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ロードサイド書店の閉店

近所の書店が閉店となる。

田舎のバイパス道路の風景に溶け込んだ、車を生活の足にする人のみが利用できるようなよくあるロードサイド書店だ。

え、閉店て、まじか?
と驚いてはみたものの、思えばここ数年という単位でそこを訪れた記憶は無く、寂しさを感じてはみたものの、その不義理こそがこの書店を閉店に追い込んだ一因でもあるからして、全く無責任な憐憫とでもいうべきだ。

丁度、少年時代から愛読する作家の新刊小説が出版となったことと、これが最後との記念的な意味を重ねて数年ぶりに書店を訪れた。

戸をくぐった瞬間、うわ、うわ!とばかりに様々な感情が押し寄せた。
数十年とこの地に当たり前のように根を下ろしてきた書店だ。本が欲しければ必ずここ。うわうわ、この空間はもう消失してしまうんだ!と思ったらたまらなくなり、人目を避けるように店内写真を撮り、探すまでもなく平積みの中から目的のブツを見つけるやいなやそれを素早くカウンターに運び、逃げるように店を出て振り返りざまに未練たらしく全景写真をもう一枚。

その写真を離れて暮らす娘に送りつけようと思うも、からくも踏みとどまり今に至っている。

書店に足を運ばなくなった理由はご存知のとおり。
例の大アマゾンにクレカ情報を送信すればなんの苦労もなく目的の本が手に入るし、それよりも雑誌というものを全く買って読まなくなったからだ。雑誌で読み流す程度の記事はそのクオリティはともかくとしてもネット上でいくらでも見つかる。
有料記事を読みたければそれも配信で事足りてしまう。

ネットが本格普及してから25年は経つが、逆に今までよく書店という商売形態が生き残ってきたなとも思う。

新聞もそう。
輪転機を回す頃にはもう古びかけた情報を、夜も明けぬうちからパココン!ガッチャン!ブロロロ!んきー!バコン!バタン!と気ぜわしく一軒一軒配達する必要など全く無いはずなのだ。
ちなみにパココン!はバイクのスタンドを跳ね上げる音、以下エンジン音ブレーキ音スタンドを下ろす音新聞受けに捩じ込む音です念の為。

話が逸れた。

時代の変調の予感は25年前から確かなものであったはずだ。しかし書店や新聞販売店など既存の職業形態を維持保存するためその現実から目を背け続けて今に至り、その限界がロードサイド書店の閉店という結果として現れたのだろう。

同じように来年から紙新聞は廃止!となったとしても全く驚かない。
有料ネット配信にすれば新鮮な記事が瞬時に届くし新聞社の利益は確保できるし、パソコンガー、スマホガー、ワカンネーンダーなどとのたまうオールドメディアにしがみつく人々には、それだけに特化したボタン一つの専用楽々端末を配れば良いだけの話だ。
早朝のバココン!ガッチャン!から開放され、人々の安眠にも寄与するはずだ。

しかし出版業以外の分野では、そういった淘汰、大量絶滅や大飢饉など当たり前の話である。甘えるな!とは一昨年末に自営を畳んだ私のヒガミ八つ当たりなのでしょう。話がどんどんそれた挙げ句にヒートアップしましたすみません。

今月内には閉店するロードサイド書店さん、とにかく今までお疲れ様でしたありがとう。
ガタガタぬかしましたが、やっぱり無くなると淋しいです。


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