私の昔話16

「銭 湯」
2階の背中に般若の面の刺青のヤクザのお兄さんと昼間上野黒門町の銭湯へ出かけます。アメ横周辺には家に風呂のある家はありません、ほとんどバラックでその隙間は畑でした。叔父さんの店の回りも畑でした。しかし聚楽の横の朝鮮人部落は外の広場にドラム缶風呂があり、人の見える場所で交代で入っていました。般若の刺青のヤクザのお兄さんは風呂で温まると背中の般若が真っ赤に怒りだします。お兄さんは自慢と優越感と満足で足取りも軽くアイスキャンディーを食べながらかえります。お兄さん一日中2階で一升瓶を置いて酒を飲んでいます。奥さんは昼間も働いて、一度帰って夜も働きに出ます。お兄さんに時々呼ばれます。坊や、2階へ来てと声がかかります。それはヒロポン(覚醒剤)注射を腕に打つ時です。私がガラスのアンプルにハート型のヤスリを回してガラスを割り、注射器で吸い取ります。お兄さんは不器用でガラスを割る時、力が入って指にガラス片を刺し指が血だらけになります。ヒロポン(覚醒剤)はタバコ屋で買えました。また売人はどこにでもいました。店のお客さんも打っていましたし、駅の待合室でも、公園でも喫茶店でも訪ねて行った知人のお宅でも普通に目に飛び込んできました。お兄さんの奥さんが出かける前の夕方、またお兄さんから声がかかりました。階段の途中で待っていたお兄さんが一回降りて100数えたらここまで静かに上がって来てごらん、私は100は無理だと言うと、50を2回数えたらと言うのでその通りにしました。50を2回数えてから静かに上がって行くとセックスの真っ最中でした。私に見せたかったのです。お兄さんは奥さんを食いものにした悪でした。しかしお兄さんが泣くのを時々見ました。私と2人の時、タンスから骨壷を出し、フタを開けて骨をつまみます。坊やもやれと言われて2人でつまみます。亡くなった赤ちゃんだと言う事が分かりました。お兄さんの目は涙でいっぱいでした。

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