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今年はどうする? 中学受験と小学校行事との両立

1.夏休み明けに多くの子供の成績が落ちるわけ

10月を迎え、小学校6年生のお子さんを持つご家庭は、2月1日までの残りの日数を指折り数える毎日に突入されていることでしょう。
9月は「受験の天王山」と呼ばれる夏期講習を終え、塾ではその成果を試す大きなテストが目白押しでした。
もちろん夏休みの勉強の成果がテストに反映されたご家庭もあるでしょうが、多くの6年生は「夏休み明けに成績を落とす」といわれています。

■夏期講習明けに成績が低下した
数年前にSAPIXに通っていた我が家の娘も御多分にもれず、8月末の「マンスリーテスト」では3年間通っていたうちの 最低偏差値、9月末の「第1回サピックスオープン(SO)」では、第1志望校の合格可能性20% を叩き出しました。

過酷な夏のスケジュールが成績に反映されず、失意のどん底にあったのを思い出しますが、受験を終えて思い返すと、夏の勉強の苦しみが成績に表れず親からは失望される当時の子どものつらさは想像以上だったのではないでしょうか。

■なぜ夏の頑張りはすぐに反映されないの?
頑張りが成績として現れることで「残りの数か月のモチベーションとしてほしい」という願いむなしく、多くの受験生が9月に成績を落としてしまう理由を、教育者の西村則康氏は著書の「中学受験基本のキ!」で

①夏の暑さと勉強量により、体力を消耗した
②頑張り方を間違えてしまった
③夏の宿題が多すぎて、アタフタと勉強してしまったから

と述べており、冬に向けやる気と自信を回復させるには、10月からの対策が重要であると言っています。
9月の成績低下は「あたりまえのこと」とサッサと切り替え、10月以降の過ごし方をまずは考えていきましょう。

そこで、少しネックになってくるのが、これから多くなる小学校行事との付き合い方です。

2.小学校行事と中学受験の両立 親の心配

10月から11月にかけて、土日は特訓でつぶれ、志望校別の模試や塾の合格判定テストがますます目白押しです。
加えて志望校の説明会や文化祭などのイベントもあり、塾との調整が必要な場合もあります。
さらに、例年、修学旅行や体育大会や運動会、土曜参観などの学校行事も重なり、兄弟児のいるご家庭は特に、スケジュール管理と体調管理に頭を悩ませる時期です。
9月に成績を落としていることで、塾のテストや特訓は絶対に欠席したくない!! という思いから、この時期の小学校行事への参加を躊躇される家庭が多いのも事実です。

今年中学受験をするお子さんを持つ弊社スタッフは「運動会の応援団の練習で朝早く学校にいくようになり『朝勉』の時間が取れなくなっている。これから修学旅行や学芸会もあり、ますます気持ちを学校行事に持っていかれて勉強に身が入らなくなるのでは……」と心配していました。

■秋の週末のスケジュール管理の難しさ
数年前の秋、とある土曜日の我が家のスケジュールをご紹介しましょう(子どもは受験生の娘ひとり)。

・子どもは朝から昼すぎまで学校の土曜参観に出席(夫が見学)
・母は朝から併願校の入試問題報告会→第一志望校の学校説明会をはしご
・子どもは土曜参観を少し早退して夕方まで塾主催の面接模試に少し遅刻して参加(土特は休講日)
・夜から算数の個別指導塾の振替授業に出席

この日の入試問題報告会では学校主催の模試が実施され是非受けさせたかったのですが、土曜参観があったため参加を泣く泣く断念しました。
この時期の我が家のスタンスとしては、塾のテストや補習はよほどの体調不良を除き欠席しない、そして志望校主催のイベントには絶対に参加することにしていました。

この日だけでなく9月~11月にかけては、小学校行事・塾・志望校主催の行事が重なったり、小学校行事の疲れや急激な気温の変化からくる発熱で塾を休むことがたびたびありました。
兄弟児のいるご家庭は例年のこの時期、恐らく夫婦で分担して塾の送迎や、学校や習い事のイベントに奔走されているのではないでしょうか。

■秋の実施が一番多い「修学旅行」
特に例年学校でこの時期に実施されることの多い「修学旅行への参加」については、受験生家庭の頭を悩ませています。
修学旅行の時期や行先、そして期間は地域によってさまざまですが、10月~11月にかけて実施される学校も多くあります。
「日本修学旅行協会」の調査報告によると、旅行日数は2日間が9割近く。残り1割が3日間となっており、実施時期は10月の学校が最多です(約3割の学校。続いて5月、6月、11月の順)。

10月に実施される学校の6年生の場合、最低1日は塾を休むことになり、土・日を挟む場合は模試や志望校の説明会に参加できなくなる可能性もあります。
また、帰宅当日や翌日はぐったり疲れて、そのまま塾に行かせることも難しいでしょう。
夏休み明けの9月で成績を落とした多くの家庭はこのたった2~3泊という日数さえ、勉強から離れることに不安を覚えるのです。

3.今年の修学旅行はどう変わる?中学受験に与える影響

さて先日、緊急事態宣言の解除が発表されました。公立小学校の修学旅行事情にも影響がありそうです。

■コロナにより修学旅行の日程が冬に変更も
今年の小学校の修学旅行の実施状況はどうなっているのでしょうか?
SNSを見ていると「すでに中止が決定した」「2回延期になったけど12月に行く予定になった」「11月に延期になった」「日帰りになった」「1月に延期になった」など都道府県ではなく市区町村レベル、学校レベルでの差が出ているようです。

■中学受験に配慮し「共通追試」実施日以降に延期を決めた市区町村も
神奈川県逗子市では緊急事態宣言が空けた10月の修学旅行実施を決定。神奈川県藤沢市での小学校は、9月~10月に実施予定だった修学旅行を2月27日に延期することになりました。

「神奈川県私立中学高等学校協会」は先日、入試日程にコロナウィルスに感染して受験ができなかった生徒に向けた「共通追試」を2月21日に実施することを発表しました。
神奈川県の私立中学の受験生が、同じ日に同じ場所で同じ試験を受験し、各学校が自校の合格基準をもって合否を決定するそうで、この「共通追試」には、日本大学藤沢中学校、湘南白百合学園中学校、鎌倉学園中学校、中央大学附属横浜中学校、神奈川大学附属中学校などの計20校程度の私立中学校の参加が見込まれています。

修学旅行を2月27日に延期を決定した藤沢市はこの「共通追試」の日程を含め中学受験生に配慮して日程を調整したのかもしれません。制服の注文などに影響がある可能性はありますが、受験前の12月や1月に修学旅行に行くよりもスッキリとした気持ちで参加できますね。

■今年の「修学旅行の意義」
旅行やレジャーを全く楽しむことができなかったこの2年間、中学受験をさせる上で経験させてあげたかった旅行を断念したご家庭も多いのではないでしょうか。
子どもたちは5年次の宿泊学習もなくなり「体験」に飢えているため、修学旅行での刺激やフィールドワークで得た知識が、例年以上に子どもたちの血肉となることも考えられます。

小学校側はもちろんリスクを想定したうえで、今迄いろいろなことを我慢し続け、修学旅行という一大イベントを楽しみにしている6年生のために、決死の覚悟と対策をもって修学旅行の実施と時期を決められていることでしょう。
小学校の修学旅行が12月や1月に延期になってしまった中学受験家庭は、子どもにとっても、親にとっても苦しい決断を迫られているはずです。

■修学旅行が12月や1月に延期になったとしたら……?
例年通りの時期の実施であれば「義務教育の学校行事はもちろん参加が前提だし、受験まで100日以上あるから1日や2日塾を欠席したところで、影響はあまりないだろう」となんとか割り切り「子どもを修学旅行に参加させる」という意見が一般的なようです。
しかし、もし「修学旅行が12月や1月に延期になった」としたら、どのような決断をされるご家庭が多いのか、知りたいところです。

手放しで参加をお勧め出来ない理由としては、過去問に取り組む時間が減ることや塾を休むことでの遅れが怖いだけでなく、修学旅行先でのケガや、毎年猛威を振るうインフルエンザに集団生活で感染して受験当日に影響する可能性や、冬とともにコロナ感染の波が再来することもあり得るからです。

ここはぜひ、「○○すべきだ」といったインターネット上やご近所などの「他人の意見」は参考程度に、「子どもがどうしたいか」「親はどうさせたいか」をじっくり考えて参加/不参加を決めて欲しいなと思います。

4.まとめ 中学受験と残りの学校生活両立のためにできること

実のところ、塾や勉強を1日・2日休むことが受験の結果に大きな影響を及ぼすとは考えにくいのが、受験を終えた多くの保護者たちの意見です。
そして、数か月間、学校授業や学校行事を欠席してまで塾と受験勉強に専念したところで、必ず良い結果になるわけではないという事実も目にしています。

■受験生の小学校生活への想いはそれぞれ
数年前、成績だだ下がり中の10月半ばに2日間の塾の欠席を心配しながらも修学旅行に参加した我が家の娘ですが、中学受験を終えてから「当時はクラスメイトの女子とぎくしゃくしていたし、グループ決めでもめにもめて嫌だったから、修学旅行には行きたくなかったし楽しくなかった」とカミングアウトしました。
中学の同級生にも同じような思いの子が多いそうで、中学受験をする小学生女子にとっては意外と「あるある」なのかもしれないと思いました。

中学受験をする6年生が放課後や休日の遊びを他の子と同じようにできるわけはなく、友達関係のぎくしゃくは男女問わずよく聞く話です。
最初はみんなと同じように遊びたがっていた子どもも、6年生にもなると、小学校生活と「受験生である自分」を割り切るようになってきます。「子供はどうしても修学旅行に行きたいはず」というのは大人の幻想なのかもしれません。

受験も大詰めになってくるこれからは、親が周囲の意見や一般論に左右されるのではなく、個々の状況に合わせて方向性を決め実行することは、子どものためにも必要になってきます。

■幸せな中学受験の結末を迎えるために
これからますますスケジュール管理に追われるご家庭にとって悩ましい小学校行事と受験との両立の壁に直面したらぜひ一度、子ども自身に意見を聞いてみてください。
今まで頑張ってきた小学6年生は、想像以上に成長し、自分の現状を把握しています。子どもの気持ちを優先することが、幸せな受験を終えるために一番大切なことなのではないでしょうか。


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