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私が一次資料にこだわる理由

こんにちは。私はワシントンDCに住んでいる教育研究員です。
「出典は?」が口癖の一次資料オタクです。

トランプ大統領のオリンピックに関する発言と、それを巡る報道を眺めていて、改めて自分が一次資料にこだわる理由を思い出したので、それについて書きたいと思います。

まず今回のトランプ大統領のオリンピックに関する発言ですが、ちょうど中継映像を見ていました。記者からの質問に話を逸らそうとする大統領はmaybeを7回も使い、長い長い前置きの後に “I would say maybe they postpone it for a year”と控えめな意見を述べました。立場のある人は大変だなぁと見ていたのですが、しばらくして日本語の速報が流れました。

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この速報をもとに「トランプ氏なんかに言われたくない」もしくは「アメリカも中止せよと言っている!」等の意見がネット上に溢れはじめ、私はとても悲しくなりました。トーンが実際とかけ離れていたからです。私自身はオリンピック延期に賛成でトランプ大統領は不支持の立場ですが、明らかにニュアンスの違う、質の低い情報を元に空気が形成されていくのをみて心が痛くなりました。

そこで動画を和訳したTweetを内輪向けに投稿したところ、想定以上に多くの方が読んでくださいました。嬉しかったのは、たくさんの方に「#一次資料読もう」という考えに賛同いただいたこと。教育研究員である私が一次資料にこだわるのには理由があるからです。

教育は、ほぼ全員が受けたことがあるため、それぞれに主張があります。また、自分が受けた教育を否定されることは楽しいことではありません。そのため、たくさんの、本当にたくさんの非科学的な教育施策が実行されています。詰め込み教育はダメだ、いやいや今こそ基礎学力だ、探究教育こそが答えだ、そうだ教員を評価しよう、生徒同士教え合わせたらどうか、プログラミングをやらせよう。色んなアイディアが生み出されるのは素晴らしいことだと思います。しかしながら、誰かが思いつくような施策は、ほとんどの場合すでにどこかの国で実行され、多額のコストをかけて研究結果が整理されています。でも、それは知られていない。幼児教育の効果が高いエビデンスとして紹介されるペリー就学前プロジェクト、幼児教育を受けた良い方のグループの3割以上が40歳までに5回以上逮捕されていること(悪い方は5割以上)*や、マシュマロ実験が再現できなかったこと**、がなぜ知られていないのでしょうか。

多くの論文が英語で書かれていることももちろんあるでしょうが、一番の理由は、「思いつきの施策を後から効果検証する仕組みがないこと」だと思っています。これは誰かが悪いわけではなく、システムの問題でしょう。(この件についてマイケル・ポーターが興味深い考察をしていたので、今度記事にしたいと思います。)

では、一般人である私たちはこのシステム、丁寧な人より派手に煽る人が勝つアルゴリズムとどう戦えば良いのか。1つはちゃんと一次資料を読むこと。出典をたどり、突っ込みを入れることで、自説に都合の良い情報だけを抜き出す人に得をさせないようにしなければいけません。2つめは、何か施策が実行されたら、効果検証を求めること。自分が納めている税金が何に使われて、どんな結果につながったのか知ろうとすること。

ただし、煽りビジネスをする人にも、無邪気にフェイクニュースを拡散してしまう人にも、それぞれの正義があり生活があります。(出典オタクの私だって時々間違えます)戦うべきはシステム。

また別記事で書きますが、トランプ大統領が支持を増やしている戦術の1つにマスコミを攻撃する作戦があります。ミスを取り上げて「マスゴミ!」と叫ぶのもまた煽りの1つなのです。

とてもとても微力ですが「煽ったもの勝ち」のシステムに負けないために、一次資料オタクを続けたいと思います。同じ気持ちの仲間に出会えたらとてもうれしいです。

Perry Preschool Project
** Revisiting the Marshmallow Test: A Conceptual Replication Investigating Links Between Early Delay of Gratification and Later Outcomes

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Washington DC在住 / GLOBIS 研究員 / SERI代表 / 教育政策のブレーンを目指して勉強しています
コメント (2)
とても魅力的な記事でした!
また見に来ます!
ありがとうございます✨
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