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丁寧にやっているからこそ、共感、参加、発信の循環が生まれる|ヨリドコ・藤井雅巳さん(取材先)

森ノオトにかかわる人たちの声を聞きながら、ローカルメディアのあるまちの現在を描いていくインタビュー企画。3回目は、森ノオトで取材したヨリドコ小野路宿を運営する病院の代表理事・藤井雅巳(まさみ)さんです。一般社団法人 地域包括ケア研究所の代表理事でもある藤井さんに、森ノオトってどんなメディア?と編集長の梶田がお聞きしてきました。


——この企画の1回目に登場したライターの濱田明日美さんのヨリドコへの取材が、森ノオトを知るきっかけになったそうですね。藤井さんは何をやっていらっしゃる人ですか?

 何をやっているか、一言で説明するのは難しいですね……笑。一つに、町田市にある「まちだ丘の上病院」を運営する一般財団法人ひふみ会の現在の役割になって6年目になります。地域社会を軸にして病院の経営のデザインというか、まわっていく仕組みをサポートする仕事をしています。地域包括ケアって聞いたことがありますか?国が力を入れている分野ですが、病院で亡くなる方って今、8割を超えているんですよね。ほんの50年前には、自宅で亡くなる方が8割。住み慣れた家で亡くなるということが、当たり前だったんです。実際には今も、住み慣れた家、住み慣れた施設で亡くなることを望んでいる方が多数です。それが叶えられるように、ひふみ会では慢性期の病院だけでなく在宅診療の取り組みも強化しています。 

インタビュー日は、今季一番の降雪の日。踏むとギュッギュッとなるほどの雪でした

—— ひふみ会が運営しているヨリドコを、2月の森ノオトの編集会議で使わせていただきました。町並みに調和したとても素敵な場所ですね。kitchen とまりぎの雰囲気もあたたかく、食事もおいしかったです。ヨリドコを病院が運営していることとリンクしない方も多いのではないでしょうか。

 病院ってネガティブなイメージを持たれがちなところですよね。なので、病院らしくないものにしたいなと思っています。がんを例にすると、何気ない会話の中で兆候が見つかることがあります。暮らしの中で医療や健康と接点をもつために、「おれは病院なんて行かね!」っていうような方でも行ける場であることが大事だと思っています。いい感じのカフェがあるから行ってみよう、という動きが少しずつ広がっていますね。

ヨリドコには、訪問看護ステーションがあります。医療の現場はなり手の確保に苦労しているところが多いのですが、私たちはヨリドコがあることで、ここで働きたいと問い合わせをしてくださる方が多くいらっしゃいます。私たちがめざすこと、やりたいことを伝えられるきっかけになっています。

お話は2月の編集会議後に、ヨリドコ内にある kitchen とまりぎさんで 

 —— 森ノオトの記事でも、ヨリドコを通じて藤井さんたちのめざすことを語っていただいていますね。森ノオトの記事や、市民ライターである濱田さんの取材を受けて、どんな印象を持たれましたか? 

取材のお申し込みがあり、森ノオトのホームページから記事を読んでみて、あったかいなと感じました。私たちが一人称で話していても伝わりきらない部分があるので、地域的に近いメディアで、コンセプトをもった方たちの言葉での表現がありがたいなと思いました。

今、軸をいくつか持つ生き方や働き方が広がっていますよね。濱田さんのように別軸を持ち、それを生かしながら表現するのは、その道ひと筋っていうのとは別のよさがあり、おもしろいです。

私は北海道の小さな町で、町の人たちが自分たちで発信していくというローカルメディア(HOTほんべつ)の運営にかかわっています。コンセプトが近いなと思って、寄付で運営する仕組みについて森ノオトにお話を聞きたいなと思ったんです。森ノオトのボランタリーということや、寄付でまかなうというコンセプトは、私がイメージしていたローカルメディアの形の一つで、それをすでに実践されている。その仕組みを純粋に知りたいなと思ったんです。

 

—— まさかローカルメディアの運営までやっていらっしゃるとは思わず、驚きました。藤井さんも町に定期的に訪れ、記事を書くことを続けていらっしゃいますね。

3年間ローカルメディアを続けてきて、少しあきらめそうになった気持ちもあったのですが、北原さんと梶田さんとお話をして、協力してくれる人との関係性をどうつくっていくか。丁寧にやっていこう、もうちょっと頑張ってみようかなって思ったんです。今は、町民の方がインスタの更新を毎日やってくれているんですよ。

2月にヨリドコの集会所を初めてお借りして森ノオトの編集会議を開催。降雪となり、オンラインと併用開催した。それでも10名以上が現地に集まり、雪見編集会議に

 —— 価値が伝わることには時間がかかりますよね。よい動きが生まれていてうれしいです。編集会議も少し見ていただけましたね。ちょうど黙々と作業している時間帯でしたけど……。

編集会議をのぞかせていただいて、場の空気感から丁寧に大切につくられているんだなと感じました。あの場を運営し、プロデュースすることは、簡単そうで、そうできないことだと思います。金曜の朝にこの雪で、普通は来ないんじゃないかなと思いますね。ボランタリーでそれが成り立つのがすごいなと。丁寧にやっているからこそ、共感して、参加して、発信して、という循環が生まれるんだろうなと伝わってきました。

ご自身を表すものは?との質問に、コーヒーとノートパソコンというお返事が。コーヒーは1日10杯くらいは飲むほど大好きなのだそう。ノートパソコンはお子さんのサッカーの試合の合間にも開いているほど体の一部になっているそうです!!

 

(インタビューを終えて)

お仕事の中身を尋ねると、かみくだいて丁寧にお話してくださった藤井さん。金融や経営の専門家であり、今は日本の各地でさまざまな地域課題に向き合う藤井さんから語られる【森ノオト】を、新鮮な気持ちで受け取りました。取材の中で語られた「自分自身を表現するものって一つしかないはずはない」「giveとtakeの関係性は固定では成り立たない」という言葉は、まさに森ノオト編集部を運営しながら私が感じていることと重なり、活動するステージは違えども胸の内側に響いてきました。季節の節目にはヨリドコを訪れて、交流を続けたいなと思います。

 (取材・執筆:梶田亜由美、撮影:佐藤沙織)

この連載は2023年1月に迎えたNPO法人設立10周年を機に、「ローカルメディアのあるまちづくり」を、森ノオトにかかわる人たちの言葉を通じて描いていく企画です。

ウェブメディア「森ノオト」は、横浜市青葉区を拠点に、市民ライターの皆さんと共に誰かの豊かさにつながる記事を発信しています。生活者の正直な言葉で記事をつくっていくために、広告に頼らず寄付での運営を目指しています。2023年はこれからの10年に向けてバースデードネーションを実施中です。応援どうぞよろしくお願いします!

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