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俳句 虎に翼 5月

依頼人無実の罪を冬はじめ
取材受く鉛筆の先浅き冬
冬めくや路面電車の砂埃
革張りの爪切るソファー夜長かな
雪催起訴認めるか証人台

牢獄の革手錠締む熱帯夜
冬用意全て否認の証人は
流れ星手帳帳簿の新証拠
秋晴るる盾なる人権蹂躙
神無月触れ合ふ手と手主文待ち

判決文ロマンあふれて冬の空
差し入れの勝訴祝ひの鰤並び
冬日和無罪を祝ふ台所
福笑ひ歪みの消えて父の顔
水源の味しるこやの初景色

入学試験皆も名前無き発表日
司法試験合格誓ふ梅雨の後
只飯はははは食わせぬ梅雨の入
麦の波司法部中止覆し
猛暑はね人権が不当逮捕

世を変える若人の卒業式よ
噴水や講習会の昼休み
優秀は緋鯉研究変り者
証拠なる暑中見舞いや兄のもの
虎が雨女になれぬ裁判官

海の泡消えて浜辺の半夏生
野遊びの楽しさも持ち朝鮮に
夏の海響かぬ歌の贈り物
出奔の我儘の限り風入れ
つぎつぎと最後は一人入道雲

空梅雨の試験会場友のゐぬ
出奔の夫見捨て行き青岬
郵便受合格通知待つ浴衣
口述試験月経来る浅き夏
不合格幹に捨てられ落葉散り
合格や蓑虫思ふ世界観

渋柿や女性弁護士が新聞
いろいろな襲う花束花疲れ
おめでとう秋の夕日の門の前
一番の一番望み合格者
不文律篩にかけぬ初電車

夏の朝法との別れ下宿人
夏に入る弁護士修習の事務所
コッペパン未来を語り夏の昼
雁渡し安寧秩序乱す本
冬隣る無罪の証拠初版の日
外套や廊下の電話走りとり

二人逢ふ洒落たサロンを合格を
山吹色逢瀬に似合ふドレス縫ふ
もう会へぬ別れ言葉の夏衣
噴水の欠片の一つ男の背
現れぬ夏の限りの依頼人

裁判所冷たさ隠し秋の色
女故信頼得れぬ秋尽く日
秋深し婦人最初の弁護席
かき氷きっぱり別る過去の人
処暑見合生涯ともに過ごす人

見つからぬ見合ひ相手秋の暮
クッキーの焼き方習ふ秋燕
母や説く女の地獄そぞろ寒
夫のゐぬ菊人形の弁護席
勝相撲社会的地位この手有り

田色づく社会的地位の結婚
結婚やこの手に気づき今朝の秋
秋真昼地位に現る依頼人
鶴来る階段の先弁護席
八畳間記念の写真庭の秋
秋の夜の告白もせず迎ふ初夜

談話室慶事報告蝶わたる
軍拡の夫人の集ふ秋の昼
望むものまだ手にいれぬ秋の空
赤紙や訴訟取り下げばったんこ
悪知恵の人生みえず秋の暮      

戦況の新聞破り焼芋屋
春の草手羽先ふたつ包みの音
ころころと蒲団に潜り夫のもと
雪しまき転勤と行くや鳥取
冬茜取り残され残る孤独

赤紙や柊の花と写す朝
人前の最後の抱擁木の葉散り
冬の星貧血阻む講演会
雨垂れや石を砕かん浮寝鳥
寒き夜飴緩やかな溶け始む

冬苺一人にあらず皆のゐて
信頼のよろず相談神無月
今日辞表枯れ立つ柳見背なに立つ
終えぬを六法全書冬の鷺
堤防の砂利音緩きちゃんちゃんこ

心に蓋法曹界の冬来たり
赤紙のおめでとう北窓を閉ず
出征前冬の河原の風のなき
守り神五黄の寅の夜なべかな
変顔の夫や出征芒道

春まけど友と珈琲消え去りぬ
三月の夫の死伝ふ白い紙
アルバムの還らぬ夫や四月尽
吾子胸へ夫や何処か夕涼み
終戦も道ぐにゃぐにゃと夏終わる

冬日差しマッチの乾き腑糊かな
秋の夜の帰りの遅き額の人
依頼人金の代わりの牛蒡引く
冬を待つ柳行李の法律書
壱枚の戦死報告雁渡し

手渡しの寅の御守や虎が雨
告知書を隠す優しさ白障子
鰤起し悔い残すただ娘婿
冬夕べ洗ひ浚ひを述べ逝くや
麋角解す父が誇りが野辺おくり

秋の朝歯磨き泡の「おはよう」
復員船ゐぬ人探し九月尽く
秋霞御守りだけの白布かな
憲法発布焼き鳥包み新聞紙
寒河原思ひの丈の流涙ぞ

笹舟の名前名付けて離す人
秋河原流れる舟の差別なく
決断の頬を磨くや秋日射
風呂敷を抱え桜の法務省
春嵐君採る理由探す君

#連続テレビ小説
#虎に翼
#朝ドラ俳句
#俳句 #kigo

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