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下手を笑う

三月の余一会は、鈴本演芸場の柳家さん喬一門会に行ってきた。
夜の部である。
演目は以下の通り。

小きち 金明竹 / なかなか達者で客席の笑いも多く、言い立てで中手も。
小志ん (新作)/ あいにく演目を知らない。
喬之助 堀ノ内
小傳次 バイオリン漫談 / 個人的にはつらかった。
左龍 馬のす / ベテランの貫禄。
さん喬 新舞踊 / 「矢切の渡し」の歌で踊る師匠。手つきが美しい。
客席から、おひねりが飛ぶ飛ぶ!
喬太郎 えーっとここは / つい先日SWAでネタ下ろししたばかりの新作。かなりブラッシュアップされている。
お仲入り
左龍+喬之助 漫才/ にゃんこ金魚ならぬ龍子喬子の漫才。
客席からバナナの差し入れがあり龍子がゴリラで食べる。
小傳次 四人癖
ダーク広和 マジック / ひととき息抜き。いい手品です。
さん喬 百川  / 毎度の穏やかな語り口。安心して笑っていられる。 

トリのさん喬師匠の語り口にほのぼのした気分で寄席を後にした。
とはいえ。
問題は、あれである。

バイオリン漫談。
客席は爆笑の渦であった。
小傳次ご本人は言う。
らくごカフェなどでバイオリン演奏会を開くと大入り満員になる、と。

しかし私はかなりつらかった。
居たたまれなかった。
チューニングが滅茶苦茶なバイオリンで演奏しないでくれ!
リズムやメロディは合っているように思うのだが。
ガンダムやエヴァンゲリオンを選ぶセンスも嫌いじゃない。
てか、わざと下手に弾いているのか?

いや本業は落語家なのだ。
落語が出来ればバイオリンなど下手でも問題はない。
けれどそれを公開して、あまつさえ笑いをとるな!
とマジで怒ったら、シャレのわからない奴と言われるだろうか?

私は、この手の下手を笑うお笑いが苦手なのだ。
「アメトーーーク!」の〝運動神経悪い芸人〟とか。
運動神経が鈍い芸人のぎくしゃくした動きを見て笑う番組。
〝嘲笑〟という言葉を使いたくなる。

私自身が運動神経が鈍いせいもある。
自分が嘲笑われているようで居たたまれない。
とても見ていられずにチャンネルを変えてしまう。一歩間違えれば、これはイジメである。

いや実際いじめとお笑いぎりぎりの線だろう。
実社会であれをやられて本気で怒れば、
「シャレじゃないか。何を本気で怒っているんだ?」
と更に嘲笑される。
追い詰められた子供が自殺をしても不思議はない。
考え過ぎ?
うん。
いじめられっ子の被害妄想かも知れないね。

これはSWAのポスター
私は3/29(水)に参加

少なくとも、あのさん喬師匠が弟子の下手なバイオリンを嘲笑しているはずはない。
「ばかだなあ」などと温かい目で見守っているに違いない。

だから外野の私が目くじらを立てることではない。
とは思いつつ。
過剰反応せずにはいられない。

私に出来るのは二度とあのバイオリン演奏に遭遇しないようにするだけだ。
さん喬一門会にはまた行きたいから、バイオリンが出た時にはトイレに逃げよう。
そうだそうだそうしよう。

デテケデテケ!
テンデンバラバラ!
テンデンバラバラ!
追い出し太鼓に促され、出て行く街は雨模様。
三月最後の上野は金曜日の夜だった。

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