自利利他を実現するバザール
(前回からの続き)
資本主義はさまざまな集団を解体していく。その最果てにあるのが、フリーエージェント社会である。
2001年に出版された『フリーエージェント社会の到来』という本がある(邦訳は2002年)。著者であるダニエル・ピンクは、クリントン政権下でスピーチライターを務めていたが、家族と過ごす時間を増やすためにフリーエージェントとして独立した。すでにアメリカ人の四人に一人がフリーエージェントとして働いている、とピンクは紹介している。
組織から自由になった人々が自分の好きなように働く。ひとつの組織に忠誠を尽くするのではなく、複数の企業と対等に契約を結ぶ。プロジェクトごとにさまざまな個人が結集して、仕事を進めていくのだ。
ピンクによれば、フリーエージェントという働き方が増えた背景には、生産手段の個人所有がある。
資本主義には革命的なところがある。ぼくたちを生まれながらに集団に縛りつける鎖をバラバラにしてくれる。権力者たちから個人を解放してくれる。だから、資本主義において労働者はかつての奴隷ではない。暴力に支配されて強制労働させられるわけでないからだ。あくまでも自発的な同意によって契約を結んで働く。自由な個人である。
しかし、資本家は権力を持っている。労働者はペコペコする。資本家に言われるがまま、奴隷のようにこき使われる。資本主義はあらゆる集団を解体して、自由な個人を生み出したはずだった。にもかかわらず、資本家は労働者に対してえらそうなのか?
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