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 【ビジネス本】「カレーすき焼き」から日本企業は脱せたか

一時期、大阪で営業をしていたときに担当していたこともあり、その後「ハリーポッター誘致成功」「ハロウィン大当たり」など躍進の報はとりわけ興味を持ってチェックしていました。

いまやインバウンドも引き寄せる、東京ディズニーランドと並び日本を代表するアミューズメントパークとなったユニバーサル・スタジオ・ジャパン。

子供の頃行っていた阪神間の遊園地の多くがなくなってしまったし、USJの停滞期(賞味期限偽装、火薬取締法違反など)も知っている身として、今、香港で友人家族がこぞって行くようになったUSJはやはり希望があり、筆者でありマーケターの森岡氏の功績の大きさを感じつつ読み進めました。

どの章も面白かったですが、資金がない中で「USJにクリスマスに行こう」と訴求するために、父親が愛娘と過ごせる時間の短さ巧みについたり、「ハロウィーン・ホラー・ナイト」では日頃ストレスを発散する場の少ない女性をターゲットにしたり、よく練られた戦略と戦術が、爽快なまでにハマった例が引き合いにされていおり、非常にわかりやすく、シンプル。もう少ししたら子供にも読ませてあげたいビジネス系名著だと思います。

そして、彼自身がP&G時代にどう育てられたか、という箇所では、育児のヒントになることも。また、マーケティングのイロハを学んだとおっしゃるP&Gは、本社が神戸で社員の方と接する機会も何度かあり、個人的に身近に感じていましたし、学生時代に、阪神大震災では辛い別れがあったことにも、込み上げてくるものがありました。

本書の発行は2016年なのですが、ここに、今の日本企業の世界的な存在感の低下を食い止める上で大切なことが書いてあると思ったので、それについて少しだけ。

日本の組織の多くは、戦略を間違えることよりもむしろ「戦略がない」ことが多い。その結果、そもそも「カレーかすき焼きかどちらかの選択」だったはずの話が、情緒的な判断に基づく折衷案が生まれ、最終決定の段には「カレーすき焼きをやるか、やらないか」という話にすり替わりがちであることを指摘しています。

合理的に判断してから、情緒的に戦えないものか。

きっと苦境の今は、切り替えやすいタイミング。とにかく、「やめる」ことが苦手な国民性はなんとかしてほしい…とこれは、銀行員時代から思ってきたことですが、マーケティングに関係がある人もない人も日本企業に勤める人には、必ず気づきのある本だと思います。

よりたくさんの良書をお伝えできるように、頑張ります!