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小学生向けe-スポーツ大会を開催する理由。

 先日、生野区役所も共催する小学生対象のe-スポーツ大会のプレスをいたしました。ゲームに関しては規制の条例をつくる自治体もある中で、賛否を呼ぶと思いますので、意図や経緯を説明します。

「脱獄ごっこ×生野っこe-スポーツチャレンジ!!」の詳細・申し込みページはこちら。区外の小学生も空きがあれば参加可能です ⇓

1. 休校中、ゲームに救われたこどもたちがいる

 新型コロナ感染症が拡大している頃、「家でプレステでもやってろ!」とイタリアのどこかの市長が怒っていた。そして、世界的に『あつまれどうぶつの森』が凄まじい売れ行きを示した。フランスでは『フォートナイト』の中で、児童虐待にあっている子どもたちをキャッチして救い出す団体があった。

 ゲームは、ステイホームの子どもたちを救った。私の中学生の娘も、スマホの音声通話をつけっぱなして『あつ森』をやり、小2の息子の「ゲーム実況Youtuberになりたい」夢を叶えるために親子でチャンネルを開設した。

 「ゲームに助けてもらった家庭」がステイホームの間にあったことも知ってほしい。

 このステイホームの間、どこにも遊びに連れて行けず、卒業式前からほぼ学校に行けなかった小学校生活最後の娘を見て、LINEでつながれるようにスマホを渡さざるを得なかった。

 息子は『マリオメーカー2』でコースを作って世界中の人たちに遊んでもらって喜んでいた。私と娘は『ジャストダンス2020』で海外の人たちと一緒に踊り、運動不足を解消した。『あつまれどうぶつの森』でクリエイティブを爆発させ、お金の仕組みを学び、できない外遊びを疑似体験しまくっていた。

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2.大人は、こどもの触れているツールを知らない

 数年前、学校でこどもたちが月曜日に「昨日の『はじめシャチョ―』の新着動画観た?」「観た!」と言ってるのを聞いて、えっ、と思った。

 私たちが月曜日に「ドリフ観た?」とテレビを観て言い合っていたのがYoutubeに移っている。今の高校生あたりは、「動画を観るプロ」だ。塾講師時代、15分一区切り(CMの入るテンポ)で授業を組み立てていたが、今は冒頭1分で掴み、5分刻みで区切らなければついてきてもらえない。

 位置情報でお互いを把握しあい、彼氏とのキス動画をアップする。歴史上はじめて「年長者が若者に知識を授ける」のではなく「若者にITやスマホの使い方を教えてもらう」時代になっているわけだ。ぴえん。

 過去からカルチャーギャップはあったし、いつだって若者文化に大人たちは眉をひそめてきた。「トレンドを知らなくても、年長者の経験値だけでやっていける」ほど、スマホを基本アイテムとするデジタル社会は甘くない

 小1の息子が作りあげた「マインクラフト」の中につれていかれたとき、ゾクゾクした。すごい。Youtuberの動画を見て作ったものもあれば、オリジナルの作品もある。

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 ブロックを積み上げる時、真ん中に窓を置くために1つ1つ数えていた息子は、小2で掛け算を習った時に「便利!」と思うだろう。自動的にサトウキビを収穫する仕組みを作っていた彼が、小5の社会で産業を学んだ時に点と点がつながり、生きた知識となる。

「あつまれどうぶつの森」で、住宅ローンや株の仕組みを知った小学生がどれだけいるだろう。

 こどもがトラブルに出会うリスクを回避するためにも、学びの入り口を見つけるためにも。

 大人たちはもっとこどもの触れている世界を知った方がいい。若い教員が増えていることは、ICT教育には力になる。もっとこどもたちの触れているツールを活用し、学びに引き寄せてほしい。

3.ゲームは「悪」ではなく「可能性」。

 ゲームにはいろんな種類がある。
 格闘系、パズル系、謎解き系、クリエイティブ系……。 

 小学校のプログラミング教育は、「マリオメーカー2」でええやん、と個人的には思っている。息子なりに工夫をしてコースを作り、イギリスの若者やオーストラリアの少年がクリアしてくれて、いいね!をくれる。

 世界中に、びっくりするようなコースがある。コースを走り抜けるだけで、米津玄師の「Lemon」が自動演奏されるのだ。すごいな。

 キャリア教育の点でも、ゲーム業界には将来性がある

 親としてこどもに就かせたいその職業は、果たして10年後も存在しているだろうか?十分な需要があるだろうか?

 少なくとも、ゲームおよびゲーム周りのIT業界は10年後も存在している。ゲームクリエイター、キャラクターデザイン、作家、プログラマー、作曲家……多くの人が関わり、ゲームができた後に発売前のチェックや海外向けに翻訳をする仕事もある。ゲーム実況Youtuberも人気だ。e-スポーツもこれから伸びるだろう。

 最近読んだ一冊。ゲームには冷静な分析力と体力が必要なことが、よくわかる。そして「ゲームが好き」を突き詰めた先に、世界という舞台があることも教えてくれる。

 大人たちが「知らない」というだけで、こどもたちの可能性を閉じてはいけない。変化の激しい時代に教育に関わる身として、ゲーム業界に複数の友人を持つ身として、ゲーム好きなこどもを持つ親として、そう思って今回のイベントを企画した。

4.ゲームについて親子で「対話」しよう!

 「生野区でe-スポーツの大会をしたい」という想いを抱き、ふと生野区にある企業・ロート製薬株式会社の方にぽろっと伝えたところ、「ロート製薬はe-スポーツ選手のスポンサーなんですよ!」と思いがけなくつながった。目の健康を応援する会社だから、という理由がいい。

 お互いに「生野区のこどもたちの活躍の場を作ろう」という想いも合致して、スポーツタカハシさん、デジタルハーツさんと連携して話が進み始めた。まずはチーム戦でe‐スポーツを体験する。大会の後は、プロのe-スポーツアスリートによるトークセッションで、ゲームと仕事、ゲームとの付き合い方について親子で考える機会にもする。

 ゲームタイトルを、任天堂Switchなどハードに左右されるものにせず、スマホやタブレットで無償でスタートできるオンラインゲームとして『脱獄ごっこ』を提案していただいた。

 UUUM株式会社の特別協力を得て、開催に向けてスタートした。『脱獄ごっこ』はチャット機能がなく、小学生ユーザーが多く、保護者としても安心できる。内容は、ケイドロや陣取り鬼ごっこをゲームの中でするととらえてもらえれば、わかりやすい。

 区内小学校の校長先生には、ポスターの掲示をお願いして以下のように伝えた。

「このイベントのポスターを貼ると、こどもたちが見つけてその前であれこれ話していると思います。そこに声をかけて、こどもたちがどんなゲームを、どんな形で、どのぐらいの時間遊んでいるのか、オンラインでつながって遊ぶときの相手はだれかを、聞いてみてほしい」

 保護者には、学校を通じて「オンラインゲームについて話をしよう!」という通信物を配り、やはり対話をしてほしいと伝えた。

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 オンラインゲームの課金、ゲーム内でのいじめ、時間管理ができないといった課題に大人たちは神経をとがらせている。大人がこどもを狙うツールになっていることもある。
 
 その危険に触らせない方針の家庭もあれば、親の守れる範囲の中で楽しみ、リスク管理をしている家庭もある。残念ながら、与えっぱなしの家庭もある。

 今回のイベントを通じて、ゲームについて親子で対話するきっかけを提供したい。同時に、ゲームの提供側に「エデュケーション版」や「U12モード」を作るといったアイデアも出てくることも期待している。


 これだけステイホームの間にゲームに子守りをさせておいて、「禁止条例」なんてセンスの無いものを作るよりは「自分たちでルールを作って遊ぶ」自律的な発想を育てないと、新たなツールは今後もどんどん生まれてくる。

 コミュニケーションの取り方、個人情報の守り方、お金や時間の使い方、困ったときの助けの求め方は、どんなにツールが変わろうとも基本は同じ

 そして全く違う角度から、元小学校の校長として伝えたい。

 勉強ができる子、運動ができる子、絵がうまい子、歌がうまい子は学校で褒められるけど、「ゲームがうまい」子は褒められる機会がない。それは公教育のフィールドでは、評価する機会がないからだ。だからこそ、別の場を用意したかった。

 ステイホーム中にゲームをしまくった3ヵ月を、ムダなんて言わせない。

 磨きまくった、瞬発力、判断力、集中力を大人たちに見せつけてくれるのを楽しみにしている。

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申し込みは以下のサイトから ⇓

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