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深夜0時のこんぺいとう

うちは母子家庭。
母一人、子一人ですから、他のご家庭はどうしているのかわかりませんが
親子喧嘩が勃発すると大変です。誰も間に入ってくれませんから。

夜の八時くらいだったかと思います。
ピアノの練習中に息子が
「むずかしいのはもうしないの!」
といってテーブルをドカン!ドカン!と蹴ります。(いつもゆってるな)
拳を握りしめてあろうことか鍵盤に叩きつけるではありませんか!
ここで私もブチ切れて
「何てことしてんだ!謝れ!」
といって息子の頭を掴んでぐいぐい下げさせます。
そんな乱暴なと思われる方もいるかと思いますが、我が家では
本・楽器・食べる物
これを乱暴に扱った場合、父神ゼウスもびっくりの雷が落ちます。
一歳の頃からこれに関しては厳しく躾けてきました。
もう4歳ですから、普段はこんなこと絶対にしません。
例えば床に置いてあった本などを間違えて踏んでしまっても、まるでハリネズミでも踏んだかのように飛び退きます。
なので息子もわかっているんです、わかってやっているんです。
コノヤロウ…

ここまで来ると寝不足を覚悟しなければなりません。
(あぁもう…きっついなぁ…)
でも「もう、しょうがないなぁ」とは絶対に言えません。
なにがしょうがないのかわからないので、わからない以上は言えません。
ただこの時の息子はいつもと違っていました。
机に突っ伏して、「もうぼくはいやなの」と言います。
「何がそんなにいやなの?」と聞くと
「このおうちがいやなの、だから小さくしちゃうの。窓も小さくするの。あとキッチンもいやなの。キッチンも小さくするの」
(お、おぅ…)
「じゃ、じゃあ公園でテントでも張って暮らすのかい?」
「おそともいやなの、だからおそとも小さくしちゃうの。ぼく木も小さくしちゃうの。ブランコも滑り台もぜーんぶ小さくするの」

時空を歪める気か…?
なんか大変な話になってきたな…。

「そうかぁ、そんなにいっぱい嫌なものがあるのかー。なかなか大変だなぁ」
息子「ママももうかわいくないの」(うるせぇな)
「そうかぁ。ママもなぁ、何が嫌かな。普段あんまりいやだいやだと思わないようにしてるけど」

そうねぇ、玄関の収納がいやだな、だって上の方高すぎてまったく届かないしなんとか放り込めたとしてももう絶対取れないやん
押し入れに入れてあるキャスター付きのチェストもいやかな。引き出し開け閉めするときに柱を擦っちゃて傷になってるし。
あと謎のパーツどうにかしてほしい。君が持ってきたあれだよ!
二年前にピーラーが忽然と姿を消してかわりに現れたあのパーツなんなん。
未だにわからん。

何気なくそんな話をしていると息子が少し機嫌をなおして
「ママ、ぼくが開けてあげるから」
(つまり肩車をして、ぼくが上の収納開けてあげるからの意)
と言います。
これで機嫌がなおるならと思い肩車をしたのが九時半。
そこから部屋中のいやなもの巡りをして元の位置に戻ったのが十時。

さて

謎のパーツ


姫宮のこんぺいとう

少し前に行ってきた美術館でのことです。


オシャレすぎるやろ


どこもかしこも超オシャレで超可愛い旧朝香宮邸をまるっと見学できる展覧会です。東京都庭園美術館で5月までやってます。

暖炉

おしゃれ~。排水溝一つとってもおしゃれなんですよ。
でもこれだけじゃないんです。

こんぺいとうライト

このとっても可愛い照明
姫宮の居住スペースにあるステンドグラスのライトで

“姫宮のこんぺいとう”

と呼ばれているそうです。

これがとにかく人気があるらしく(こんなに可愛かったらね)
ポストカードにもなっていたのでつい買ってしまいました。
そして一階の資料室を覗いてみると子供でも楽しめるように工作の用意があり、これを貰ってきました。

これを組み立てればあのこんぺいこうのような可愛い形になるはず


そこで私は言ってしまったんですね。
ええ、覚えてますとも。

「帰ったらこれ作ろ!」

これを聞き逃すような息子ではなかった……。


作るって言ったよね

作るって言ったくせに作らないし、そのくせぼくに難しいことばかりさせるとはなんだ!

ということらしいんですよね。
はい。ごもっともです。

まぁ、確かに…。(もう十時回ってるけど)
これをやらないで練習を最後までやれとは言えないよなぁ、筋が通らんもんな。
かといって今日は工作も練習もやらないってのも通らんわなぁ。
理由がないもん。




や……

やり ますか…

(白目)


深夜の工作タイム

頑張りました。

23時。この時点でだいぶエグい。
細かいところはカッターで
これ大丈夫?

本当に大変だったんです。
どこを折ってどこをくっつけたらいいのかサッパリわからない。
「なんだよもうこれほんとに出来んのかよそもそもの台紙がガタガタしじゃねぇかこういうの苦手なんだよもーーーイライラするーー」
ぶつくさ文句をいう私に息子が言いました。

「千里の道も一歩から」
「難しいからやるんでしょ」
「やらないといつまでたってもできないよ」

普段偉そうなこと言いがちなママを完コピしてやがる。
全部ブーメランで返すやん。
くぅ、やるしか。

そうやってなんとか完成させたのがこれです。

午前0時まわってます。


で…、できたぁ……

ガタガタでそんなに可愛くはないですが一応できました。
(もう一つは息子の作った分です)
めちゃくちゃ疲れたんですが、

でも、

なんか、

めっちゃスッキリした!!!!

しかも息子が

「ママ!すごいよ!」
「ママ!上手にできたね!」
「ママ天才じゃん!」

と絶賛してくれるじゃない。

えー?そんな褒めてくれんの?
ありがとう!
(お世辞でも悪い気はしない)

すごく疲れたけれどなんだか心地よい疲れ。
嬉しい気持ちと達成感とそれだけではないもっと晴れやかな爽快な気分だ!
なんだろうこの感覚、すごく久しぶりな気がするよ!

とても贅沢なもの

普段だってもちろん色々と頑張ってるつもりです。(家事や育児や)
なにかの仕事を片付けた時の達成感だってあります。
でもそれはやっぱり必要に迫られてやることであって、このこんぺいとうが出来たときの爽快感、喜びとはちがうんですよね。

自分の手の中から自分が求めるものが現れてくる。
自分の手が作ったものなのに、驚かされる。
上手くはできてないんだけど、なんとも愛おしく思えてくる。
我が家に(待ちに待った)可愛いペットのうさぎが来た日のようです。
(飼ったことないけど)

このこんぺいとうは、世の中でまっっっったく役に立たないし、アートでもないし、誰も買わないし、あげるといわれても困るでしょう。
でも我が家にある限りはとても大事にされますし、しばしば会話にのぼります。
一歩外に出れば1mmの価値もないのに、うちにあるととても素敵なもの。
わぁ、すごい贅沢。
ま、それだけ頑張りましたしね。


こんぺいとうのマリア

私は若い頃詩を勉強していて自分でも書いていたのですが、今回こんぺいとうを作ってみてその時の感覚を思い出しました。
自分の内側にあるものだから他人にはわかりようがなく、作りようがなく、自分自身も見たことのないものに自分の手を動かして形を与える。
例えるなら手に取った一片の木片の内に仏を見て、それを一刀彫で彫っていく。そんな作業のすえ現れた仏像に会えたことを喜び、大切なものを傷つけずに彫れたことによくやったと自分を労い、手を合わせたくなる。
たとえそれが苦しい気持ちを書いたものであっても、癒しになる。
素朴な姿をしたその仏様は私の仏様なんです。

こんぺいとうを手に取ってくるくると回しながら見てみました。

仏様って感じじゃないよな。
どちらかと言うとクリスマスツリーを飾るオーナメントのマリア様。
赤ちゃんを抱いた可愛いマリア様みたいだ。


大変だったけど、良かったよ!
叱咤激励、ほんとにありがとう。
おかげさまで完成しました。

息子からは
「どういたしまして」
と返ってきました。

明日の朝起きられるか心配だけど、君とこんぺいとう作れて楽しかった。
そうそう、ママも子供の頃工作大好きだったもん、思い出せたよ。
ありがとうね。
今日はぐっすり眠れる気がするよ。

さぁ、
「もう遅いから色を塗るのは明日にして、そろそろ寝ようか」



息子「寝ない」


えッ!!?



(お読みいただきありがとうございました。スキをぽちっとしてくれたら嬉しいです)

妃殿下寝室の照明
排水溝も全部違うデザイン
階段の手すりの下
壁が全部シルバーで草木が彫られてる。扉は鏡。
どこを切り取ってもモダン、おしゃれ、可愛い。
隣は自然教育園。子供の頃、写生遠足でよく来ました。懐かしい。

楽しんで頂けた方、ぜひサポートお願いします! いただいたサポートは美術館のミュージアムショップで絵葉書を購入するのに使わせていただきます。部屋に飾る用です。