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イラストレーションと絵本の絵の違い

イラストレーターで絵本作家になりたいという方は多いと思います。雑誌や広告のイラストレーションは、時期がすぎると流れていくけど、絵本はずっと残るから。

絵本作家の風木一人さんも運営されているブログに

イラストレーターとして活躍している人が「絵本を」というとき、そこには「残っていく作品を」という気持ちが含まれていることが多い。

「イラストレーターから絵本作家になる。」|ホテル暴風雨
https://hotel-bfu.com/hotel_dayori/picture-book/2018/01/08/kazeki-31/

と、書かれていて、絵本を作りたいイラストレーターさんは、やっぱり多いのだなぁと、思ったのでした。

でも、絵本の絵ってイラストレーションや絵画とは目的や仕組みが全く違うのです。それを、描き分けられる人とできない人がいて、その違いって何だろう??
今の時点の考えは、絵本をたくさん読んできた量なんじゃないかなぁ…と、うっすら思っています。

といっても、私も絵本に関わるまえは「イラストレーションと絵本の絵ってどう違うの?」って思ってたので、ちょっとまとめてみようと思います。

絵本は、連続した絵で物語をつくりあげる

まず、絵本を開くと絵と文字があります。

文字はお話をつむぎ、それと並行して絵もお話をつむぐ。その距離感が「こうあるべき!」という決まりがないので、ここが絵本を教えるときに難しいポイントの1つなのかもしれません。

ここでいう距離感というのは、「テキストのどのポイントを絵で説明するか」とか「文章にない部分も絵で語るか」といったバランスのこと。これは、絵本の目的(ジャンル)によっても異なってきます。

絵本のジャンルというのは、例えば、『はこちゃん』(講談社)や『ちいさいおねえちゃん』(岩崎書店)といったストーリーがある絵本や、『しょうがっこうがだいすき』(学研プラス)のように説明要素が強いもの、『さわってさわって』(小学館)のような赤ちゃん絵本幼年絵本といわれるストーリー性が薄いものなどです。

それらのジャンルによって、文字と絵の距離感も違ってくるのですが、私たちが観念的に「絵本」と見ているのは、ストーリー絵本のことが多いようなので、次ではこのストーリー絵本に絞って説明していこうと思います。

ストーリー絵本の文章と絵の距離感

「誰か主人公がいてその子の気持ちに感情移入できる」仕組みの絵本を、なんとなくストーリー絵本と言っています。(わかりやすいもので例えると『赤ずきん』や『人魚姫』のようなもの)

私が最初に絵を担当した『はこちゃん』(講談社)は、作者が絵本作家のかんのゆうこさん。絵と文の作家が違う絵本です。

この『はこちゃん』は、12ページから23ページの6見開き、ずっとはこちゃんが公園にいるシーン。しかも、はこちゃんが動かない…(苦悩)

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↑[p12-13]名前をからかわれたはこちゃんが、悲しくてかけだし、場面が学校から公園に移動します。はこちゃんがどういう場所にいるのかわかるよう遠景に。

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↑[p14-15]誰かの声がしてかおを上げるはこちゃん。でもだれも見当たらない…「だれか隠れているのかな?」な感じが出るにはどんな絵にしたらいいか悩みました。周囲の景色が入るような俯瞰の絵に。

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↑[p16-17]「なかないで」と揺れている小さなスミレとお話しするはこちゃん。実際にスミレが喋っているように擬人化するのではなくて、感受性の豊かな子がそう聞こえてひとりごとを言っているようなそんな雰囲気にしたくて、すみれがはこちゃんを見上げているような構図に。

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↑[p18-19]スミレが歌っている歌声を感じながら木々を見上げるはこちゃん。これまではこちゃんのサイズが中くらいの大きさで連続したので、一気に遠景に引く。

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↑[p20-21]木に包まれるような感覚で、「自分の名前の由来に何かあるのかもしれない」とふわっと察します。主人公の心の変化にクローズアップしたくて、近景に。

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↑[p22-23]風が吹いて、ファンタジーの世界の終わり。余韻がのこる印象に。

・・・と、いうように、文章に並走しながら、カメラを引いたり近づけたりして、お話の揺らぎを描いていきます。
これをちいさな人たちは、1枚1枚の絵の間をまるで映像を見ているように想像していくのです。物語の流れがあるので、目線の向きや構図が「決め!」な感じではない…というのがイラウトレーションとの大きな違いなのかなぁ。

ここまで、わたしなりに「イラストレーションと絵本の絵の違い」を説明してみたのですが、どうでしょうか??ちょっと感覚的なところもありますが…。

最後に

最後に、いろいろ書きましたが、理屈ではなくて、実際に絵本の原画展をやっているギャラリーや本屋さんでずらっと並んだ原画を見て、絵本を読み、そして文字と絵のバランスを学ぶ(体に染み込ませる)のが一番いいと思っています。
作家さんのトークイベントも開催されていますので、ぜひ参加されてください。

【絵本の原画展をやっている場所の紹介】

・ブックハウスカフェ(東京都 神保町)
https://www.bookhousecafe.jp/

・よもぎBOOKS(東京都 三鷹)
https://yomogibooks.com/

・TEAL GREEN in Seed Village(ティール・グリーン)(東京都 品川)
http://teal-green.com/

・うみべのえほんやツバメ号(神奈川県 横須賀市)
http://www.umibenoehonya.com/

・飛ぶ魚(神奈川県 湯河原)
https://tobusakana.jimdo.com/

・えほんやさん(静岡県 三島市)
https://tenkiame.com/ehonyasan/

・長崎書店(熊本県熊本市)
https://www.nagasakishoten.jp/

どれも素敵なお店なので、お近くの本屋さんをチェックしてみてくださいね。
ここまで読んでくださってありがとうございました!

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↓ちなみに、紹介したこの絵本『はこちゃん』は「再販未定」なの(涙)





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