隙間を見つけて

これまた突然だが、私はハリウッドザコシショウというお笑い芸人が大好きである。
その名の通り「ザコ」の「シショウ」らしく、彼のまとめあげている(?)「ハリウッド軍団」には、多くの売れない芸人がいる。事務所も、大手の松竹や吉本ではなく、ソニーであり、明らかに「王道」の芸能人ではない。芸風も、「わかる人にしかわからない」ネタが多い。なので、滑ることも多い。好き嫌いがはっきりするので、少しエゴサーチすれば「嫌い」という人も多いのがわかる。
ただ、彼の凄まじいところの一つは、ここ10年近く「Youtubeに毎日動画をあげている」だったりするのだが、ここではその話はそこまで重要ではない。重要なのは、彼のポジションである。

ハリウッドザコシショウは、ダウンタウンなどの「大御所」になっていくであろう芸人に比べれば、漫才師としての技術面でもトーク力の点でも劣るとファンながら思う。正直、ハリウッド軍団の軍団メンバーも売れていないので、その中の師匠であっても「お山の大将」感は否めないかもしれない。だが、そんなものは所詮他者から見た評価に過ぎない。本人たちは一生懸命やっているわけだし、楽しいわけだから文句を言われる筋合いはない。漫画「ワンピース」で世界最強と言われていた白ひげも、赤犬に「ゴミ山の大将」と言われている。が、私はこうした「お山の大将」であろうが、自身にとって良いポジショニングができれば良いと思う人間だ。釣り合わない実力者と無理に渡り合おうとするより、自分の楽な位置を確立できるのは、実は大切なことだと思っている。
この点は、「匿名掲示板はやっても仕方がないと考える技術者が多いから競争相手が少ない」と、英語圏の匿名掲示板の管理人をやっている西村氏の考え方と共通すると思う。

二つ目のアルバイト、三つ目のアルバイト、どちらでも私は「バイトのまとめ役」みたいな存在。現在進行形でそうだ。かつて一緒に「アンケートボックス」を作った友人や共にチェスのサイトで語り合った友人は大学院に進み、ある人物は起業、ある人物は営業で大成功し財をなしたという噂もある。それに比べたら、バイトのまとめ役を何年もやっているのはしょうもないかもしれない。が、はっきり言ってそこまでできる同級生の生き方を同じようにやったら絶対に体力的にもたないし、競争に勝つ能力も自信もない。そもそも、争いごとはそんなに好きではない。無能とか弱者とか言われるかもしれないが、私には私の戦略がある。一時期は自分は一国の宰相もできるとかほざいてたが、多分私の実態はバイトリーダーみたいなものだろう。

一匹狼でマイウェイを貫いてきた自分もいつしかアルバイトとして入ってくる人たちの「年上」となる存在になり、パートのおばちゃんたちの愚痴を聞いたりする事もある。ホットな話題をSNSで集めていると、隙間時間の話のタネになる。そして、しばらく仕事を続けていると職場の弱点などもわかってきて、アルバイトの分際ではあるが社員に物申せるようになってくる。アルバイトは低コストなので簡単にクビにできないらしく、どちらかというとクビにされやすいのはもっと給料をもらっている社員の方なので、プレッシャーを感じることはほとんどない。関ヶ原の戦いの時、進んでも進まなくても死、という状況になった島津軍は手が付けられないほど強かったという話は伝説になっているが、ある意味私もそこまで「失うもの」がない。だから、強気でモノが言えるし、やれる。正直仕事はそこまで速くないが、他の人が夢中になってできていない作業をしれっとやる。それが意外と全員を助ける。そうした姿勢が次第に年下の子やパートさんや社員の信頼を勝ち得てくると、「慕われて」くる。なかなかこれは面白い。「無能」で「能力もない」はずの人間が、上司からシフトの組み方についての助言を求められるまでになった。ここまでくると、もはや「無能」ではなくなってくるのではないだろうか。職場の中にできていた、

「客観視できる人間の枠」

という空いたポジション、隙間のポジションにうまく滑り込んだわけである。今の職場には、たまたまそれがあった。

身近な場所に「隙間」があるだろうか?

観察眼には昔から定評があったから、ある意味ベストポジションかもしれない。自分の限界を知ることも大事だが、同時に長所を生かせるポジションに空いた枠があると思ったら、すかさずそこに滑り込む。無理をして強いものと戦わずに、弱い者には、弱いものなりの戦い方があるのである。とはいえ私も弱冠24歳、これから何が起こるかわからない。もしも、何かの拍子に「強者」となることがあったらば、手の平を返すかもしれないが・・・。

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