10本の戦争映画よりもバンドオブブラザーズをすすめる理由

2020年に入り、また世界情勢が大きく動こうとしています。
特にイランとアメリカ間の緊張がかなり高い位置まで来ており、先の大戦のようなものにはならずともかなり危険な状態です。
遠い国での話ではありますが、決して日本に住む我々も他人事で片付けられないです。
詳しい事を書いていくと今回の本筋からそれますし、僕なんかよりもずっとこの分野に聡しい方がいらっしゃる事だと思いますので控えますが、もしこの二国間で戦争が起これば世界の経済に大きな打撃を与える事でしょう。

ただ戦争なんてのはそういった経済の面だけで勘定できるものではないですよね。
人々が命のやり取りをするわけですから…。
名前も顔も知らない人といえども、一時の情勢によって誰かを殺したり誰かに殺されないといけないというのはそこにどのようなメリットがあっても良いことではないのは確かです。

さて、そんな戦争の凄惨さを伝える媒体というのはたくさんあります。
小説や随筆、報告書といった書物や口頭による伝承がこれにあたりますが、様々なナラティブの中でも特に身近なところにあるのが映画ではないでしょうか?
その性質上好き嫌いはかなりはっきり別れますが、自分はわりと戦争映画を見てきた方かなと思います。
戦争映画といってもアクション要素に焦点をあてエンターテイメントとして楽しめるものからより戦争と人間の関係を描いたものまで、その趣旨は多岐に渡ります。

本当にたくさんの戦争映画を見てきました。
有名どころだとプライベートライアン、ブラックホークダウン、ローンサバイバー、シンドラーのリスト、フルメタルジャケットetc...
マイナーどころだとグッドモーニングベトナム、ハートロッカーなんかも見ました(本当に映画通の人からするとマイナーでもなんでもないでしょうが笑)。
やっぱりどの映画にも当てはまるのはそこで闘うものの心理の変化が濃くうつされる事が多い点です。
ハートロッカーの冒頭では「戦争は麻薬だ」という一言が語られます。
戦争というのは闘う者の身体だけでなく心に強いダメージを与え狂わせるわけです。

どの戦争映画も非常にショッキングなものであり反戦の意を伝えるに十分かもしれません。
ただ本当に戦争についてしっかり考えたいという方にはどんな戦争映画よりもおすすめしたい映像作品があります。
それがタイトルにもある

バンドオブブラザーズ

です。
直訳すると[兄弟の絆] といったところですが、あえてここではこの言葉の意味には触れません。
これを映像作品という形で呼んだのは本作が劇場映画ではなくテレビで放送されたドラマシリーズだからです。
全10話からなる本作はスティーヴン・スピルバーグとトム・ハンクスを制作総指揮に迎え撮影されました。
舞台は第二次世界大戦期のアメリカとドイツ。
ノルマンディー上陸作戦のため訓練される空挺第2師団E中隊が全線に投入され、その後ドイツが降伏するまでの戦いを描いています。
スピルバーグ、トム・ハンクス、ノルマンディーで本作を知らない人でも感づく人はいるかもしれませんが、バンドオブブラザーズはプライベートライアンの番外編みたいな感じです(ライアン二等兵は登場しません)。

さて、本作を自分がすすめる理由としてあげたいのが、そのドラマという形をとるからこそ描く事のできる細かな心理描写にあります。
一般的な映画作品というのは二時間ほど、長くても三時間くらいの尺に修める必要があります。
そうなるとどうしてもメインとなる戦いが絞られてきたり、多くの登場人物の心情一つ一つを描くのが困難になります。
対してドラマの形をとるバンドオブブラザーズは全10話かけてノルマンディー上陸作戦前後から対ドイツの終戦まで描いた作品になるので様々な角度から戦争と人(特に兵士)の関係を捉える事が可能になっています。
この10話の中に丸々1話使ってメディーク(衛生兵)に焦点を当てたものもあります。
そういった細かい部分から時間をかけて、仲間を失いトラウマ級の傷を負い、戦争に心も蝕まれる人々の心理が描かれるわけです。
戦争映画をよく見る人にはわかって貰えると思いますが、「戦争映画あるある」として新米兵士いびりがあげられます。
正直映画で見ているときはこれにリアリティーを感じにくかったのですが、ドラマを通して兵士たちの心境のうつろいが見えることで「確かにそうゆう気持ちにもなるよね」と現実味を帯びてきます。

バンドオブブラザーズのすごいところなんて枚挙に暇がないですが、やはり目立つのは前述したような点です。
物事というのにはフローがあり、なかなか点では捉えることができません。
もちろん、この作品も第二次世界大戦の中でも一部をあつかったものになるので、大きな視点で見れば戦争の全てをカバーしているとは言い難いですが、
別々の物語をたくさん見るよりも線で繋げやすい点を追うことでより見えてくるものが増えるのではないかと思います。