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新歳時記より 9月の季語

9/1
九月(くぐあつ)
    ソーラーの自由研究出す九月
葉月(はづき)
    後を追ふ葉っぱ途絶えけふ葉月
9/2
仲秋(ちゆうしう)
    仲秋や野原の丈の伸び止まり
八朔(はつさく):八朔の祝
    八朔や板面坊主牛に乗る
9/3
二百十日(にひやくとをか):二百二十日・厄日
    異常なり二百十日風の無く
颱風(たいふう)
    颱風や茅葺の棟鳴りやまず
9/4
野分(のわき):野分後・野わけ
    ぼうぼうと前の傘飛ぶ野分中
秋出水(あきでみづ)
    秋出水線路と岸の浮かぶ村
9/5
初月(はつづき)
    初月や碑高し照り返し
二日月(ふつかづき)
    松の葉の貫いて臨むや二日月
三日月(みかづき):新月
    三日月や西空に在り鍵の穴
夕月夜(ゆふづきよ):宵月・夕月
    夕月夜尻尾千切れん吠えもせず
9/6
秋の夜(あきのよ):秋の宵
    秋の夜の原資は兄のあみだくじ
夜長(よなが):長き夜
    胸に抱く新刊本の夜長かな
9/7
秋の燈(あきのひ):燈下親し・秋灯・秋燈
    秋の燈や積読進む図書カード
夜學(やがく):夜學子
    縄暖簾夜學選ばず学ぶ街
9/8
夜業(やげふ)
    コツコツと夜業の音の聞こゆ道
夜なべ(よなべ):夜仕事
    枕辺に父の夜なべの杵の音
俵編(たはらあみ)
    繰り返し力を込めて俵編
9/9
夜食(やしよく)
    夜食出す机の上のマンガ本
生姜市(しやうがいち)
    生姜市訛り上品関西弁
9/10
守武忌(もりたけき)
    守武忌生垣の蔓刈り取りて
太祇忌(たいぎき)
    太祇忌や島原を詠む種探し
西鶴忌(さいかくき)
    西鶴忌読めもしないが古本屋
9/11
花野(はなの)
    三方原花野の向こう地平線
秋草(あきくさ):秋の草・色草・千草
    秋草や天竜河原の果し合い
七草(ななくさ)
    無知が見え七草の名も言えずとは
9/12
芒(すすき):尾花・薄・鬼芒・絲芒・ますほの芒・一叢芒・一本芒・花芒・穂芒・芒散る・尾花散る・芒野・芒原
    手入れせぬ芒の茂る我が庵
刈萱(かるかや):めがるかや
    暦みて刈萱が色替えにけり
9/13
撫子(なでしこ):河原撫子・やまとなでしこ
    大井川河原撫子今盛り
桔梗(ききやう):きちかう
    あちこちと桔梗咲きし三方原
女郎花(おみなえし):をみなえし
    助け合いもたれ合い咲く女郎花
9/14
男郎花(をとこへし)
    色白も強き繁殖男郎花
藤袴(ふぢばかま):蘭草
    藤袴夕暮れ仄か香りきて
葛(くず):葛の葉・眞葛・葛かづら・眞葛原
    葛茂る道を探りて太田川
葛の花(くずのはな)
    葛の花滝への道を隠しけり
9/15
萩(はぎ):山萩・野萩・白萩・小萩・眞萩・萩散る・こぼれ萩・乱れ萩・萩原・萩の戸・萩の宿・萩の主・萩見
    灯り点く峠は遠く萩の宿
露(つゆ):露の袖・露の世・露の身・白露・朝露・夕露・夜露・初露・露の玉・露けし・露しぐれ・露葎・露の秋
    柔らかな畝盛り上がり露の秋
9/16
蟲(むし):蟲合せ・蟲時雨・蟲の音・蟲の聲・蟲籠・蟲の秋
    足並みに合わせて始む蟲時雨
蟲売(むしうり)
    声立てず蟲売の立つ街の角
9/17
松蟲(まつむし)
    無粋にも松蟲を待つ気分つき
鈴蟲(すずむし)
    文机鈴蟲どかせ読む続き
馬追(うまおひ):すいつちょ
    馬追や今年も来たと梁の上
蟋蟀(こほろぎ):ちちろ蟲・つづれさせ
    筵剥ぐ蟋蟀の跳ぶ八方へ
9/18
竈馬(いとど)
    代々の変わらぬ隅の竈馬かな
草雲雀(くさひばり)
    蔓のぼり廃墟の壁の草雲雀
螽蟖(きりぎりす):蛬・はたおり
    どいてくれ真昼の道の螽蟖
轡蟲(くつわむし)
    轡蟲思わず雨戸閉めにけり
9/19
鉦叩(かねたたき)
    着信音止まぬリズムや鉦叩
邯鄲(かんたん)
    文机邯鄲の聲呼び続け
茶立蟲(ちやたてむし)
    文机茶立蟲や障子越し
蚯蚓鳴く(みみずなく)
    蚯蚓鳴く癒えて耳鳴り思い出し
9/20
螻蛄鳴く(けらなく)
    おおきいと螻蛄鳴く夜の自慢かな
蓑蟲(みのむし):蓑蟲鳴く
    蓑蟲や朝の光の糸長し
蟷螂(たうらう):かまきり・いぼむしり
    あれほどにいた子蟷螂今何処
芋蟲(いもむし)
    芋蟲のウェーブ滑らか木を登り
9/21
放屁蟲(へひりむし)
    臭いけど触りたくなり放屁蟲
秋蠶(あきご)
    成虫へサイクル早し秋蠶かな
秋繭(あきまゆ)
    秋繭の庭の筵の明るさよ
放生會(はうじやうゑ):中秋祭・八幡放生會・八幡祭・男山祭・南祭
    立ち泳ぎ鰻空舞ふ放生會
9/22
御遷宮(ごせんぐう):伊勢御遷宮
    御遷宮玉砂利といく白い布
初潮(はつしお):葉月潮
    初潮を望む高台風強し
秋の潮(あきのしお)
    浜名湖の鳥居や赤し秋の潮
月(つき):秋の月・月白・月の秋・月夜・月の出・月明・月の道・遅月・弓張
月・宿の月・庵の月・閨の月・夜夜の月
    月の月人減る里を見つめけり
待宵(まつよひ):子望月
    旅の先待宵の月窓の枠
9/23
名月(めいげつ):十五夜・明月・望月・満月・今日の月・月今宵・芋名月
    名月や隣りの塀の高くなり
月見(つきみ):月の友・観月・月見船・月の宴・月の客
    茹でたての皮をつるりと月の宴
良夜(りやうや)
    さわさわと静かに尻尾良夜かな
無月(むげつ)
    水溜り光りて見せて無月なり
雨月(うげつ)
    街灯の灯し始めて雨月かな
枝豆(えだまめ)
    枝豆の味を引き立て硬き塩
9/24
芋(いも):八頭・親芋・子芋・芋の秋・芋の露・芋畑・芋掘る
    芋の露一払いして鍬入れぬ
衣被(きぬかつぎ)
    大笊や湯気立ち昇り衣被
芋茎(ずいき):芋幹・ずゐき汁
    三味線の糸張る如し芋茎かな
十六夜(いざよひ):既望
    雨あがる今宵十六夜人の待つ
立待月(たちまちづき)
    磐田原立待月の広々と
居待月(ゐまちづき)
    居待月東へ向かふあの汽車か
臥待月(ふしまちづき):寝待月
    肘枕臥待月の夕餉待ち
更待月(ふけまちづき)
    帰り道更待月の左から
宵闇(よひやみ)
    宵闇や柱の影の厚化粧
子規忌(しききき):糸瓜忌・獺祭忌
    伊予にゐて子規忌も知らず梯子酒
9/25
霧(きり):朝霧・夕霧・夜霧・霧の海・川霧・海霧・濃霧・さ霧・霧雨
    朝霧や突然の顔して会わん
蜉蝣(かげろふ)
    街灯を隠し蜉蝣道の色
うすばかげろふ
    翅脈やうすばかげろふゆくり翔び
草蜉蝣(くさかげろふ)
    赤い髭草蜉蝣の操りぬ
蜻蛉(とんぼ):とんぼう・あきつ・やんま・赤蜻蛉・精霊蜻蛉・とんぼつり
    七色の魅せられて翅蜻蛉追ふ
秋の蝶(あきのてふ)
    窓辺よりひとつ小さき秋の蝶
秋の蠅(あきのはへ)
    まるまると蓄え多し秋の蠅
秋の蚊(あきのか)
    秋の蚊や虫に隠されすつと出で
秋の蚊帳(あきのかや)
    片隅の重々し色秋の蚊帳
蚊帳の別れ(かやのわかれ):蚊帳の果・蚊帳の名残
    広々と蚊帳の名残の跡もなく
9/26
秋扇(あきあふぎ):扇置く・捨扇・忘れ扇
    秋扇次は遊びと一休み
秋團扇(あきうちわ):捨團扇
    釜戸前黒く汚れし秋團扇
秋袷(あきあわせ):秋の袷・後の袷
    祖母の織る秋の袷の縞の柄
富士の初雪(ふじのはつゆき)
    新幹線富士の初雪隠し行き
秋彼岸(あきひがん)後の彼岸・秋彼岸會
    山の寺一枚脱いで秋彼岸
蛇穴に入る(へびあなにいる):秋の蛇    安心と蛇穴に入る山歩き
穴まどひ(あなまどひ)
    安心と山に入れども穴まどひ
雁(かり):かりがね・がん・初雁・雁渡る・雁来る・来る雁・落雁・雁鳴く雁
    幟下るビルより高く雁の飛ぶ
雁瘡(がんがき)
    雁瘡や今年は早き痒みきて
燕帰る(つばめかへる):帰る燕・去ぬ燕・帰燕・秋燕
    玄関や空の巣並び去ぬ燕
9/27
角切(つのきり):鹿の角切・鹿寄
    角切や解かれ人並み一目散
牡丹の根分(ぼたんのねわけ)
    土乾く牡丹の根分さらさらと
曼珠沙華(まんじゅしゃげ):彼岸花
    宇宙から電波アンテナ曼珠沙華
鶏頭(けいとう):鶏頭花
    人をみて鶏頭が種振り飛ばし
葉鶏頭(はげいとう):雁來紅・かまつか
    髪を染む族の先頭葉鶏頭
早稲(わせ):早稲田・早稲刈る
    いち早く首を下げる早稲田かな
菜種蒔く(なたねまく)
    細やかな菜種蒔く母一通り
二十三夜(にじふさんや):二十三夜待
    自慢する二十三夜の下弦かな
秋の海(あきのうみ):秋の浪・秋の浜
    二人して二人の想ひ秋の海
秋鯖(あきさば)
    秋鯖の煮凝り美味し今朝の鍋
秋刀魚(さんま)
    母さんは暗闇の中秋刀魚焼く
鰯(いわし):眞鰯・秋鰯・鰯売
    指先の脂の滑り鰯割く
鰯引(いわしひき):鰯網・鰯船
    豊漁や左舷傾き鰯引
鰯雲(いわしぐも)
    キャスターの一句引き出し鰯雲
9/28
鮭(さけ):初鮭・鮭小屋
    堰堤を遡り鮭土産かな
鱸(すずき):すずき釣・すずき網・すずき膾
    これくらい仕掛け外した鱸かな
鯊(はぜ):ふるせ・鯊の秋・鯊の潮・鯊日和
    義理兄弟お尻並べて鯊の秋
鯊釣(はぜつり):鯊舟
    天狗巣を引き連れ錘鯊釣りぬ
寝釣(ねづり):岸釣
    ぶらぶらとサンダル並べ寝釣かな
鰍(かじか)
    バチャバチャの手応えのなさ鰍つり
菱の実(ひしのみ):菱採る・茹菱
    幸せな味をたつぷり菱の実よ
竹の實(たけのみ)
    竹の實や崩壊の門栄華なく
竹の春(たけのはる)
    行く末を語るが如し竹の春
竹伐る(たけきる)
    ぶるぶると竹伐る鋸の音の見ゆ
草の花(くさのはな):草花・千草の花・草花売
    雑草も街では買われ草の花
秋海棠(しうかいだう)
    トーチカの役目解らず秋海棠
紫菀(しをん)
    人の絶え庭埋め尽くし紫菀かな
9/29
蘭(らん):蘭の秋・秋蘭・蘭の花・蘭の香
    その昔テレビの上の蘭香り
龍膽(りんだう)
    地平線龍膽の揺れ三方原
鳥頭(とりかぶと):鳥冠
    落石を恐れながらの鳥頭
富士薊(ふじあざみ)
    草原のひときわ高き富士薊
コスモス(こすもす):秋桜
    ひと時のコスモス畑の賑はひ
吾亦紅(われもかう):吾木香
    幻か彼方に人が吾亦紅
真菰の花(まこものはな)
    細々と真菰の花の咲く河原
時鳥草(ほととぎすさう):油點草
    山門より時鳥草奥の院
狗尾草(ゑのころぐさ):ゑのこ草
    犬もぐる狗尾草の生ひ茂り
露草(つゆくさ):月草・ほたる草・ばうし花
    庵にも露草の咲く庭のあり
蕎麦の花(そばのはな)
    そばのはな棚田の上の片隅に
糸瓜(へちま):糸瓜棚
    しっとりと太き丸太や糸瓜棚
瓢(ふくべ):靑瓢・ひさご・瓢箪
    さるが愛で末広がりの瓢かな
鬼灯(ほほづき):酸漿・蟲鬼灯
    疣の元鬼灯恐し鳴らせれず
唐辛(たうがらし):蕃椒・唐辛子
    赤々と魔物恐がり唐辛
秋茄子(あきなす)
    秋茄子を食わせぬ義母へ新品種
9/30
紫蘇の實(しそのみ)
    母を追ふ紫蘇の實散らすスカートよ
生姜(しやうが):薑・新生姜・古生姜
    焼き肉屋生姜の消費蒜を抜き
貝割菜(かいわりな):二葉菜
    小刻みな絨毯揺れて貝割菜
間引菜(まびきな):抜菜・摘菜・小菜汁
    噛み切れぬ間引菜殘る歯間かな
菜蟲(なむし):菜蟲とる
    遠き畑いちいち返し菜蟲とる
胡麻(ごま):胡麻刈る・胡麻干す・胡麻叩く
    胡麻叩く子虫ぴょんぴょん逃げようと
玉蜀黍(たうもろこし):唐黍・もろこし
    赤い髭蓄え多き玉蜀黍
高黍(たかきび)
    見えるはず高黍の道隠しけり
黍(きび):黍の穂・黍畑・黍引く
    簾なす納屋の庇の黍揺らぐ
稗(ひえ):稗引く
    貧しくも食べたことない稗の飯
粟(あは):粟の穂・粟畑・粟引く・粟刈る・粟飯
    ぺったんと最初はそつと粟の餅
木犀(もくせい):銀木犀・金木犀
    暗い道うちの木犀待ちわびて
爽やか(さわやか):さやけし
    げんこつハンバーグ行列造り爽やかに
冷やか(ひややか):秋冷
    秋冷や靴下の色褪せていて
秋の水(あきのみず)
    どきとして顔を引き締め秋の水
水澄む(みずすむ)
    水澄むや映る山にも雲もなく

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