物語という場所

今現在、小説家として15年ほどになるのですが「ああ、昔は小説書くの楽しかったのに、仕事となってしまってからはつらい……」と思うことが、基本ありません。もちろん、締切の問題などで「ひぃぃぃぃ」となることはしばしばですが、「もう書くのつらいよう」とは思わない。たぶん私は、小説を書いていないほうがしんどいです。起きている時間のすべてを、現実の中で過ごすほうが不自然に思えるタイプなのです。念のため言及しておきますが、現実世界が過酷なわけではありません(笑)。わりと平和。可愛い猫もいるし。すごく可愛いし。ものすご(以下略)。とにかくですね、私は一定時間『あっちの世界』にいたいのです。要するに現実逃避しがちな人間ということになりますが、まあ、それはもう性格というより性質の問題なので、しょうがない。

私のみならず、誰であれ、時には現実逃避したくなるのが人生というものです。しかしながら、ずーーーっと空想の世界にいるのも、ちょっとまずい。脳はわりと騙されやすい器官です。現実と空想の区別がつかなくなったりすると、疾患の領域になります。でも空想の世界が好き。できるだけ長くいたい。一日のうち数時間は空想していたい。妄想していたいッ。そんな私のような人はどうしたらよいのか。

空想をひとつの形にする。物語として作品にする。

……つまり創造すればよいのです。『想像』が『創造』になった時、自分の中で客観視できるようになります。また、創造したものを誰かに見せれば、そこに社会性が生じます。ともすれば「面白かった」と言ってもらえたりして有頂天です(その逆もあるけど、それを受け入れる度量も徐々に形成されます)。ああ、よかった。私に適した場所がちゃんとあるじゃないか……小説家になれた時、そう思いました。会社員生活もそれなりに楽しかったのですが、いま思えば、原因不明の体調不良は、無意識のうちに溜まったストレスだったのかもしれません。

そんなこんなで、私は『物語』に居場所をもらいました。頭の中でモヤモヤーンとしていたアレコレを、作品にすることで、多くのことを得たように思います。私の場合は仕事になりましたが、趣味として物語を書くだけでも、だいぶ生きることがラクになるタイプの人は、結構いるのではないでしょうか。もちろん趣味と実益を兼ねて、プロを目指すのもいいと思います。まあ……今は出版不況ですけれど、目指すのは自由です。

そんなふうに『物語という場所』を必要としている方のために、そして自分がこれからも物語を創り続けるために、思うこと・考えることをまとめていく場を用意してみました。今までとくに意識せずに仕事をしてきたのですが、残りの執筆人生を考えると、そろそろこういう総括も必要かと思い至ったわけです。人に話したり、人に聞いたり、あるいは聞かれたりして、始めて気がつくものも多いはず。物語を創る上で知りたいこと、素朴な疑問など、自分なりの方法論など、プロアマ問わず、コメントいただけると嬉しいです。

文筆系の方だけでなく、マンガを描く方もぜひ。私は漫画原作もしていますので、いろいろ話をお聞きしたいところです。


#小説 #創作 #マンガ