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アメリカのユーススポーツ事情

こんにちは、アンバサダーの葉子です。

日本は大変な年明けとなり、今なお大変な状況にいる人たちや苦しんでいる人たちがいると思うと、自分には何ができるだろう? 日本に住んでいる以上、いつ自分たちの身に同じことが起こるともわからない中、どう備えればよいのだろう? と考えさせられる日々です。新年のご挨拶は控えさせていただきますが、今年もよろしくお願いします。

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アメリカのユーススポーツ事情

以前の記事『【アメリカ駐在】帰国したらタクシーの運転手になれるんじゃないか、と思った「送迎地獄」』でも少し触れていますが、車社会のアメリカで子供にスポーツの習い事をさせるのは、とんでもなく大変です。それはもう、帰国したらタクシーの運転手になれるかもしれない、と思うほど。

今回は、そんなアメリカのユーススポーツ事情について詳しめに書きたいと思います。

ユーススポーツの種類

 アメリカのすべての地域に当てはまるわけではないかもしれませんが、私が住んだミシガン州では、ユーススポーツがとても盛んでした。

 たとえば、サッカーなら4~6歳を対象としたpee-wee soccerと呼ばれる、サッカーボールに親しみ、ドリブルやキックの仕方を学ぶnon-competitive(競争がない=勝ち負け関係なし)なrecreational(楽しむことが目的)のプログラムが入口となります。

 そこからは、そのままrecreationalを続ける子もいれば、competitive(コンペティティブ=勝ち負けにこだわる)なclub team(毎年トライアウトに合格しなければ入れない・契約更新できない)に進む子……。高校生になり、通っている高校のチームにトライアウトをして、Freshman team(上のチームに入れなかった1年生のみのチーム)Junior Varsity team(2軍チーム)、あるいはVarsity team(1軍チーム)のいずれかに所属しつつ、club teamと両立する子……。

 とりあえず、今回はrecreationalとcompetitiveに絞って見ていきましょう。


Recreational Sports

 レクリエーションという響きの通り、楽しむことを目的としています。サッカー、野球、フラッグフットボール、レスリング、ソフトボール、バレーボール、バスケットボール、ダンス、体操、水泳など、種類は豊富です。

 プログラムは、YMCAのような非営利団体が運営しているものもあれば、地域や民間のクラブチームが運営しているものもあり、周りでは後者のどちらかのプログラムに参加している人が多かった印象です。

 次に、期間は3ヶ月前後のものが多く、レッスンと試合がそれぞれ週に1日ずつ。費用は、期間によって200 ~300ドル台(今の相場では3万円弱~4万5000円以上!)が相場でしょうか。Fall(秋)、Winter 1・2(冬は2つに分けられていました)、Springとあり、夏にはSummer Camp(これまたいくつかの期間に分かれていました)があるので、通年となると少なからぬ費用がかかります。

とはいえ、Recreationalは期間ごとに申し込めるので、子どもが「もうやりたくない!」と言えば、次のシーズンにサインアップ(申し込み)しなければ、それで問題解決です。ほかにも、練習と試合を合わせても週に2日でよい、遠征がない、シーズンごとにさまざまなスポーツに挑戦できる、というメリットもあります。逆にデメリットを挙げるなら、シーズンごとにチームメイトもコーチも変わるため、固定のチームメイトができない寂しさはあるかもしれません。

Competitive Sports

次に、Competitive sportsは、Competitive(=競争の、競合する、競争心が強い)という単語の意味どおり、勝ち負けを重視するハイレベルでのスポーツになります。そのため、チームに入るためにはトライアウトを受ける必要があり、合格したチームと「契約」(ちゃんと契約書に親子でサインする)しなければなりません

 我が家の次女と長男がお世話になったクラブチームでは、毎年6月に1週間の公開練習があり、続いて2日間にわたるトライアウトがありました。

 前シーズンに引き続き参加する子がほとんどですが、初めて参加する子(前年までrecreationalでしていた、引っ越してきた、などの理由から)、別のクラブチームからの移籍を考えている子たちが集まる公開練習・トライアウトは、見守る親にとっても、子ども本人にとっても、ものすごくストレスフルでした(毎年同じクラブチームでプレイしている子でも、必ずトライアウトに参加し、再契約しなければいけません)

トライアウト裏話

 シーズン後半(5月頃)になると、とくに親たちのあいだでは、自然と来年度の話題が増えます。来年も自分のチームでプレイしてほしい選手の親に声をかけて移籍を食い止めようとするコーチがいたり、逆に、コーチにすり寄って情報(我が子が来年こそ上のチームに上がれそうか・現チームに残留できそうか、など)を引き出そうとする親がいたりして、同じチームに所属しながらも全員がライバルという空気感が高まるのも、この頃です(場合によっては、とっても嫌な空気になることも……)

1年の流れ

 6月のトライアウトが終わると、独立記念日(7月4日)前後に短いオフがあったのち、すぐに新体制での練習が始まります。そして、8月末頃には初めてのトーナメント(大会)があり、その後、9月から秋のシーズンが本格的にスタートする……という流れです。

 シーズン中は、週2日(1時間半ずつ)の練習に加え、週末に1、2試合(たまに3試合)あり、所属リーグによっては、ただのリーグ戦(失礼!)なのに、試合会場が車で片道2時間半なんていうこともありました。往復5時間で、ウォームアップと試合で3時間程度なので、移動時間のほうが長い……。さらに、2日間連続で開催されるトーナメント(年に数回)では、飛行機やチームで貸し切った高速バスで10時間以上かけて行ったことも!

Competitive Sportsのお金事情

当然ながら、費用はRecreationalと比べ、格段に高くなります。秋、冬、春と複数回に分け、Club fee(クラブチームに対して払う)とTeam fee(チームに対して払う)を収め、それにプラスして遠征費(飛行機やホテル)もあるので、所属リーグにもよりますが、日本円で年間4、50万円ということもあります。Competitive Sportsのデメリットはずばり、忙しすぎるスケジュール、遠すぎる遠征、高すぎる費用、トライアウト時期の強烈なストレスの4つです


でも、やらせて良かった!

ですが、それでもやらせて良かった! と、私は思っています。カープールしたり、ハロウィンやクリスマスなどイベントごとに家族ぐるみで盛大なパーティーをしたり、遠征先のレストランで一緒に食事をしたり、プールで泳いだり、観光したり……。少なくとも10代半ばくらいまでは同じクラブチームで継続してプレーする家庭が多く、多少の入れ替わりはありつつも、お互いをSoccer Familyと呼び合い、ハロウィンやクリスマスなどのイベントやシーズン終わりのend of the year partyを楽しんだり、ものすごく濃い付き合いができました。我が家は、次女と長男が同じサッカーのクラブチームに6年間在籍しましたが、本当に大変で、本当に幸せな、貴重な体験ができたと思っています。

結論:アメリカで子どもにスポーツをやらせて良かった!

アメリカに住んだ7年間のほとんどは、まさに子どもたちのスポーツ中心の生活でした。心身ともに大変だと感じることも少なくありませんでしたが、親子ともに現地の友人に恵まれ、子どもたちはもちろん、私や夫もたくさんのことを学び、成長できた気がします。アメリカのユーススポーツには綺麗ではない部分もたくさん(そりゃあもう)あるのですが、今、もしまた2013年の渡米直後に戻れたとしたら、やっぱり子どもたちにはスポーツをさせたいと思うのです。

アメリカのユーススポーツ事情に関する本の翻訳をさせていただきました。
なぜ、アメリカではユーススポーツが盛んなのか。アメリカのユーススポーツが抱える闇とは? 訳しながら、腑に落ちたこともあれば、「えっ!」と衝撃を受けた内容もありました。気になる方は是非!
『TAKE BACK THE GAME 子供たちのスポーツを取り戻せ!!』(東洋館出版社)