射るのに乳房
が邪魔という事で、片方の乳房を切除する。
『アマゾン』とは『片乳なし』を意味する言葉で
ある。そして彼女達の領域に脚を踏み入れた男を
もてなし、その男性との間で子作り作業を営んで
次の命を繋ぐ、つまり男性との恋愛感情すらない
ままに生殖行為を行うというものの考え方は蜂の
それと同じ様なものかも知れない。


アシナガバチの女戦士達も、アマゾン属の女性の
戦闘種族達も、恋愛を捨てた生き様という世界は
共通となるがあるという事である。


もう一度、キアシナガバチの写真を見てみよう。
これを読む前と、読んだ後で印象は変わると思う。自分の欲望の為でなく妹達の餌の為、彼女達はただひたすらに一生懸命なのだ。


最後の写真は主人を失った作りかけの巣となる。
彼女達にはスズメバチを含め、アシナガバチも
敵となる。ここの巣は他の襲撃により妹達も命を
奪われた後の光景となる。

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