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81歳 幼少期の大冒険 15

「京都へ着きました」
大垣で千葉のおばさんをホームへ降りて見送って、ホームの水道で水筒に水を入れ列車に乗り込むとおばさんが戻ってきて、開けた窓越しに名残惜しそうに私の手を握りしめ、列車が動き出すまで離しませんでした。気がついたら車内は20人以上になっていました。おばさんは、反対側の席の夫婦に私の事を長々と説明し、私は大垣で降りますからその先お願いしますと頼んでおり、検札に来た車掌さんにも同じ事を話しておりました。列車にはトイレの前に洗面所がありますが、お湯も水も出ません。トイレには紙もありません。トイレに座って下をのぞくと走る列車の線路が見えます。排泄物は全て線路に落ちます。京都に着き東京より空気が澄んで美味しいのに気がつきました。トイレに入り、東京より冷たい水で顔を洗い、待合室で休んでいると売店が店開きです。
タイミングをみて売店のおばさんに話しかけました。4冊のノートを見せながら京都研究に来た事を繰り返し説明し、同時にボストンを預かってもらうお願いをしました。断られたら有料で駅に預けるしかないと覚悟していましたが、簡単に引き受けてくれました、列車の中で家から持参したおにぎりを5つも食べてしまいました。あと5つと千葉のおばさんから貰ったゆでたまごと腹ぐすり赤玉と3冊のノートを風呂敷に包んで腰に巻いて、水筒は肩から掛けました。京都研究書だけは手に持ちました。いよいよ出発です。

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