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俳句 ブギウギ 二月

変わりなき言葉毎回春ポスト
兆候やカバンの中へ丹前も
倒るとも春のかたみの手紙書き
陣痛と夫の別れの夜半の春
産まれたの言葉届かぬ三月尽

赤子囲み神妙な面(おも)ヒヤシンス
涅槃西風息絶ゆと告ぐ涙顔
遺稿抱き小草生月一昼夜
三人で春の湖畔の遊園地
美しも短き命石鹸玉

開け広げ箒軽やかサマードレス
夏帽子ミルク代得る呼び名へと
行水の赤子うっとり祖母の腕
夫の死と子の死に耐えて終戦日
きみの唄写真や待たん夏最中

末っ子や妹欲しく芋を喰ふ
兄ちゃんを真似て成長五月来る
単衣の夜新曲依頼歓喜曲
小満の音符の載らぬ五線譜よ
あいの風夜泣きの吾子の散歩道
手伝いの母似の背中烏賊炙り

孫の顔開襟シャツの父の来り
お食ひ初め冷素麵の真似をして
しみじみと妻思ひ出し一夜酒
降ってくる初夏の列車のブギリズム
ブギウギの再起世界や青嵐

新曲や五月の宵の出来の良さ
レコーディング若葉の花と吾子連れて
ズキズキわくわく夏の夜明けのきみの唄
ワンマンショー子連れ出勤夏は来ぬ
夕暮れの麦藁帽子靴磨き

子守唄秋の物干リズム載せ
秋陽入り子連れレッスン授乳時
捨てられ子秋愁空の捨てる親
幕開きぬ長い睫毛の春の唄
正月は首長くして初日なり
吾子に節エプロンの唄うきうきと

花見月街のラヂオのブギ流れ
行く春やじゅんじゅん曲のリズム沸き
頬つつき春の日向の眠る吾子
インチキもせねば喰えぬか春遅々と
パンパンの押しかけ春の楽屋かな

夏始め仕立てぬ姿踊る記事
半夏生難波の友のぐちを聞き
籠の子のおむつぱたぱた五月晴
薄暑光行かせぬ行くは裏小路
五月闇赤子預けしラクチョウと

春の夜戦災跡地春を売る
ガード下夜桜客や石を投げ
雪残る祈り拝めど会えぬ人
朧夜の赤子の頬の柔きこと
花散るややつれ姿の障子閉め

繕わず破れ障子の春の風
春の宵腕を磨きて靴磨き
想ひ出のお面揃えて秋祭
恋文も出した出さない花の袖
街外れ惨め見せれぬ花の塵

春風や惨めな姿逃げ行けど
天と地の寒の戻りの巡り逢ひ
往診の一言重し春日影
おりて来たブギのリズムや春の宵
外套を脱ぐ豹柄のコスチューム

夏の日や破れ障子の吾子の顔
動かざる座敷のおもちゃ扇風機
夏暖簾難波の郷へ潜り抜け
喉使う家族コーラス氷水
はいカット怪我の子連れの現場かな

包帯や抱っこせがみて夏夕べ
かちんこや母からプロの夏羽織
目の前の現場守りの汗拭ひ
唄しかない風死す宵の業界紙
夕凪や子連れの歌手のスケジュール

夏真昼撮影開始閉む扉
南吹く企画対談泣きやめぬ
打水や破り捨てたし身嗜み
夏灯し吾子にこやかな鬼ごっこ
新曲の夏の夜の弾くブギライン

更衣忘れ去られて次のブギ
ゴシップや持ちつ持たれつ浅き夏
走馬燈夜の訪問飴持ちて
お試しの竹皮を脱ぐお手伝
雇い人蠟國鳴く夜鍵渡し

夏めくや訛の強きお味噌汁
泣き喚く泣く子と別る夏の朝
試写会や初夏の留守居の吾子如何に
花型の障子繕ひ夏は来ぬ
秋隣新曲聞かせ昼寝の子

味噌の香の加減の変り秋の朝
人参の赤の際立ち好き嫌ひ
手を添えて混ぜる人参がっぱら餅
秋の暮女中の怒鳴り今のあり
三人の拡がり小路秋夕焼

秋懐や立てぬ痛さの舞台袖
席立てば席の無くなり秋意かな
秋あわれ病は長し長廊下
秋の声気楽な話曲の種
行く秋や娘も凛と記者掻きて
秋暮るる孫に会わせて葬儀場

名乗れども息なき祖母へ冬の旅
しんどくのお面やいずれ冬惜しむ
祭壇の多き座布団線香を
冗談とおもろい世界春にブギ
切れている心の糸や冬の川

三月尽辞めて譲るやマネージャー
けふまでは生き甲斐のぼん花疲れ
肩車庇へ届き石鹸玉
好き嫌ひ人参も喰ひ子に惹けど
こっくりと心くばれぬ春の午后
#朝ドラ俳句 #ブギウギ #kigo #俳句

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