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拍手バンバン族あらわる!

5月4日みどりの日。
ゴールデンウィークの中日は深川江戸資料館ホールにて瀧川鯉昇師匠と三遊亭兼好師匠の二人会を聞く。
題して「ケンケンと鯉のぼり」
大入り満員とのことで帰りにお土産をいただく。
〝おっとっと〟と〝たべっ子どうぶつ〟のどちらか。
私は二種類あると知らずに〝たべっ子どうぶつ〟をもらってしまい激しく後悔。
帰りにスーパーで〝おっとっと〟を買って帰る騒ぎである(巻頭の写真です)。

それはともかく。
久しぶりに拍手バンバン族に遭遇した。
笑いながら大きな音でバンバン手を叩く。
また、落語家のささいな言葉や仕草にもバンバン手を叩く。
蕎麦を啜る仕草などすれば、ここぞとばかりにバンバン叩いて、
「いや、こんなので拍手しなくてもいいから」
と落語家をして言わしめる一族。

私はほんのにわかだけど、落語を聞き始めた当初こんな風に拍手をする人は少なかったと思う。
たまに「時そば」のそばを啜る時や「金明竹」の言い立てで拍手をする人はいたけれど。

それとは明らかに違う自己主張の拍手バンバン。
自分はこんなに可笑しくて笑っているよバンバンバンバン!
しまいには足までドンドン踏み鳴らす(本当にそういう人がいた)。
「We Will Rock You」か!?
クイーンなのか!?
うるさいっっ!!

拍手バンバン族が出た演目
いずれも楽しい爆笑噺

ほんの数年前。コロナ禍の緊急事態宣言におけるエンタメ界の被害は記憶に新しい。
落語界においては寄席が閉まるという驚天動地の出来事があった。
太平洋戦争中でさえ休まなかったのに(それもどうよ?と思ったのは秘密です。私の妄想では山田風太郎あたりが寄席に籠っていた気がする)。

仕事がなくなった落語家たちは一斉に髭を伸ばし始めたらしい(それもどうよ?)。
一方で配信に手を出す……いや挑戦する落語家も出てきた。
YouTubeなどで無観客落語の配信を始めたのだ。

落語に興味のない人たちや、興味はあるけど尻込みしていた人たちが聞いたに違いない。
それらの人々が緊急事態宣言が明けた後、寄席や落語会にやって来たのだろう。

これまでと違う落語ファンが増えている。
すれっからしの落語ファンならクスリとも笑わない前座噺で笑う新しい人たちが。
と言ったのは「新ニッポンの話芸ポッドキャスト」の落語評論家、広瀬和生氏である。

そうなのだ。
「え、ここで笑うの?」と思いがけないところで笑うファンが増えている。
それはいい。
自分と笑いどころが違うからといって責めるほど傲慢ではない。
けれど拍手バンバンは迷惑なのだ。

おそらく拍手バンバンの一族は、落語もテレビのバラエティー番組のように見るものだと思っているのだろう。
これこそ演者に対する礼儀とさえ思っているかも知れない。
頼むからやめてくれ。
落語家もあまり妙なところで大きな拍手や足踏みをされればリズムが狂うのではないか。

つい先日「文春らくご動物園 昼の部」で昇也さんが〝動物園〟に象などの動物を出すように兼好師匠に命じられて、無理やり噺に入れ込んだ。
その後のトークで言っていたが、前座時代に身体に叩き込んだ噺は自然に口から出て来るが、妙な入れ事をするとリズムが崩れて、わからなくなってしまうそうである。

その文春らくごの演目

何となくわかる。
落語にはリズムがあるのだ。
演者もそうだろうし客もそうなのだ。
リズムにのせられて笑うのが気持ちいいのだ。
なのに、あの拍手バンバンは流れを止める。
演者にも客にも何の得にもなっていないと思う。
バラエティー番組と落語は全く性質が違うのだ。
頼むから本当にやめてくれ!

最後に私が勝手に師と仰ぐ落語評論家、堀井憲一郎氏の言葉を記す。

ヘタな拍手は落語を壊す。少なくとも演者を困らせる。あまり慣れていないなら、まわりで手をたたこうと同調しないほうがいい。
私が慣れていない同行者にいうセリフをもう一度書いておきます。
「落語の拍手は、演者が出てきたときと、一席終わったときの二回だけでいい。ほかのときに誰かが手を叩いても同調して叩かないように」
途中とても感銘を受けたなら、一席終わったときに、心を込めて、強く細かく烈しく手を叩き続ければいいんである。それが落語家への愛だとおもう。

『教養として学んでおきたい落語』
マイナビ新書

……って、あれ?
私が長々と書いたことが端的に書いてあるじゃん。
つまりこういうことです。

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