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刻み海苔

 しまった。

 財布を開くと、中には刻み海苔がぎっしりと詰まっていた。今朝は忙しかったから、ろくに確認せずに家を出てしまった。
 こんな時に限って、近くにATMはないし、この店はクレジットカードが使えない。

「すみません」

 俺は店員を呼び――アルバイトだろう。若い女性の店員だった――もりそばを1枚注文した。
 店内は昼時だというのに客はまばらで、しかし閑古鳥が鳴いているという風ではなく、むしろ落ち着いて上品な雰囲気を醸し出していた。

 ほどなくして、注文したもりそばがテーブルに運ばれてきた。
 俺はその上から、財布に詰まっている刻み海苔をひと摘みふりかけた。そうして、そばと海苔の香りをしばらく楽しんだ後、やおら箸でつかみ上げ、つゆに浅くつけてすすり上げた。海苔、そば、出汁の順で口内に香りが広がり、やがて一体となる。つゆの塩梅もちょうどいい。

 ただ、麺にコシがなく、薬味の種類もありきたりだったので、そこは残念でした。また、クレジットカードが使えないことも、不便だったので、改善して欲しいです。
 リピ無し。


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